12.再燃
「再誕の瑞鸞」
そう告げたソウレンの姿は、蒼い炎で出来た一対の翼や鉤爪の付いた四肢によって人型の蒼鳥とでも言うべきシルエットに成っていた。
明らかに致死量だったダメージをトリガーに、燃え尽きた自身を更に燃え上がらせるエフェクトで発動した「リ・バース」というスキルからして、まず間違いなくアルガーデムのモチーフは不死鳥系統の伝説だろう。
「......面白い。実に愉快だ、ソウレンよ」
「お気に召されたようで、何よりです。これなるはアルガーデムの秘奥にして真の姿、「誕焼之不死鳥」で御座います。以前発動した際にはようよく解らぬ儘に時間切れとなってしまいまして、マトモに使うのは初めてとなります。まだまだ未熟な点が多々あるでしょうが、お楽しみ頂ければ、と......」
言いながら、ゆっくりと、調子を確かめるように翼を羽ばたかせ始めたソウレン。
徐々に大きく、力強いものへとなっていく羽ばたきが辺りに風を巻き起こし、今ではその風に乗った蒼の火の粉が周囲に舞い散っている。これは......
「さて、そろそろ準備も良い頃合いでしょうか。──参りますッ!!」
「あぁ......、来いッ!!」
宣言通りに此方へ向かって、文字通りに飛び出したソウレンに対し、俺も地を駆け向かって行く。
今までと異なり互いが互いを目指し動いたことで、辿り着くまでも、交差したのも一瞬のことだった。
その一刹那の間に、ソウレンは上空から突き出した爪を用いた飛び蹴りを繰り出し、俺はそれに対し二振りに集めたアンをぶつけるようにパリィすることで弾き返した。
弾かれた勢いのままに急上昇するソウレンは抜かり無く、俺の追撃を阻むように翼から大きな火の粉を撃ち置いて行った。攻撃でもありブラインドも兼ねるその追撃を俺がすかさず切り払った時には、遥か天高くでソウレンが急転換し、再びの飛び蹴りの体勢を取っていた。
「なるほど。さながら森の狩人、フクロウのようではないか」
徹底したヒット&アウェイ。しかも奴の炎の翼には剣のときと同様質量がほとんどないらしく、その大きく頑丈そうな見かけに反して静かな飛行を可能としているようだ。
確かに飛行を可能とする剣はそうそう居るものでは無いし、堅実にしてシンプルに強い戦法であると言えるだろう。......しかし、
「──それも空が安全だったら、の話だがな」
視認範囲が即ち射程圏である俺の前では、ソウレンにとって天空が無敵空間かと言えばそんなはずはなく。勿論アイツもそれを分かっているから目眩ましもするし、ああして不規則に宙を舞うのだろう。
ただ、折角対空攻撃を警戒しているところで何だか悪い気もするが、先程の遠隔斬撃を凌ぎきったソウレン相手に今さら作業のような遠距離戦を仕掛ける気は無い。どうせなら楽しみ尽くしたいのだ、このひとときを。
俺は手元のアンから一部を遊離させ、壁を登ったときのように俺を支える形で足元から伸ばした。
質量も体積も無い、貌を持たないアン故に、アンに支えられた俺の体は瞬く間にソウレンの下まで運ばれる。
「貴方はなんとも、心臓に悪いお方だ!」
「ははは、これでもまだお前の予想の範疇だろうに」
現にソウレンは、俺が空へ向かい始めたと同時に、事前に地に撒いておいた火の粉を燃え上がらせて炎弾を作り出し、更には上空でも自身で同じように炎弾による迎撃準備をし、眈々と挟み撃ちを狙っていた。奴は俺が空まで追いかけてくることも当然のように想定していたのだろう。
「「夷燃の炎卵」ッ!」
そうして、上空から落ちてくるものと下方から追い縋ってくるもの、無数の炎弾に囲まれた俺はそれを斬り裂いて無力化しようとするが、それよりも早く炎弾はそれぞれ相互に炎の線で結び付き、炎の網のようになって俺を閉じ込めてしまった。
「む? フンッ!!」
拘束系のスキルらしいと悟った俺はやはり斬り開いての突破を試みるが、切ったところで直ぐにまた結び付いてしまい埒が明かない。どうやら炎で出来ている所為か当たり判定が極度に弱いようだ。それで、切れども切れどもすり抜けるようにして効いた様子がない。
ならばもはやダメージ覚悟で押し通るか......と考え始めた頃。
「「天晴」!!」
ソウレンの掛け声と共に包囲が急激に狭まり、包囲していた炎球の直径が俺の背丈とほぼ同じになると同時に爆ぜたのだった。




