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血染めの覇道  作者: 舞って!ふじわらしのぶ騎士!
王道 キン星山編 第一章 輝け!キン星山!
82/162

第五十二話 秘められる真実 2 の巻‼

大変お待たせしてもうしわけありません。次回は10月17日頃に投稿したい次第でありんす。ではなくありますでごわす。


 華麗南蛮。


 かつて世界が米ソによって東西に分断される以前に、アジア最強の格闘家の一人として知られていた人物である。

 彼の使う格闘技の名はカラリパヤットといい、中国の形意拳やタイのシラットといった様々な影響を与えたとされている由緒正しき流儀の使い手でもあった。


(※アジアの格闘技の源流みたいな言い方をすることもあるがカドが立つから止める)


 華麗南蛮は名門ゆえの気位の高さゆえに俗世の価値観に迎合し、形骸化して堕落していく当時の格闘技の世界を憂いていた。

 そんな彼がコン・デ・コマ(※南米で有名な例の柔術の発展に貢献した日本の格闘家、前田光世のこと。この話の世界にも一応存在する)の伝説に魅了されて異種格闘技戦に魅了されたことは当然の成り行きと言えよう。

 彼は師匠・印度滅多神から破門を受けて海外に武者修行の度に出る。


 ブラジル、アメリカ、ヨーロッパを破竹の勢いで巡った彼は最後に極東の地・日本に姿を現す。華麗南蛮と海星雷電の出会いはその時だった。


 「ちょっとそこのお兄さん。相撲の稽古につき合って欲しいでごわすー」とこんな感じで雷電は華麗南蛮を誘ったらしい。


 華麗南蛮は貴族階級出身であり日本語にも通じた男だったので、相撲の技術を習得するついでに海星雷電の稽古を手伝うことになった。

 雷電はキン星山の四股名を継承した後、とあるスモーデビルとの戦いに勝利する為に失われた奥義を復活させなければならなかったらしい。

 雷電は大叔父にあたる海星牛尾からキン星山の四股名を継承したことになっている。

 しかし、父親の海星波平からはキン星山の四股名を継承することを許可されてはおらず当時は家から勘当されていたらしい。

 華麗南蛮もまた名門の出身でありながら他流試合を繰り返し、家門に泥を塗るような真似をした無法者として追放処分を受けていた。

  同じような境遇から意気投合した二人の格闘家は切磋琢磨してついにキン星山の奥義を復活させることに成功する。


 その奥義こそが「へのへのもへじ投げ」だった。


 「はあ…。おいどんのお祖父さんにそんな話があったとは知らんかったでごわすよ」


 光太郎は横目で父親である英樹親方の姿を見た。

 英樹親方は居心地の悪そうな顔をしながら、その後の光太郎の祖父について話をした。

 祖父から溺愛されており、祖父は何かと不出来な雷電を悪く言っていた。

 幸いにして雷電と英樹の仲は良好だったが、祖父の死の間際まで確執が氷解しなかった事には責任を感じている。


 「ワシのお袋つまり光太郎の祖母ちゃんから聞いた話ではな、親父は三十を過ぎても実家の門を出入りすることは許されず表の名である海星雷電が一人前の力士になってからやっと実家に帰ることを認められたらしいぞ。その話に出て来る華麗南蛮という人物とワシは直接面識は無いが、あの親父をして”生涯の恩人”と言わしめた男だ。羽合庵の言うように印度華麗が華麗南蛮の孫弟子ならば心してかからねばならんな」


 実際、生前の雷電は普段は陽気な性格だったが相撲となれば別人のような厳しさを持った人物だったらしい。

 彼の弟子である英樹、タナボタ、羽合庵は一流と呼ばれる力士ばかりである。

 さらに英樹親方は大神山、光太郎の兄である翔平を育てたという実績もある。


 (ここで羽合庵師匠の顔に泥を塗るような真似は出来んでごわす‼)


 光太郎は決意を新たに自分の頬を叩いた。

 やがてそれまで静観していたブロッケン山が今度は自身の印度華麗との因縁についての話を始める 


 「俺の師匠、ライン川は全ヨーロッパ相撲大会に出場する際にとある格闘家のもとに臨時で弟子入りをしていたことがある。その格闘家というのが華麗南蛮というわけだ。別の大会で俺は印度華麗と顔合わせをしたんだが、あまり情報を引き出すことは出来なかったんだ。ただ一つだけ言えることは、ヤツは俺の知り得るインド相撲をさらに進化させたインド相撲の使い手になっているということだ。おそらくその技の中には確実に、華麗南蛮と海星雷電が完成させた技”へのへのもへじ投げ”が存在することは間違いあるまい」


 ブロッケン山はそれまでのどこか投げやりな雰囲気とは違ったシリアスな表情で光太郎に語る。

 印度華麗には師を通じて知った時からどこか危うい印象を抱いていた。

 試合中の事故、対戦相手の棄権。信じたくはないが本人の意志とも、第三者の思惑が関わったものだとは思い難い。

 その時、ブロッケン山の脳裏に浮かんだのは西側の決して多くは無い知り合いの一人である羽合庵との他愛ない世間話の中に登場したスモーデビルの存在だった。

 ドイツ国内においてもスモーデビルの伝説は数多く存在し、神話の力士ジークフリート山と戦ったファフニール山もスモーデビルだったのではないかという俗説さえ存在する。


 (スモーデビルの真の恐ろしさは強さへの執着が伝播するということだ。俺はともかくウチのソーセージには真っ当な力士になってもらいたいものだぜ)

 

 自身の後継者たる息子を持つブロッケン山としては危惧せざるを得ない問題だった。


 「つまり印度華麗は限界を超えた超握力、そして日本相撲の流れを組む独自の戦術を交えたインド相撲の使い手。…これは強敵ですよ、若‼」


 美伊東君はメガネを輝かせながら光太郎に話かける。

 今の成長した光太郎ならば怯むどころか闘志を燃やしているに違いない、という期待があってのことである。

 しかし、光太郎は頭を両手で押さえながらしゃがみ込んでいた。

 いくら強くなろうと光太郎の本質にはあまり関係なかったようである。


 「ひいッ‼そんなタダでさえも対戦相手を飴細工のように捻じ曲げてしまう印度華麗がもっと怖くなってしまったでごわすよ‼もうテキサス山との約束とかどうでもいいから、部屋に籠って推しのアイドルのちょっとエッチな動画を一人で鑑賞したいでごわすー‼」


 悲鳴を上げて一目散に逃げようとする。

 しかし、直後光太郎は鈴赤と美伊東君に殴る蹴るの暴行を受けてから強引に立たされた。

 鈴赤も美伊東君同様に大人の光太郎が祖父の代から因縁の対決と聞いて闘志を燃やしているのではないかと考えていたのだ。

 少なくとも血統や師弟の絆を重んじるドイツ力士として教育を受けている鈴赤ならばそのように受け取ったはずだ。


 「おい、羽合庵。お前の期待の星は手足を引っ込めた亀みたいになっちまったぞ。どうするつもりだ?」


 羽合庵は眼を閉じて首を横に振る。光太郎の弱気は生来のものであり、いざ勝負となれば何かの理由をつけて立ち上がってくるのは知れたことだ。


 「嫌じゃ、嫌じゃ。絶対に殺されるー」と泣きじゃくっている光太郎の姿を見ても羽合庵は些か動じる様子も無く、無言でズカズカと光太郎のところまで行ってから一発ぶん殴っていた。


 光太郎は美伊東君、鈴赤、羽合庵にタコ殴りされた後痣だらけの状態で対印度華麗戦の会議が再開されることになった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 原作(え)のイメージを差し引いても、こういう何気ない場面すら面白く感じさせるのは、やはり作者様の器量だなと……  さすがでごわすよ、毎回ぶつかり稽古のつもりで拝読しているでごわす!(えー)…
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