SFっぽい何か
────思えば、これまでに自分が幸せだと思えるようなことは何一つ無かったような気がする。
疲れからかそんな事をふと思った俺は、厳重な扉を前に休憩しようと腰を下ろし、鋼鉄で覆われて見えない空を見上げた。
俺たち現文明人達はこの荒れ果てた大地で、古代文明のものと思われる残骸にしがみつくように暮らしている。
大凡のコロニーは古代文明の巨大な残骸の上に作られ、彼らの遺産を発掘する事で生活しているのだ。
遺産を発掘するもの達はディスカヴェイターと呼ばれ、様々な古代遺跡を探検する。
そんな俺もディスカヴェイターの1人ではあるが落ちこぼれだ。
何故なら俺はアドの生成量がごく僅かな為だからだ。
アドは世界中にあるエネルギーで、生物はこれを体内で生成することが出来る。身体に流せば肉体を活性化させ身体能力を強化したり、怪我を治したり出来るし、操作する事で超常的な現象を起こせるのだ。
古代文明の遺産もまたこのエネルギーで動かすことが出来る。
ただ生物が生成したアドは偏りがあるらしく変換器を通さなければならないのだが。
しかし、稀にアドが生成できない、或いはごく僅かしか生成できないもの達がおり、彼らは枯人(から(空)びと)と呼ばれ、かくいう俺もその1人である。
俺はアドの生成こそできるがその量はごく僅かであり、そのせいで技術の大半がアドを利用する現代では生活するだけでも苦労する。
そんな枯人である俺がまともな職に就けるわけがなく、安い命をチップにディスカヴェイターなんぞをやっているのだ。
だが、こんな俺にも幸運はあったみたいだ。
なんと俺は未発見の遺跡を見つけたのだ。誰にも見つかってないという事はそれだけ金になるものが残っているという事である。これはチャンスだと俺はその遺跡を探索する事にした。
中をしばらく探索してみたが魔獣はおらず、古代文明の機械兵どももいなかった。どうやら相当機密性の高い施設だったらしく、俺が見つけた入り口以外に入る場所もなく、あそこも偶々開いたものだったらしい。
しかし一向に金になりそうなものは見つからず、どんどん深部へと進んでいくと少しひらけた空間に出た。
中央には台座があり、その上にケースがあったが、風化して割れておりそこから何かが覗いてた。
ようやくそれらしい物を見つけられた俺は喜んだが、何か仕掛けてあるかもしれない可能性を考慮してまず退路を確保し、銃をしっかりと構えた。
そして俺は中央に近づき、何があるのかを確認した。
そこにあったのはひどく歪な形をした剣らしき物だった。
奇妙なものだとは思ったが、古代文明の遺産なんて物はそういうのも多いから気にしない事にし、台座から剣を引き抜こうと掴んだ瞬間、俺の体からアドが湧き出てきた。
「なんだこれは…?俺のアドが活性化していく…?」
そう疑問を口にしている間も体の奥からアドが湧き出てくる。
どうやらこの歪な剣は持つだけでアドを増幅するらしく、その効果は枯人の俺でもはっきりと分かるほど凄まじい。
「はははははっ!とんでもない代物じゃないかこれは!」
アドを多少回復する物や生み出す物はあるにはあるが、どれも高価であるし効果が今ひとつな物も多く、枯人のアドすら増幅する物なんて聞いたことがない。
この歪な剣は売れば相当な額になる事は明らかだった。
「こんな物があるんだ。ここには絶対に何かある。最奥にはもっと凄まじいものが…!」
そう確信した俺はこの遺跡を攻略することを決意した。
それから3日ほどかけ、ついに俺は最奥らしき厳重な扉の前へと辿り着いたのだった。
しかし扉は固く閉ざされており、手持ちの火器ではビクともしなかった。
ためしに歪な剣でアドを増幅させ、剣に纏わせて攻撃してみたが僅かに傷がついたのみである。
「どうやって開けたものか………ん?」
扉をよくみると不自然な大きい凹凸があり、形状がどことなくみたことのあるような────
「もしかして、この剣か?」
そう、剣と同じ形状だったのである。もしやと思い、剣を扉にはめてみると、重く響く音がし、金属を擦り付ける音と共に扉がゆっくりと開いていったのだった。
そうして中に進むとそこには、剣のあった部屋より広い空間があり、奥の方にはよくわからない機械の山があった。
俺はその機械の山へと進むと、影となって見えなかった場所に棺桶のような機械があった。
それに寄って見ると中に入っていたのは、凶悪な魔獣でもなく、歪な剣でもなく、それは俺よりも少し幼いくらいの────────
「女…の子……?」
少女だった。