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2.戦闘チュートリアル

 

 キャラクターの引き継ぎが終わると辺りの景色が一変し、チュートリアルが始まった。


 宇宙から星を眺める視点に変わり、ストーリーが始まる。


 《ここは、異世界「ガルガーン」》

 《終わりない争いが運命によって定められた星────》


 《あなたはどの国家に所属しますか》


 吸い込まれるように星へと近付き、何も無い荒野に降り立った。

 そこは正に戦場といった有様で、四方を城砦に囲まれていた。

 そして目の前にホログラムの大陸らしき立体地図が現れ、それは国ごとで4色に色分けされている。


 まずは青色の国から見てみる。


 《人間の国、ミズガル》

 純血の人間至上主義を掲げる、人間の国。


 至極あっさりとした説明だが、それもそのはず。

 β番ではどこに所属しても、変わるのはアバターの見た目の1部が少しだけその国の住人に近付くくらいで、国自体にはプレイ傾向での大まかな所属チーム分けと、フレーバーテキスト程度の意味しかなかったからだ。

 ミズガルは、中世西洋な街並みの国で、普通の人間が暮らしている。人種差別が激しく、他に較べてあまりファンタジー感もないため、そういう意味でβ版ではあまり人気は高くなかった。


 次に緑色の国。


 《妖精の国、アルフル》

 不思議な力を操る、妖精と自然の国。


 これまた簡潔な1文。1番ファンタジーな国で景色が綺麗だから、俺はβ版ではアルフルに所属していた。

 この国の民は皆エルフのような美しい見た目で、見た目から原材料がわかるようなワイルドな装いだった。

 所属プレイヤーは耳が若干横に伸びる。

 街並み?そもそも建物が殆ど無い。基本、有り得ないほど快適だが、野宿。

 今回も所属を変えるつもりはないが、一応他の国も見てこよう。次は赤色の国。


 《修羅の国、ヨツン》

 力こそ全て、弱肉強食を唯一の法と掲げる国。


 この国は、この説明からも分かるように、β版では非常にむさ苦しい脳筋集団が出来上がった国だ。

 βプレイヤーのヨツン民の合言葉は、「筋肉こそパワー」

 ヨツンの民の額には角が生える。街並みは和風。


 最後に、灰色の国。


 《亡者の国、ヘルン》

 何もかも全てを失ったものが集い出来た国。


 1番抽象的で、この1文だけではよくわからないと思うが、β版では最も────ある種以外の────奇人変人が集まった国だった。ここでいうある種の変人とは......まぁつまり脳筋族(赤の民)たちだ。

 この国の民は皆、微妙に肌が青白くなる。

 街並みはといえばいかにもな廃墟で、廃墟マニアには観光地として根強い人気がある。


 と、一通り見てみたがこのゲームの醍醐味はあくまで戦闘であって、シミュレーションゲーム要素などは殆どないのでぶっちゃけどれでもいい。出撃演出や見た目が少し変わる程度が精々だった筈なので、やはりβ版同様愛着のあるアルフルを選ぼう。


 《アルフルで宜しいですか?》


 《Yes/No》


 迷わずYes。


 《所属国家をアルフルに決定しました》


 そのアナウンスと同時に、俺のアバターの耳が変化した。

 そして、またしても辺りの風景が変わった。どうやら大自然を感じさせる、広い草原のド真ん中に移動したようだ。


 《ここはアルフルの外れにある、小さな集落────》

 《四国の国境が接する戦場からそう遠くないここに、侵略者たるヨツンのはぐれ兵が現れました》


 突如、開けた視界の中に角を持つ、落ち武者の様な敵mobがpopし(湧い)た。


 《Soul Swordを喚び出し立ち向かいましょう!》


 ムービーの間、指一本も動かせなかったアバターの制御が戻った。と同時に戦闘チュートリアルが始まったようだ。

 一応ガイドらしい黄緑色の操作補助マーカーが視界にいくつか見受けられるが、ざっと見たところ敵mobの体力表示や自己状態表示など、今見える範囲で戦闘に関してはβから殆ど変わってはいないようなので無視していいだろう。そんなに一々拘束されるような、チープな自由度のゲームではなかった。

 まぁ、戦闘をメインに据えたゲームであったのだから、戦闘周りに関してはβ版の時点で既に、製品版でも大して変わることがないだろうと思わせるクオリティにまで仕上がっていた。

 実際このチュートリアルも、見ようと思えば幾らでもヘルプを参考に出来るが、同時に見たくなければ無視もできる仕様だった。


 さて────

 俺は懐かしい手順で相棒を喚ぶ。


 「来たれ、我が剣」


 文言と共に胸の前に右手を翳し、アバターの胸から溢れ始めた金に輝くエフェクトを束ね掴む。

 そして......柄を象るそれを一気に引き抜いた。


 すると、掴み取った感触は確かにあれど、輝きは霧散し、後には何も残らなかった。

 然し()()()()()。俺は確かにコイツを握り、語り掛けながら歩き出した。


「久しいな、アン」

『お久しぶりです、マスター。

 再びお喚び頂けたこと、光栄に思います』


 まさか、もう喚ばれないと思っていただなんてことは無かろうが......そんな言い方をされてしまうとは心外だな。

 こいつと会ったのはβ版以来だが、俺の記憶が正しければ、最後に俺達は“また会おう”と言って別れたはずなのにな。


「俺がお前以外と組むと思うか?」

『......いえ、杞憂に愚問でした』

「あぁ。......往くぞ」

『Yes,マスター。姿無くとも、我が身は常に御身と共に』


 大分遠くの方で湧いたヨツンモチーフの落ち武者mobは、アンを喚び出している内にこちらに気付き、アクティブになって近付いてきていた。今ではあと10メートル程の所まで来ている。


「この距離なら余裕だな?」

『Yes,マスター。スキルコードを』


「あぁ......『無謀の一振り』」


 合言葉(コード)を口にした途端、目に映らないアンの周りに先程の輝きが薄く纏わり付き、アンの(カタチ)を縁った。

 それを合図に俺は、未だ俺の身の丈よりも大きな大剣ですら届かない彼方へ、無謀とも言える間合いから右腕を一振り。


────ザンッ────


『ヴ、ァ......』


 アンから立ち上る輝きの残滓と共に、胴体を両断され傷口から焼き消えるようなエフェクトに変じてゆくエネミーを見送った。





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