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血染めの覇道  作者: 舞って!ふじわらしのぶ騎士!
王道 キン星山編 第一章 輝け!キン星山!
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第五話 日米大激突!!立ちはだかるアメリカンスモーレスラーたち!!の巻。

次回は2月14日に投稿でゴワス!!


 肉を削ぎ、骨を砕く。


 テキサス山のショットガンのような張り手を受けながら、大神山は不敵に笑った。


 (終わった。俺の時代は終わったのだ。だが、まだ俺には為すべきことがある)


 大神山はテキサス山の張り手を受け止めた。そして手首を握りしめる。

 

 大神山が五体満足ならば、このまま手首を折ることも可能だったが老いて勢いを失った大神山にはそれが出来なかった。


 大神山はテキサス山に手首の拘束を解かれながら、かつての己の姿をテキサス山に重ねて笑ってしまう。


 (力があれば道理を捻じ曲げてどんな結果も引き寄せられる。そんなことを考えていた時期が俺にもある。テキサス山、お前は自力しか信じられぬ過去の俺だ)


 テキサス山は大神山の慈しみに満ちた視線に気がつき、横面を張り飛ばした。


 「なめやがるなッ!!年寄り(オールド)ッ!!俺を誰だと思っていやがる!俺はアメリカスモー界最強の男、テキサス山だぞ!」


 ガンッッ!!


 その直後にテキサス山の頭突きが大神山の顔面を砕いた。

 大神山の目鼻を砕き、脳にまで届かんとする重い一撃だった。

 

 されど老いたりとも希代の王者。

 耐えがたき苦痛に苛まれながらも大神山は笑っていた。


 (勘にさわる FUNNY FACEだぜ!!)


 テキサス山の両手首を握り、もう一度顔面に頭突きを叩きこむ。

 されど大神山とてスモーレスラー、生半可ではない石頭がゆえにテキサス山の額にも亀裂がはしった。

 

 これを好機と考えた大神山は反撃とばかりに頭突きを返した。


 一進一退の攻防が続く。

 

 しかし、今の大神山の力をもってしても昏倒にさえ至らない。

 精神、肉体。テキサス山はあらゆる面で大神山を越えていたのだ。


 「さあ、今度はお前の番だ。テキサス山、俺を殺してみせろ」


 その一言で、テキサス山の頭に血が上る。


 テキサス山は連続して大神山の顔面に頭突きを叩きこんだ。


 (光太郎。俺の負ける姿をその目に焼きつけろ。これが敗北者の末路だ。どんな勝者もいずれは負ける。栄光から見放される。だが。ゆえに。相手を慮って勝利を譲ることは許されぬのだ。それは傲慢以外の何ものでもない…)


 テキサス山の頭突きが一瞬止まる。


 この若造もまだまだ甘いな、と思った大神山はテキサス山に向かって唾を吐いた。

 以降、テキサス山の頭突きは止まることが無かった。

 

 最早スモーでも、試合でもない。


 圧倒的な力をもった一方的な殺戮ショーが繰り広げられる。


 光太郎は立ち尽くすばかりだった。


 しかし、その時光太郎は否応にも自分を励ましてくれた大神山のことを思い出してしまう。


 「光太郎。お前が翔平のようになる必要はない。お前はお前だ。まあ、気長にやってみろ」


 翔平が引退してから光太郎を支えてくれたのは、付き人の美伊東君と父である英樹親方と大神山だった。


 (ワイは何をしているんじゃ!このまま人生の恩人が殺されるところを黙って見ているつもりか!ワイはこのままでいいんか!)


 己の無力を嘆き、一人歯噛みする光太郎。


 その時、何者かがそっと光太郎に声をかけた。


 「ところで光太郎よ。お主の大好きなアイドル、上坂美織がお前のことを見ているぞ。ここでいいところを見せれば後で握手をしてくれるかもな」


 まさに悪魔の囁きであった。


 光太郎は声優でアキバ系のアイドル、上坂美織の為に瞳の中にハートマークを映しながら土俵の中に突っ走って行った。


 「うっほおおおおおおおーーーー!!!!美織ちゅわあああああああん!!!その勝負、ちょっと待ったでゴワスーーー!!!」


 光太郎の不意の襲撃に反応して、テキサス山は身構える。


 テキサス山は光太郎の必死な顔を見て、思わず吹き出してしまう。

 

 バラバラの重心。

 前のめりの姿勢のくせに相手を見ていない。

 単に急いているだけで、敵を力づくで制圧する為の戦術は無かった。


 テキサス山は真正面から光太郎の突進を受け止める。


 (何で避けないんでゴワスかー!?)


 光太郎は頭からテキサス山の身体にぶちかました。


 動かない。


 光太郎はほぼ全力でテキサス山を退かそうとするが、まるで動く気配がない。

 かいなを使ってテキサス山の体勢を崩そうとするが右にも、左にも動かなかった。


 「HEY YOU!ここは KID の PLAYROOM じゃないんだぜ?」


 テキサス山は流暢な英語で光太郎に告げる。

 しかし、光太郎は必死にテキサス山を土俵の外に追い出そうとしている為に全く聞こえていない様子だった。


 「美伊東君!!このアメリカ人さん、おかしいで!!さっきから押してるのに全然動かないんじゃあ!!」


 「若!何をやっているんですか!早く距離を取らないと、テキサス山の必殺技が来ますよ!!」


 テキサス山は左手を使って背中から光太郎のジャージを掴む。

 そして右手で光太郎のジャージのズボンを掴み、右手を軸に一気に光太郎の身体を回転させる。


 おお。これこそアメリカスモーの真骨頂!!


 かつてのハワイのスモー王、羽合庵がロスアンゼルス部屋の力士である朱割杖熱川シュワルツェネッガーを倒した投げ技CALIFORNIA ROLLである!!


 空中で横に一回転した後、光太郎は地面に叩きつけられた。

 

 この時光太郎は生まれて初めて世界のプロ力士の実力を知ることになった。


 光太郎はいきなり地面に転がされて、精神的なショックと肉体的なダメージのために声を出すことが出来ない。

 何かを伝えようにも、魚のように口をパクパクと開くことしか出来なかった。


 (なんちゅう投げ技や…。何が起きたか、全然わからんかった…)


 乱入してきた光太郎が大した実力を見限ったテキサス山は右足を光太郎の顔に落とす。


 次の瞬間、地面が大きく揺らいだ。


 その時、光太郎は自分の顔面は踏み砕かれたものと思った。

 しかし、テキサス山の踵は光太郎の顔の横に落とされていた。


 光太郎は地を這うようにしてその場から退散する。

 ジャージのズボンは土と水分とで汚れてしまっていた。


 「あわわわッ!!お助けでゴワスー!!美伊東くーん!!替えのズボン持って来てえええーー!!」


 光太郎は大神山を残したまま、土俵の外まで逃げ出してしまった。


 テキサス山は両手を開き、肩をすくめながら光太郎を笑った。


 美伊東君は眉間にしわを寄せながら控室から光太郎のズボンとパンツを持って来てくれた。


 「消えな、AKA CHAN(BABYを日本語にしたもの。テキサス山は語学堪能なインテリ力士でもあるのだ)。ここから先はADULT TIMEだぜ?さて、ミスタ、大神山。偶然とはいえYOUの関係者が見事にYOUとMEの勝負に水をさしてくれたんだ。覚悟は出来てるよな?」」


 テキサス山は大神山の頭の天辺に結われた髷を見る。


 髷は世界各国のスモーに関わる者にとって最も大切なものである。

 例えるならそれはオスのライオンのたてがみ、トナカイの角、イチゴのショートケーキのイチゴ的な象徴である。

 例え真剣勝負といえど賭けの対象にして良いものではない。


 だが同時に勝負は勝負。


 背水の陣でテキサス山との戦いに挑んだ大神山には、髷以外に賭けるものなどありはしないのだ。


 「覚悟の上だ。俺はマゲを落とす」


 スモーに未練が無いといえば嘘になる。


 否。


 だからこそ大神山は一世一代の覚悟の証として己の髷を犠牲にする決意を持つことが出来たのだ。


 「その話、待ってもらおうか」


 静かで落ち着いた声。

 大神山とテキサス山は同時に声の主の姿を探した。


 アメリカ力士側の通路から褐色の肌を持つモヒカン頭の偉丈夫が立っていた。

 アメリカのスモーレスラーたちは乱入者の正体に息を飲む。

 その男こそはかつてアメリカスモー界を世界レベルにまで引き上げた伝説のスモーレスラー、羽合庵はわいあんだった。 

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