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初めての旅は異世界で  作者: 叶ルル
第十章 初めて旅は異世界で延長戦
302/317

休暇3

 俺とアーヴィンはミルジアの荒野でテントを設営し、一夜を明かした。今はテントの外で朝食中だ。


 今日の主な予定は薬草の採取。ついでにリザードも討伐する。ただ1つ気がかりなのは、アーヴィンの戦闘についてだ。


 アーヴィンに気配察知を教えてから、それなりに時間が経っている。それなりに使えるようになっているだろうと考えていたが、少し甘かった。まだ実戦で役に立つレベルではない。気配察知に集中すれば気配がわかる、という程度。落ち着ける場所であれば使えるのだが、戦闘中ではムリだろう。


 やはり実戦経験が必要ということなのだろうか。熊のダイキチとじゃれ合っている程度では厳しいんだな。エルミンスールの近所には魔物が居ないから、あそこに引きこもっているうちは上達しないと思ったほうが良さそうだ。


 ……いっそのこと、ボナンザさんに預けてみようかな。


「ねえ、変なこと考えてない?」


 アーヴィンは朝食後のお茶をすすりながら、胡乱げな目を俺に向ける。


「変なことなんか考えてないぞ。アーヴィンの訓練方法についてだな……」


「嫌な予感しかしない!」


 失礼な。これでも真面目に考えているんだぞ。


 朝食を終えて食器とテーブルを片付けていると、街の方角から何者かが接近していることに気付いた。反応は『敵対』で、人数は3人。


 冒険者は普段から周囲を警戒しているため、敵対の意思がなくても『敵対』の反応になる。ただの冒険者パーティなら気にする必要はない。しかし、どうもそういうわけにはいかないようだ。


 そのうちの1人は、ギルドで挨拶を交わした大男だった。残りの2人は知らない。


「あれっ? これって……」


 俺に遅れて、アーヴィンも気付いたようだ。気配がある方向に顔を向け、不安そうにしている。


「お客さんだな。俺たちに用があるかはわからないが、用心しておこう」


 偶然リザード狩りに来た、という可能性もある。だったら俺たちが別の場所に移動すればいい。



 朝食セットの撤収を終えるころ、3人組は目視できるところまで近付いていた。連中は俺の姿を確認すると、一目散に駆け寄ってきた。


「おい、探したぞ。さっきは世話になったな」


 大男は口元をいやらしく歪めて言った。わざわざ俺たちを探して、会いに来たようだ。その雰囲気から、和やかに雑談をするために来たわけではないと感じさせられる。


「えっと……誰だっけ?」


「グレゴールだ!」


 大男が大声で名乗った。その後ろには、中肉中背の男と小さい男が並んでいる。


「へぇ? そんな名前だったんだな。他の2人は初対面だと思うが、グレゴールBとグレゴールCで良かったか?」


「テメェ! 舐めてんのか!?」


 小男が吠える。俺も小柄な方だと自覚しているが、そんな俺よりもずいぶん小さい。でも態度だけは大男に負けていないようだ。


「ちょっと……どうしてすぐ挑発するの……」


 アーヴィンが小声でぼやく。


「挑発する気は無いぞ。名乗らない方が悪いと思うんだ」


 アーヴィンにはそう答えたが、名乗られたところで覚える気はない。だが、中男は俺の言葉を真に受けたらしく。


「ふんっ。オレの名前は……」


 名乗ろうとした。


「あ、別に名乗らなくていい。大、中、小で覚えておくから」


 大男、中男、小男それぞれに指をさしながら確認する。


「ふざけんじゃねえ!」


 中男が怒って怒鳴る。その瞬間、湿地帯から大量の魔物の反応がこちらに向かってきていることに気付いた。だから、大きい声出すなっての。


「やめろやめろ。一回静まれ」


 3人組をなだめるように言う。しかし、奴らはまだ興奮が収まらないようだ。


「はぁ? いまさら謝って、許してもらえると思ってんのか?」


 小男が俺の肩を突き飛ばしながら言う。


「ああ、違う違う。魔物が迫っているんだよ。そこそこ多いぞ」


 反応から、リザードの大群だということがわかる。おそらく50匹くらいだろうか。今はまだそれほど多くないが、まだ増えるかもしれない。


「何を馬鹿なことを。逃げようったってそうはいかんぞ!」


 聞く耳を持っていないらしい。こいつらはどうでもいいんだけど、テントが壊されたら大変だ。リザードが到着する前に撤収しておきたい。


「はあ……わかったよ。お前らは後で相手してやるから、先に野営地の撤収をするぞ」


 俺は3人組に背を向けて、しゃがんでテントに手をかけた。


「おいテメェ、馬鹿なのか? 死ねよ」


 小男の拳が俺の後頭部に当たった。ちょっと痛いが、大したことはない。しかし、相手の拳はそうでもなかったようで。


「いってぇ!! 何しやがる!」


「馬鹿なのか? 人を素手で殴ったら、痛いに決まってんだろ」


 まいったなあ。作業が進まないぞ。もう魔物は直ぐ側まで迫ってきている。丁寧に仕舞っている場合じゃない。

 天幕を引っ張って強引にペグを引き抜き、クシャクシャの天幕をそのままマジックバッグの中に放り込んだ。グランドシートも適当にマジックバッグの中へ。2つとも後でたたみ直す必要があるが、とりあえずは戦える状態になった。



 テントを撤収すると同時に、リザードが目視できるほどに接近してきた。地上に出ても、やっぱりワニだ。


「ぐわぁっ! なんだ、コイツラは!!」


 3人組はようやく騒ぎ始め、武器を構えた。


「だから言っただろ。魔物が来てるって」


「くそっ! ふざけやがって!」


「文句を言ってる暇があるなら、戦えよ。冒険者なんだから。リザードくらい楽勝だろ?」


 アレンシアで言うところのゴブリンみたいな常時討伐対象だ。大量に出るらしいから、ミルジアの冒険者なら慣れているだろう。


「馬鹿か! 数を考えろ! こんなに一気に戦えるわけがねぇ!」


「こんなのが居るなんて聞いてねぇぞ! オレは帰るからな!」


「どうやって帰るんだよ!」


 3人組は大騒ぎしながらこの場を離れようとした。しかし、リザードの足は地上でも早く、冒険者たちはあっという間に囲まれた。


 俺とアーヴィンもしっかり囲まれている。


「ねえ! どうするの!?」


 アーヴィンはかなり取り乱しているようだ。


「問題ない。昨日よりはマシだろ?」


「どこが!」


「水に潜れないからよく見える」


 リザードは水中に居るから危険なだけ。人間は水に入ると動きが鈍るし、水中に隠れられたら索敵が難しくなる。しかし、地上ではほぼ対等だ。冷静に対処すれば問題ない。


「そういう問題じゃない!」


「ほら、がんばれー」


 地上のリザードはそれほど強くないから、落ち着いて戦えば大丈夫だろう。アーヴィンに向かう敵の数を調整しつつ、できるだけアーヴィンに戦わせる。



 心配なのはアーヴィンだけではなかった。3人組のほうもかなり苦戦しているようだ。5匹は自力で討伐したが、数で押されて劣勢気味。放っておいたら死にそうだ。


「リザードくらいサクッと倒せよ」


 そう愚痴りながら、リザードを3人組のほうへと蹴り飛ばす。俺の蹴りで瀕死になったリザードは、片手剣を持った中男によって切り捨てられた。やればできるじゃないか。


「ほら、次!」


 次は大男を狙って蹴り飛ばす。大男は戸惑いながら大剣を振り、リザードを両断した。こうなったら平等に。小男にもトドメを刺させてあげよう。


「ほい、もういっちょ!」


 小男はリザードの直撃を受け、地面に転がった。


「大丈夫か!」


 中男が叫びながら小男に飛んできたリザードを倒し、小男の手を引いて立たせる。怪我は無いらしい。でも、小男の戦闘力はあてにできそうにない。


 というか、3人とも息が上がっている。もうほとんど戦えないだろう。追加のリザードは来ないようだし、アーヴィンの訓練も十分かな。残りは俺が片付ける。


「アーヴィン、休んでいいぞ。あとは俺がやる」


 残りは10匹程度。アンチマテリアルライフルでサクッと撃ち抜いて終了だ。俺が一撃で倒せなかった個体も何匹かいたが、3人組がトドメを刺した。



 戦闘が終わると、3人組が俺に頭を下げてきた。


「すまねぇ、助かった……」


「あんたら、本当に強かったんだな」


「何者なんだ?」


 さっきまでの威勢はどこにやら。ずいぶんと殊勝な態度だ。ようやくまともに会話ができるようになったか。


「レイトンとジョナサン。ただの冒険者だ」


「そりゃあこの前死んだ冒険者の名前だろ?」


 一瞬でバレてるじゃん。この偽名はあまり意味がないのかも。まあ、今日一日使えればいいから十分か。


 一拍おいて、中男が口を開く。


「素性を隠す必要があるんだな……。まあ、あの街に来るくらいだから、それもそうか」


 妙な納得のされ方をした。偽名を使うことが、まるで当然であるかのよう。


「あの街はそんなヤツばっかなのか?」


「そうだな。あの街に居座る冒険者は大半が元犯罪者か、脱走兵だ。ギルド長もな。あんたらと一緒だよ」


 一緒にすんな。


「オレたちゃ元兵士だ。安心していいぜ」


 安心できる人間は突然襲撃をかけてきたりしない。ただの犯罪者予備軍だな。こいつらがあたりまえに生活してる街って……。


「なあ、ミルジアの治安はどうなっているんだ? 犯罪者が逃げ放題じゃないか」


 他人事ながら心配になる。パンドラも脱走者だし、他にもめちゃくちゃ居るんじゃないかな。


「領によって法律が違うから。犯罪者にとって都合がいい領もあるってこと」


 アーヴィンが答える。そういえば、あの街は賄賂が使えるってことで選んだんだったな。


「この領の治安、終わってね?」


「オレたちだって終わってると思う。でも、そんな街だから暮らしていけるんだよ。税金はクソ高ぇけどな」


 3人組から詳しく訊くいた。

 ミルジアの領主には国王に近い権限を与えられていて、法律や税率をある程度自由に設定できるそうだ。そして、この領には犯罪者が逮捕されにくくなる法律があるのだという。


 この領は他の領には住めない連中を集め、人口と税収を増やしている。さらに、エウラやアレンシアとも近いため、近隣国から流れてきた人も多く居るらしい。


 ただし、怪しい連中には高い税率が設定されているそうだ。他に行くあてがないんだから、文句は言えないだろうなあ。


 合理的だとは思うけど、誰かが歯止めをかけないと、犯罪発生率が大変なことになるんじゃないだろうか。


「なるほどなあ。国は文句を言ってこないのか?」


「言わねえな。王様よりも教会のほうが強ぇから。その教会の権力も最近怪しいだろ? もうやりたい放題よ」


「なんつったっけ……? あいつ。最後の使徒とかいう奴。あいつのおかげで生きやすくなったぜ」


 俺のことじゃないか。犯罪者予備軍に喜ばれても嬉しくないなあ……。やぶ蛇にならないうちに話題を変えよう。


「十分休んだだろ。さっさとリザードを片付けて、換金しに行くぞ」


 周辺には、約50匹のリザードが転がっている。残らず回収して換金しないともったいない。素材回収用のマジックバッグを3人組に放り投げて言う。


「ほら、お前らも手伝えよ」


「うん? ああ、これが魔道具か……」


 中男が不思議そうな顔でマジックバッグを拾い上げ、そう呟いた。魔道具はミルジアでは珍しい。3人組は初めて見たのだろう。


「いいから早くやれ。全部入るはずだ」


 3人組が倒したリザードも混ざっているが、判別不可能なので一緒に入れる。どうせこいつらだけでは持ち帰れないだろうから、俺なりの配慮だ。


 5人で手分けをしたので、回収はすぐに終わった。大男がマジックバッグを俺に返しに来たとき、神妙な面持ちで話しかけてきた。


「本っ当に悪いィんだけど……オレたちにも報酬を恵んでくれねぇか?」


「いや、お前らだって何匹か討伐していただろ。それ以上に寄越せっていう気か?」


「え? オレらの分にしていいってのか?」


 あれ? もしかして、こいつらは俺が独占すると思っているのか? 確認してみよう。


「倒した奴が報酬を貰うのは当然だろ。それ以上に寄越せって言うなら、お前らを強盗だと判断する」


「いやいやいや! カンベンしてくれ! オレたちは5匹討伐した。それだけ貰えれば十分だ!」


 実際、こいつらがトドメを刺したのは10匹くらいだと思う。俺が弱らせたリザードはカウントしないつもりか。意外といいやつじゃないか。


「いいだろう。お前らがトドメを刺した分はお前らのもんだ。街に帰ったら分けてやるよ」


「すまねぇ……」


 大男は深々と頭を下げると、中男と小男もそれに倣う。最初っからこの態度で来いよ……と思わなくもないが、少しだけこいつらの評価が上がった。まあ、アホには違いないが。


 あ、しまった! こいつらの報酬を分けるために、街まで一緒に行動しなきゃいけなくなったじゃないか。うわぁ……メンドクサイ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 話が進むほど雑になっているようで、キャラのチンパン化が止まらない。 一応ここまで読んでみたけど、基本初手でドはまりしないなら読まなくていいレベルでした。
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