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初めての旅は異世界で  作者: 叶ルル
第一章 旅をしたいのに王城から出られません
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ヒロインはイケメンではなく美少女です

 暗くなったら寝ろってことなのか。明かりを求めて照明を探したが、備え付けの照明器具は見当たらなかった。

 寝る前に、この世界のレベルを調べておいたほうがいいかな。

 倉庫をあてがわれたのは、かえって好都合だ。


 地球の感覚ではまだ午後8時前。寝られるわけないので、薄暗い倉庫の中身を確認することにした。




 朝。たぶん午前6時くらい。昨日はとんでもない睡魔に襲われて結構早く寝てしまったと思う。

 それでもかなり多くのことを確認できた。


 技術レベル。

 紙がそこそこ大量にあった。羊皮紙? と木が原料と思われる洋紙だが、洋紙が大量にあったということは、普通に紙が消耗品扱いということだな。

 羊皮紙の材料は羊かどうかわからない。謎皮紙だ。そして、パピルス的な紙は無かった。


 ロウソクや木桶のようなものも見つけたが、形はどれも不揃いで、手作り感満載だ。


 ガラス製のオイルランプらしきものを発見した。手吹きガラスっぽい。

 ランプ用のオイルと思われるものも合わせて発見できたが、植物油みたいだった。これも手絞りだろう。


 で、これが問題。ロウソクとランプは発見したのにマッチが無い。

 照明があるのに使えない、もどかしい状態だった。


 外の明かりでなんとかしようと窓を探して驚いた。

 はめ殺し窓だが、板ガラスがはめ込んであった。透明度は低いし表面はざらついているが、ちゃんとした板ガラス。

 月明かりを通すには十分なガラスだった。



 月は普通に一つ。星もたくさん。地球の夜空と大差ないな。



 包丁もいくつか見つけた。暗くてよく見えなかったが、鉄製で鍛造だと思う。


 布は質が良い物とそうでないものの差が激しい。良いものは良いが悪いものは雑巾以下だ。

 せっかくなので良いものをシーツに使おう。


 他にも道具を見たが、この世界は産業革命を迎えていない。機械的な大量生産もできないようだ。

 袋などの布の加工品も、どれも手縫いだった。ミシンすら無いのか……。


 トイレにも行ったが、こっちは簡易水洗で逆にびっくりした。

 上下水道はある程度整備されてるようだ。


 風呂はあるのかな。ありそうな雰囲気だが。




 寝具を探していたのだが、この倉庫には置いていないようだった。しかし、布と毛皮を発見できたので、これで十分。


 ただし、この毛皮。一枚は狼の毛皮と思われるのだが、敷布団に丁度良いサイズなんだ。でかくね? 狼って人間より大きかったっけ……。


 そしてもう一種類。こっちは畳一畳分くらいにカットしてある謎生物だ。結構いっぱいある。茶色の単色で、熊っぽい感じ。

 畳一畳でカットしないと大きすぎるってことだよね。やばくね? ちょっとしたトラックぐらいの大きさ?


 気合を入れて訓練しないとヤバイかもしれない。




 目を覚ましてのんびりしていたが、朝食はどうなるんだろう。食堂で聞けばいいか。

 部屋を出て歩いていると、またギルバートが居た。


「よう、おはよう。忘れ物か?」


「は?」


「いや、さっき使徒の二人と神官さんが食堂に向かっていったから。一緒に居たんじゃなかったのか?」


 ふむ、呼んでくれてもいいと思う。まあいいか。


「俺はあいつらと別行動するからな」


 特にフィリスとは。たぶん教会まるごと俺の敵だ。敵対しているわけではないが、徹底的に無関心なんだろう。それなりに不愉快だから関わりたくない。

 今日の王の対応次第ではこの国まるごと不愉快になるかもしれないが、それはまだわからないな。


「そうか。それで、今日は訓練に参加するのか?」


 今日から参加しても良いって言ってたな。


「まだ決めてないな。王様と話をしてから決めるつもりだ」


 王の対応次第で変わるぞ。場合によってはすぐに城を出るつもりだ。


「おれは今日の午後の訓練に参加するから、参加するつもりなら声をかけてくれ」


 顔見知りが居るなら参加しやすいな。王の対応に問題が無ければ行ってみようか。


「ああ、わかった。じゃあ、俺は食堂行くから。じゃあな」


 ギルバートは「おう」とだけ言って巡回に戻った。




 食堂に入ると、隅っこで小さくなりながら朝食を摂るリア充どもを発見した。

 もっと堂々としてても良いんじゃないかね。


「おはよう」


 と声を掛ける。


「おはようございます」


 二人が返してきた。相変わらず顔色が良くないが、目に生気が戻っているな。多少は平静を取り戻したようだ。


「フィリスさんはどうした? 居ないみたいだが」


「彼女は教会で会議があるからって、さっき出ていったよ。聞いてないのかい?」


 会ってもないわ。でも、居ないなら逆に都合が良い。このまま昼まで帰ってこなくていいよ。


「聞いてないな。朝食が終わったら王様に会いに行けばいいのか?」


「そうみたいだよ。昨日の部屋に行けばいいってさ」


 そうか。面倒事は先に終わらせたいな。さっさと食事を終わらせて王の所へ行こう。


 朝食は、肉が無かったが昨日の夜と大差ないレベルだった。この国はパン食なんだな。




 俺の朝食を待って、三人で謁見の間に向かう。


「使徒か。聞いている。少し待て」


 扉の前に受付? 門番? みたいな兵士が居る。何かを確認して中に入れてくれた。


 謁見の間に入ると、真ん中には王様ファッションの王が。周りには鎧のおっさん。

 そして、ローブのお姉さん。お姉さんは昨日より増えてる。気が利くじゃないか。


「おはよう。昨日は良く寝られたか?」


「はい」


 俺はグッスリだ。体も軽くなった気がする。


「ええ……。まあ……」


 歯切れの悪い返事を帰す善。見た感じ良い寝具だと思ったけど、意外とそうでもなかったのかな。


「一晩明かしてみて、どうだ。部屋や食事に問題はないか?」


 王自ら聞くの? そういう調査は下っ端の仕事じゃないのか。


「問題ありません……」


 やっぱり歯切れの悪い返事だな……。

 まあいい。これから俺の確認タイムだ。


「ご質問良いでしょうか?」


「なんだ」


「俺は使徒ではないのですが、使徒の二人と同じように部屋の物を自由に使ってもいいのでしょうか?」


 同じように、だが同じじゃない。俺の部屋は倉庫なのだから、物資が大量にあるぞ。


「当然だ。構わん」


 やったぜ。そして確定した。王は俺が客室を割り当てられたと思っている。

 俺の部屋が倉庫だなんて思っていない。結果的に使徒よりも好待遇になったぞ。


 可能性は低くないとは思っていたが、良かった。


 この取引は、フィリスが居ると成立しないんだよな。客室に入れ直されて使い放題にならなくなる。

 部屋に準備されてる量はたいしたことないんだよ。

 おそらくフィリスは、部屋の物を使う権利は使徒に与えられたと思っている。俺は使徒ではないからその権利が無いと。


「ありがとうございます。そして、この城に図書室のようなものはありますか?」


「あるぞ。国内最大規模の書庫だ。貴重な紙を使い、手間をかけて書かれたものだ。大切に扱え」


 おや? 紙は貴重なのか。大量にあったけど。大量購入して安く抑えているのかな。

 自由にして良いって言われたから、遠慮なく使うけどね。


「場所は、フィリスに聞けば良い」


 嫌です。関わりたくありません。


「申し訳ございません。この後すぐに行きたいのですが、フィリスさんは教会に行っているそうですので、聞くことができません」


「そうか。では、誰か……」


「私が案内します」


 ローブの女性が手を挙げた。昨日は居なかったな。かなりの美少女だ。年は、同じくらいかな。背は高くない。背中まで伸びたサラサラの金髪が眩しい。


「そうか。では頼む。まだ何かあるか?」


「いえ、以上です。ありがとうございました」


 あ、しまった。着火道具のことを聞くの忘れてた。ギルバートあたりに聞けばいいか。


 リア充どもは聞くことが無いようで、謁見は意外と早く終わった。


 リア充どもに別れを告げ、図書室に向かう。書庫と言っていたから、倉庫みたいな物かもしれないな。


「私は宮廷魔導士のルナ・ウィングです。よろしくお願いします。あなたのお名前は?」


 図書室に向かって歩きながら話しかけてきた。


 昨日居なかったから聞いていないのか。

 で、あのローブ集団は宮廷魔導士だったと。拉致の実行犯か。リア充どもに恨まれなければ良いけど。


「コーです。よろしく」


 近くで見ると益々かわいいな。緊張するわ。


「コーさんは使徒ではないんですよね。なぜこの国に?」


 俺が聞きたいわ。


「わからない。たぶん巻き込まれただけだと思うよ」


「じゃあ、使命は? 神託の修業はしなくても良いのですか?」


「俺は何も言われてないよ。使命も義務も無い。適当に旅して帰る方法を探す予定」


「そうなんですか。私に手伝えることがあれば言ってくださいね」


 ルナさんは少し困った顔を見せる。


「預言者の鈴を鳴らしたのは私ですから。少しは役に立つと思います」


 なるほど、イレギュラーな俺が混ざったことに責任を感じているのかな。


「俺がこの国に来てしまったことに関しては気にしなくていいよ。タダで連れてきてもらってラッキーとすら思っているから」


「ありがとうございます。ところで、指輪の調子はいかがですか?」


 ん? 翻訳してくれる指輪のことか? 自然に会話できてたから忘れてたな。不思議道具だ。便利だから持って帰りたい。


「問題ないよ。助かってる」


「それなら良いのですが……。言いにくいのですが、喋り方が辿々しいというか、ぎこちないようでしたので気になりまして」


 おっと、緊張しているのがバレたか? 自然だと思ってたんだがなあ。


「俺は普通に喋っているつもりだよ。どこか変だった?」


「はい。なんというか片言だったもので」


 いやいやいやいや、さすがにそれは無いわ。そこまでキョドってないわ。


「ルナさんの耳にはどう聞こえているの?」


「ルナ。ニハ。ドウキコエテ。イル。みたいな感じで聞こえています」


 片言じゃないか。うわーそんな風に聞こえてたのかよ。この指輪使えねー。


「たぶん指輪の不具合だね。どうしよう」


「申し訳ございません。この指輪も私たちが作った物です。テストでは問題無かったのですが」


「聞く分には気が付かないからね。仕方ないよ」


 レプリカって言ってたから、リア充どもが身につけてる本物の指輪なら不具合無いんだろうな。あいつらとの会話は日本語だから違和感無いんだよな。

 しかし、文字は読めるのか? 聞こえるっていうことはたぶん読めるんだろうとは思うけど。


「指輪を修正します。それまではご不便をお掛けしますが……」


 あ、それは困るわ。今指輪がなくなると何もできなくなる。文字が読めるか確認して、問題なければそのまま使いたい。


「文字が読めるなら修正はいらないよ。それよりも指輪無しで会話できるようになりたい」


「わかりました。では一緒に覚えましょう。私が教えます」


 マジか。それは嬉しい。女の子と一緒にお勉強とか、学生時代に一度はやっておきたいイベントの一つだ。


「ここが書庫です。狭くて暗いので気を付けてください」


 案内されて入った図書室は、まるで倉庫だった。居住空間を完全に無視した狭い通路、ぎっしり詰め込まれた本棚には溢れんばかりの本。

 窓が無く、埃っぽくて真っ暗。扉から漏れる明かりだけが頼りだな。


 奥に進むと畳三畳分くらいのスペースがあり、丸テーブルと椅子が設置されていた。かなり暗い。ここで本を読むのは不可能なのでは?


「オイルランプやロウソクは持ち込み禁止です。明かりの魔道具が無いと何も見えないので、魔力切れに注意してくださいね」


 そう言ってランプのような物を持ってきた。結構明るいな。


「どうやって使うんだ?」


「見たことありませんか? 割と一般的な魔道具ですが」


「俺が元いた世界には魔法や魔道具が存在しないからね。魔道具とか言われても、どういう物かわからない」


「存在しない? どうやって生活するんですか? 服を見る限り高度な技術があるようですが」


「先人の知恵の結晶だね。工業技術は……正直この国よりも数百年分ほど進んでいると思う」


「ありえない……」


 世界が終わるような顔をしている。そんな深刻なことかな……。


「でも、部分的にはこの国のほうが進んでいるみたいだよ、魔道具なんて、元の世界には無い技術だしね。すごいと思うよ」


 必死のフォローだ。さすがにこれだけ絶望の顔をされると焦る。


「ですよね。ええ、我が国の魔道具技術は世界トップクラスです」


 ちょっと元気になった。意外とチョロいな。


「だから、使い方を教えて貰えるかな」


 それが使えないと困るんですわ。


「簡単ですよ」


 ランプの底を指さして言う。


「ここに魔力かオーラを通すだけです」


 簡単じゃなかったー。ん? オーラ?


「魔力が何かよくわかりません。オーラというのは初耳です」


「オーラは、私は使えないのでよくわかりませんが、魔力は、魔法を使うための……なんと言うか、あるじゃないですか。こう、力……的な」


 全くわからない。説明下手か。


「参考になる本は何かありませんか?」


「ちょっと待っててくださいね」


 そう言って数冊の本を持ってきた。


『魔法初心者講座』

『ゴブリンでも使える、簡単魔法習得法』

『こどものまほう』

『なれる! 上級魔導士』

『オーラと魔力』

『オーラで戦う戦士入門』

『オーラは友達! 明日から練気戦士』


 香ばしいタイトルは世界共通なのか……。こんな本が本屋に並んでたら、中二病患者だったらついつい手が伸びるぞ。

 ていうか文字は問題なく読めるな。指輪はこのままでいいや。『一緒にお勉強』したいし。


「これを読めばわかると思いますよ」


「ありがとう。助かったよ。この後暇なら、言葉の勉強に付き合ってほしいんだけど」


「ごめんなさい、私はこの後仕事がありますので……」


 うーん、残念。仕事なら仕方がないな。


「仕事が終わった後はいかがですか?」


 おお、夕方か。良いじゃないか。向こうから代案を出してくれるなんて、勘違いしてしまいそうだ。


「良いですよ。俺は午後からは訓練に参加します。仕事が終わったらまた会いましょう」


「はい。魔導ランプはしばらく持つと思いますが、明かりが弱まったらすぐに消えてしまいますのでお気をつけて。

 退室する時に出入り口の横にあるテーブルに戻しておいてください」



 ルナさんが仕事に向かったので、昼までは読書で時間を使おう。

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