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血染めの覇道  作者: 舞って!ふじわらしのぶ騎士!
王道 キン星山編 第一章 輝け!キン星山!
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第二十三話 そして決戦へ…というわけでもない!!の巻

次回は五月二十日になるでごわす!!


 スモーデビルにとって敗北は屈辱であり、死をもって償わねばならぬ最大の罪だった。

 勝利に固執するのではない。

 敗北することが悪なのだ。

 全ては入門以来、鰐だか襟巻蜥蜴だか恐竜の足だか正体がよくわからない鬼コーチから教わった鉄の掟である。

 そして、山本山は常日頃から自分自信に「師の教えこそ至高」と言い聞かせてきた。


 「テキサス山よ。敗北とは己の存在意義の喪失ではなかったのか?」


 決まり手は一本背負い。真っ当な相撲の試合なら軍配は山本山に上がる(※筆者が専門家に聞いたところ封じ手の五輪砕きに相当するらしい。尚五輪砕きは仕掛けた方が負けになる技なのだ)。

 しかし、これは野試合であり事実として山本山は十分の位置にも満たない(※言い過ぎ)体重差の力士に負けてしまったのだ。

 

 今さら勝って誇るべきものなど在りはしない。

 

 テキサス山は革製の手袋を外しながら右手を差し出した。

 山本山とは戦っている時は敵同士でも、勝負の後はスモーフレンズなのだ。


 「NOだ。そもそもスモーはそんな大層なことの為に戦うんじゃない。こんな天気のいい日に、強そうな力士が偶然出会ってしまった。それでいいだろ?」


 テキサス山はまるで試合の結果など最初からどうでもいいと陽気に笑った。

 その雄々しき姿につられて山本山も笑ってしまった。

 山本山は大地に背を預けながら、敗北者に待つものは死ばかりと思っていたが今のテキサス山を見ていると必ずしもそうではないと考えていた。

 

 (違う。俺はスモーデビルの山本山。それは俺には許されぬ生き方だ)

 

 だが同時にテキサス山の生きる道はスモーデビルとして生きる山本山と決して交わるものではないということも痛感する。

 スモーデビルの力とは滅びを呼ぶ力。滅びるのは何も敵対者だけではない。

 それを使うスモーデビルもまた死に至らしめる力でもあるのだ。


 そして、山本山は自分の内側から急速に熱が失われていく感覚を覚える。

 ついに終わりを迎えるその時が来たのだ。


 「テキサス山。お前はもっと強くなれ。お前なら必ず強くなれる。その資格がある。俺は少しばかり眠ることにする」


 テキサス山は山本山の太い右腕を握った。

 死力を尽くしたもの同士だけが共感し得る何かがそこにはあった。

 テキサス山は涙を流しながら山本山の姿を魂に焼き付ける。

 強敵との命を賭けた戦いを決して忘れぬように山本山の腕が完全に冷たくなるまで側を離れることはなかった。


 やがてグランドキャニオン一体が夕闇に沈むころ、テキサス山は山本山の頭に自分のテンガロンハットをかぶせる。


 別れの挨拶など要らぬ。


 テキサス山は麓の山小屋(※グランドキャニオンにそんなものがあるかは不明)に繋いであった愛馬に乗って故郷のテキサス州を目指す。

 

 「I GOT IT !!」

 

 (MEはついに手に入れるべきものは手に入れた。後は宿敵、倫敦橋を倒すだけだ)


 自身に満ちた笑顔でテキサス山は手綱を引いて、愛馬と共に高速道路を直進した。

 この時、テキサス山の頭の中からは海星光太郎のことはすっぽりと抜けていたという。

 

 そしてテキサス山が姿を消してからしばらく時間が経った後に山本山の骸の前に二つの影が現れる。


 「ヤマは死んでるし…。もうわけわかんねーよ…」


 影の正体即ち一人は三角墓ピラミッド、もう一人は暗黒洞ワームホールその人である。

 山本山の必殺技に巻き込まれた三角墓ピラミッドは川に飛び込んで包帯の火を消すことが出来たのだが、ずぶ濡れになってしまった為に今の今まで乾かしていたのだ。

 暗黒洞ワームホールはその間にも燃える三角墓ピラミッドを団扇で扇いだり、ドライヤーを使って乾かすのを手伝っていた。


 尚スモーデビルの間ではこういった仲間を助ける行為は通常タブーとされている為にお互いしばらくの間、口をきかないことで帳尻を合わせることにした。


 「落ち着け、三角墓ピラミッド。これはパワーを使い過ぎて休眠期に入っているだけだ。我らスモーデビルはスモー大元帥親方によって不死の命を授かっていることを忘れたか!」


 暗黒洞ワームホールは顔の真ん中に広がる星雲ネビュラを激しく回転させながら力説する。

 え?なぜ暗黒洞ワームホールの顔にそんなもの(※星雲のこと)があるかって?

 

 暗黒洞ワームホールは四次元力士だからさ!!

 

 だが古代エジプト力士のミイラからスモーデビルになった三角墓ピラミッドには不死というものがよくわからなかった。

 三角墓ピラミッドは不老不死となった今でも長生きのおまけくらいとしか考えていない。


 「えっ?そうだっけ?」

 

 「もういいから、うちに帰るぞ」

 

 暗黒洞ワームホールは首を激しく振ると山本山の上半身を持つ。

 何が起こっているか理解していない三角墓ピラミッドに向かって山本山の下半身を指さした。

 要するに「ワームホールが山本山の上半身を持つから、おピラミッドは下半身を持ってくれ」という意味である。三角墓ピラミッドは露骨に嫌な顔をして見せた。

 しかし、この場において自分たち以外に山本山の身体を運ぶ役が出来る者がいないことに気がついた三角墓ピラミッド暗黒洞ワームホールと共にスモーデビルの本拠地まで山本山の死体を運ぶことになった。


 この後、テキサス山と山本山は再びグランドキャニオンで美伊東君のバラバラにされた身体の一部をかけて戦うことになる。


 運命はその時まで二人の決着を引き延ばしたのにすぎなかった。


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