表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
血染めの覇道  作者: 舞って!ふじわらしのぶ騎士!
覇道 春九砲丸編 
7/162

地上でもっとも過酷なるスモー遊戯の果てに

登場人物紹介


ビクトリーラーメン山


中国最強のスモーレスラー。崑崙山で孫悟空から拳法を学んでいる。その気になれば「かめはめ波」を撃つことも可能。千の技を持つ男、とも呼ばれている。糸目と凹凸の少ない顔、そして風にそよぐ三つ編みのおさげがトレードマーク。得意技の駱駝固めで仕留めた相手にガーリックパウダーをふりかけてラーメンの麺にして食べてしまう性癖はあまりに有名。筆者はこれを夏休みこども劇場というアニメ専用の時間帯に見た記憶がある。しかも同時刻に放映していたのは「ジャングル黒ベエ」、すごい時代だった。

 

 「私は崑崙山で三十年の間、拳法を学びこれを極めた(何の拳法だ!)そして武者修行の途中、上海で出会ったトンポーロー親方の相撲道という諸子百家の思想に勝るとも劣らない素晴らしい思想に感銘を受けその後三十年本気で相撲を学んだのだ。私は今、この道を究めた証を打ち立てる為にこうして世界を回り強豪と戦っている」


ラーメン山の発言に俺は首をかしげてしまった。


一体、こいつはいくつなんだ。


この話が真実ならば少なくとも六十歳以上ということにならないのか。


「だが私の目も曇ってしまったようだ。片や路上で私闘に興じる不良力士、もう一人は伝統ある由緒正しき家柄に生まれながら歴史を踏みにじらんとする無頼。貴様らは相撲道を汚す不浄の輩、これを成敗せずに相撲道を語ることは許されない。フゥゥゥゥ、今この場で二人まとめて倒してやろう」


ラーメン山のバックステップ。スモーでバックステップを使うのか。

俺は倫敦橋の前に出る。


ラーメン山はバックステップを使って一体どんな技を使うつもりなんだ。俺もタフネスには自信がある。


来い、ラーメン山。


お前の技で俺をぶっ壊してみろ。


俺は全身の筋肉を引き締めてその時に備える。

一発ぐらいなら問題はないだろう。俺は不敵に笑った。


「まずはお前から始末してやろう、春九砲丸。この技は遥か古の昔中国最強の猛将呂布を破った劉備玄徳の技。この技を見たからには生きて帰れると思うなよ。相撲道奥義、一騎当千万里の電車道!」


馬鹿な。


まず俺は自分の目に映ったものを疑った。

たった一人だったはずのラーメン山の姿がこうして見ているだけでも千人以上には増えている。

恐るべし中国最強の力士、ラーメン山。



  奴にはこんなにたくさんの兄弟がいたのか。


  もしかすると中国にはラーメン山を大量生産する工場があるのか。


  だが俺も負けちゃあいられない。生憎だが、俺のガードは甘くない。

  ラーメン山の千人や二千人くらいではビクともしないのさ。


気がつくと俺はおよそ千人くらいはいるラーメン山に囲まれていた。

千人のラーメン山による容赦ない鉄砲ガンスリンガー、体当たり(エクスプロージョン)を鉄壁のガードで防御する。

ラーメン山の猛攻は間断なく続いた。

油断すればまわしを取られて投げられてしまう。たまらず俺はガードを上げる。

しかし、そこから新たに出現したラーメン山の強烈な蹴たぐりが足にヒット。

俺は技の感触に違和感を覚える。

痛みどころかダメージすらない。

こんな軽いローキックで何をどうするつもりだってんだ。


「今度はこっちの番だ。喧嘩殺法、無手勝張り手だツ!」


俺の張り手がラーメン山の胸板にヒットした。

フォームはいい加減、素人丸出しの喧嘩殺法ゆえに見てからでも十分に回避することが出来るテレフォン動作。

しかし、この張り手はそんじょそこらの力士に受けることも回避することも出来ない。

なぜならこの技の真価は俺が実戦で磨き上げてきた経験そのものだからだ。


俺の技を食らったラーメン山が苦悶の表情でその場で崩れ落ちる。


一人、やったか。


ラーメン山を何とか押し返すきっかけになるかと思ったが、そうはならなかった。今さっきに技を食らったラーメン山の姿が消えてしまったからだ。


「三国時代、ただ一人勝ち残った史上最強の名将劉備玄徳は仁の心を大切にした。仁の心とは広くて深い愛の力。故に個の独りよがりな力では、決して群の力にはかなわないということだ。お前が倒した私の闘気分身もまた新たな力を得て、生まれ変わってくる。たった一人の力でこの私にどう立ち向かうというのだ」


いや、そこは普通に反則負けだろ。

俺は当然の疑問を口にすることはなかった。

元来、戦いとは理不尽なもの。スモーの世界と言えどそれは例外ではない。

俺も試合の結果に納得がいかなかった他の部屋のスモーレスラーたちに囲まれたことは何度かある。

つまり、こんな修羅場は慣れているのだ。


ラーメン山の体当たりを躱して、別のラーメン山に勢いをそのままにぶつける。


どうだ、ラーメン山。あんたが何体、分身を繰り出そうと無駄だ。

スモーは行儀のいいスポーツじゃねえ。格闘技なんだからなッ!!今度は撞木反り(柔道でいうところの肩車)でラーメン山たちを一網打尽にする。


「春九砲丸、貴様にはなぜ仁の心がわからん。さっさと負けて私の軍門に下ればよいものを抵抗しおってからに。まさか腕一本で私に勝てるとでも思っているのか!」


その時、はるか上の高みからラーメン山の声が聞こえた。

やはり俺の思った通りだ。

最初からここには本物のラーメン山はいない。


だが、だからどうしたってんだ。

俺はさらに勢いを増して俺を屈服させようとするラーメン山の分身軍団に突撃する。


全員倒せば、文句はないだろ?



「俺には負けて降参するなんて選択肢は持っちゃいねえのよ!心が、体が、魂がスモーレスラーとの最高のファイトを求めているんだけなんだからよ!」


俺は片手でラーメン山の分身を捕まえる。

そしてそのままラーメン山の体を振り回してハリケーンよろしく他のラーメン山たちを蹴散らしてやった。


次々と姿を消すラーメン山軍団。


俺は残ったラーメン山の軍団目掛けて武器の代わりに使ったラーメン山をぶつけてやった。

許容量以上のダメージを受けてしまった為、次々と消滅するラーメン山の分身たち。

その姿はまるで霧か霞が晴れていくような光景だった。


何という現実離れした戦いだ。


これが世界レベルのスモーか。


だがその時の俺には感傷に浸る暇はない。

目の前にラーメン山の姿が見えたからだ。


この闘気オーラ偽物フェイクではない。本物のラーメン山だ。


「奥義、雷震斬首蹴脚イナズマレッグラリアートッ!!!」


正面!?いや後ろか!


俺は正面にいるラーメン山の残像に翻弄されることなく、背後から俺の延髄に襲い掛かるラーメン山の蹴たぐりをしゃがんで回避する。

このままで終わらせてなるものか。

俺はモーションの短い突き上げ張り手でラーメン山の胸を狙う。

その攻撃に反応したのはラーメン山の髪だった。

ラーメン山の三つ編みは全身をしならせて、獲物に襲いかかる蛇のように俺の張り手を弾き飛ばす。


まさか髪を武器として使ってくるとはな。

流石は神秘の国、チャイナ最強のスモーレスラーだぜ。


さらに俺の腕を拘束せんと襲いかかってくるラーメン山のおさげ。俺は後退して距離を置いた。


「鍛えられた私の全身は凶器、ゆえにこの素敵なおさげでさえも他者の命を奪う恐ろしい道具となるのだ。恐れ入ったか、春九砲丸よ」


チッチッチ。

その程度じゃ俺のまわしは取れない。


もっと本気を出してこい。


人差し指を立て、俺は気取った様子を見せてやる。

 火花を散らす中国の龍と英国の獅子。両社は次の衝突に備えて、ただのその時を待つばかりであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ