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血染めの覇道  作者: 舞って!ふじわらしのぶ騎士!
王道 キン星山編 第一章 輝け!キン星山!
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第六話 猛り立つ暴れ馬!迎えるは腰蓑まわしのハワイアン力士!の巻

 次回は2月19日に投稿します。今回は本当は伝説の四股名「キン星山」継承までいくつもりだったのですが遅れてしまいました。ごめんなさい。

 

 羽合庵は土俵に上がる。


 胸には「HAWAIIAN」という文字と波打ち際で戯れる美男美女のカップルが彫り込まれたタトゥー、下半身はトレードマークの腰蓑まわし。

 そして口には豊かな髭を貯え、褐色の肌と引き締まった肉体からは年齢的な衰えを一切感じさせない。


 そんな歴戦の勇士然としたスモーレスラーが肩で風を切りながら悠々とテキサス山の前にまで現れた。

 (もっとも近年EXCITINGなスモーレスラー、羽合庵。PAPAから聞いている)

 

 テキサス山は先輩格の力士を正面から睨みつけた。

 スモーの世界において年功序列は決して覆すことの出来ない禁忌タブーである。

 その禁忌に敢えて触れるテキサス山の胸中は如何に。


 羽合庵の真意を伺おうと現スモープレジデント、輪真東ワシントンは他のスモーレスラーたちが土俵に出ていくことを止めていた。


 「ずいぶん威勢の良いことだな、テキサス山。よもやお主、謹慎処分中であることを忘れたわけではあるまい。沙汰の次第によっては一年間”ポップコーンとコークの禁止”を食らうかもしれんぞ?」


 「ATOMIC BOMBER!!(※冗談じゃないという意味の英語。)そいつは穏やかなじゃないな。ポップコーンとコークを一年も抜いたら普通のAMERICANなら死んじまうぜ!!」 


 凡そ真剣勝負の舞台には似つかわしくないおどけた様子でテキサス山は羽合庵の言葉を聞き入れる。


 国連の調査ではアメリカ人は4時間に一度、ポップコーンとコークを摂取しなければしんでしまうというデータが記録されている。


 生粋のアメリカ人であるテキサス山も例外ではない。


 VIP用の観覧席からはテキサス山への対処があまりにも過剰であるというBOOINGが飛び出してきていた。


 「私とてYOUを晒し者にすることは、本意ではない。だがここでYOUが大神山、海星光太郎を倒してしまえば我々は一方的に世界スモー平和条約を破ったことにより祖国は窮地に立たされてしまうだろう。だがスモーの世界は力の世界。格式や権威が優先されることなどあってはならないことだ。故に私は今回の一件を海星光太郎、テキサス山による日米スモー決戦を提唱する!!」


 スポットライトによって照らし出される羽合庵の姿。


 その時秋葉原場所に試合観戦に来ていた観客、アメリカ勢、スモー協会の人間が一斉に驚嘆の声をあげた。


 そして羽合庵の言葉を聞いた直後、光太郎の顔は絶望一色のモノクロにテキサス山の顔はかつてないほど生命力を感じさせるものになっていた。


 「待ってくれ、羽合庵。今の光太郎ではとてもではないがテキサス山には勝てん。せめて俺の怪我が治ってからテキサス山と戦わせてくれ」


 英樹親方の肩を借りながら大神山は羽合庵に懇願する。

 しかし、羽合庵は何も言わずに背を向けるばかりだった。

 

 羽合庵の前に青いウェスタンブーツを履いたテキサス山が現れた。

 テンガロンハットの下からジャックナイフのように鋭い視線を向ける。


 「やってくれたな、大先輩。他の連中の目は欺けても俺の目は欺けないぜ」


 テキサス山は射抜くが如き視線を羽合庵に向ける。

 実はテキサス山は父親から羽合庵というスモーレスラーについて聞かされていたのだ。


 (狸親父ラクーンドッグめ。俺は化かされんぞ)


 テキサス山と羽合庵の険悪な雰囲気に飲まれて光太郎は吐きそうな気分になっていた。

 

 しかし、その時光太郎はほっぺをつねられた。

 文句の一つでも言ってやろうと相手の姿を見る。

 視線の先には怒った顔をしている美伊東君の姿があった。


 美伊東君はわざわざバスタオルで光太郎の下半身を隠して、着替えをさせてくれていたのだ。

 

 「すまんこってす。美伊東君、おおきに」


 あまりの情けなさに光太郎は美伊東君に頭を下げる。

 その後、美伊東と英樹親方に怒られながら光太郎はパンツとジャージを着替えるのであった。

 

 「WOW。私が君を欺いたと?」


 心外だ、と言わんばかりに羽合庵は肩をすくめる。

 しかし、テキサス山も追及の手を緩めることはない。

 この時、テキサス山は最悪倫敦橋との再戦にこぎつけなければ交渉に応じるつもりは無かったのである。


 「とぼけるなよ、HAWAIIAN GUY。YOUは修行時代、TEAM OCEANSTARでMASTER HIDEKIとRIVAL関係にあった。大方、昔のRIVALのSUNがPINCHなのを見かねてFOLLOWにINしたってところか?」


 「何と!!それは知らんかった!!」


 海星部屋にかつて羽合庵という外国人力士が所属していたことは光太郎にとって初耳の話だった。

 しかし美伊東君の方は前から知っていたらしく驚く様子もない。羽合庵にとっても自身と英樹親方の関係をテキサス山が知っていることは想定内だった。


 「だとすればテキサス山、YOUはどうするつもりだ。このまま試合を続ければPCTD(※ポップコーンとコーラを食べちゃ駄目)措置は免れぬぞ?」


 さらにもう一度、駄目押しの意味を込めてPCTDを勧告する羽合庵。


 ガタン!!


 二度目の挑発にぶち切れたテキサス山は羽合庵の目の前にまで歩いて行った。

 そして羽合庵に向かって人差し指をつきつけた。


 「OK。もういいぜ。茶番はたくさんだ。せっかく先輩からDANCEのお誘いがかかっているんだ。乗ってやろうじゃないか。ただし、もしもMEが、この WHITE MAN(※英語で素人のこと)に勝てば、倫敦橋への挑戦権をもらう。それ以外の交渉には応じない。いいな?」


 テキサス山はテンガロンハットのつばを下げて、己の内に渦巻く感情を悟られまいとする。


 羽合庵は何度か頷くとにこやかに微笑みながら右手を差し出した。


 「流石はテキサス山。物分かりがいい。恩に着るよ」


 獰猛な肉食獣のような闘志をむき出しにするテキサス山。


 片や余裕の表情で微笑む羽合庵。


 二人の類稀なる実力を持ったスモーレスラーは己の本心を隠しながら握手を交わすのであった。

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