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血染めの覇道  作者: 舞って!ふじわらしのぶ騎士!
王道 キン星山編 第一章 輝け!キン星山!
33/162

第四話 王者の誇り!大神山VSテキサス山の巻!

次回は2月9日に投稿します。お楽しみに。

 大神山ウルフヤマ、今の日本のスモーの頂点に立つ力士である。


 プロスモーのデビューは22歳。


 特に体格に恵まれたわけでもない凡庸な力士だったが、最初に所属していたスモー部屋が不祥事で無くなってしまいその後も多くのスモー部屋を転々する。

 最後に辿り着いた綿津海部屋で、海星英樹のもとで才能を開花させる。

 破竹の勢いで瞬く間に東の大関にまで昇り詰め、三十五歳で優勝を決める。

 その後、綿津海部屋を離れて最初に世話になっていた獣王部屋を再興する。

 最近は怪我のために休場することが多くなっていたがとある理由で秋葉原場所に出ることになった。

 

 先ほどから、大神山は海星光太郎の姿を探していた。

 大神山は海星翔平、光太郎の兄弟を幼い頃から知っていた。

 

 誰からも認められる輝かしい才能を持った翔平、そして優しすぎる心の持ち主であるが故に結果を残せない底なしの大器を持つ光太郎。


 大神山は世間のしがらみに囚われ再会するには至らなかったが、いつも心の片隅に二人の影があった。

 そして先日海星兄弟の父親であり大恩ある英樹親方から「光太郎の目を覚まさせて欲しい」と一言、頼まれていたのだ。

 即ち、光太郎をスモーで完膚なきまでに叩きのめし今度こそ自分の意志で未来を選ばせたいと英樹親方は考えていた。


 (スモーは格闘技。スポーツではない…。自分の意志で相手を倒すことを選ばなければいずれ光太郎が死ぬことになる)


 大神山は土俵に塩を撒きながら、疼く左腕を意識しないようにしていた。


 (あんな老いぼれが、俺より勝っているだと…。冗談じゃない!)


 テキサス山は憤怒の劇場で煮えくり返ったはらの内を隠す為に、舌打ちをする。


 大神山は険悪な雰囲気に包まれたテキサス山を見る。


 ひゅう!


 テキサス山は口笛を吹いた後に、ギラついた視線を大神山に向けた。


 「力が余っているようだな、若造。どうだ?俺とスモーを取ってみるか?」


 大神山は自分が無謀な挑発をしていることは百も承知だった。

 若く勢いのあるテキサス山に、かつての力を失った大神山が勝てるはずもない。


 だが。


 (この老いぼれの死に様を見れば、あの光太郎も覚悟を決めてくれるはず。英樹親方、ここで俺のスモーの道は決まりました)


 大神山は触れるものを全て断たんとする抜き身の刃のような闘気をテキサス山にぶつける。


 次の瞬間、テキサス山は立ち上がる。


 ハリウッドの映画スターに匹敵する整った顔には獣じみた笑みが浮かんでいる。

 白い、というかピンクの魚肉ソーセージのような肌には玉の汗が浮かんでいた。


 「ハッ!俺だって知ってるぜ、スモーウルフの伝説は!アンタ、若い頃はかなりの暴れん坊だったそうじゃないか。なあ、ミスター・大神山さんよ?」


 テキサス山はガンベルトを席に置いて颯爽と土俵に乗り込んだ。

 テキサス山は右手を差し出し握手を求めた。

 しかし、大神山はこれを一顧だにせず逆にテキサス山の姿を正面から見据える。


 「ヘイ!ジェントルマン!何をかける?俺はこのPAPA(※テキサス山の実父のこと。現役時代はドリーファンク山)から受け継いだ西部の男の魂が宿ったカウボーイ帽子ハットだ!」


 先祖代々受け継がれる西部の開拓者魂が宿ったテンガロンハットを取った。

 テキサス山の蜂蜜色のくせっ毛と甘いマスクがライトアップされた。

 

 ただそれだけで秋葉原場所は大歓声が沸き上がる。


 テキサス山は観衆から拍手喝采を浴びながら、悠々と土俵まで歩いて行った。

 

 一方、大神山は直立不動でテキサス山の到着を待つ。


 ほどなくして二人の力士が土俵の中で相対する格好となった。


 「食らえ、若造ッ!マシンガン張り手じゃあーッ!ふんふんふんふんふんッ!!」


 大神山は一秒間に六十発もの突っ張りを繰り出すという必殺技を放った。

 本来ならば行事の合図が始まる前に攻撃すれば、その場で殺人許可証を持つ処刑人によって即銃殺刑にされるルールが存在するのだが今回に限ってはテキサス山が何も言って来なかったので試合はそのまま続行される運びとなった。

 

 普通の力士が相手ならば大神山の奇襲によって一瞬で勝負が決まっていたかもしれない。


 だが、今回は相手が悪かった。

 テキサス山はマシンガン張り手を真正面から受けながら、自身もまた張り手を繰り出した。


 「悪いな、老いぼれたじいさんよう。俺のスモーは後退のネジを外しているんだ。受けて見ろ、俺のHYPER GATLING CANNON PALM!!!」


 テキサス山は一秒間に二百発の張り手を繰り出すという自身の必殺技で大神山の奇襲に対抗する。

 

 威力では大神山、速度ではテキサス山という勝負になった。


 テキサス山の身体にいくつもの手形の跡が生まれ、大神山の肉体にも同様に張り手の跡が刻まれることになった。

 皮膚は腫れあがり、やがていくつもの血飛沫が土俵の一部と化す。

 二匹の雄はしめし合わせたように止まらない。


 例えどちらかが死ぬことになったとしても、勝利を譲るという考えは毛頭無かった。


 ガタン!


 そんな時、光太郎は運悪くトイレから小走りで戻って来る。

 土俵の上では大神山が外国人力士と戦っていた。

 今のところはほぼ互角の展開だが、光太郎はやがて大神山が負けてしまうことを直感していた。


 「お父ちゃん!じゃなくて親方!どうして誰も止めないんじゃ!あのまま続ければ、大神山が殺されてしまうんじゃ!」


 英樹親方は両腕を組んだまま何も答えない。

 彼は大神山の意図するところを理解していた。

 

 大神山は英樹親方と光太郎の姿を見て満足そうに笑った。


 そしてテキサス山に向かって四つがっぷりを仕掛ける。


 テキサス山も張り手から掴みかかる姿勢に移行する。


 次の瞬間、両力士は互いのまわしを掴む形となる。

 この時テキサス山は下手を、大神山が上手を取る形となった。


 「おいおい!熱いじゃないか!狼男ウルフガイ!」


 テキサス山は好戦的な笑みを浮かべながら、大神山の死力を尽くした攻撃を歓迎した。

 大神山は瞼の上を腫らしながらテキサス山をにらみつける。


 (もう後は無い。それはオレが一番良く知っている。光太郎、スモーの未来はお前に託したぞ!!)


 大神山は左右の腕を使ってテキサス山の身体を引き寄せる。

 テキサス山は大神山の左手の力が弱くなっていることに気がつく。

 テキサス山は重心を左に向け、大神山の身体を傾かせる。

 そして返す刀で左手を強引に外した。


 大神山は再度、左手で掴もうとするがテキサス山には通用しない。

 逆に手首を掴まれて、上手投げを阻止されてしまった。


 テキサス山は土俵の端に押し込もうとするが、大神山は踏ん張りを利かせて止まった。


 「燃えろ、俺のスモー魂!!バーニング張り手アッパーじゃあ!!( ※ 反則です。 )」


 大神山はテキサス山の右手を取ってから、左のショート張り手アッパーを繰り出した。

 テキサス山は後退して回避しようとするが、土俵際が近すぎるので十分な距離を取ることができない。

 結果、テキサス山は大神山の張り手をモロニ食らうことになった。

 鉄砲柱を破壊するほどの大神山の張り手を食らい、一瞬だけ意識が消えかける。

 だが、テキサス山は終わらない。


 その時、大神山の顔と倫敦橋の顔(※鉄仮面)が重なる。


 ”スモーはケンカでも、殺し合いではない。なぜそれがわからない?”


 脳内でREFRAINする倫敦橋の声。


 テキサス山の中で堪えに堪えた怒りが爆発した。


 「ULTRA FYCK(※FUCKの最大級の表現。英語の試験で解答欄が埋まらない時に使ってみよう。素晴らしいCHEMISTRYが起こるはずだ)!!俺のRAGEもEXPLOSIONだ!!HEAT AND ICE HURRICANE PALM!!」


 回復の時を待たずにテキサス山はワン・ツーパンチの要領でカウンターの張り手を打った。


 燃えさかる炎の張り手と、凍えるような冷気を纏った張り手を連続で食らい、大神山はテキサス山に逃げられてしまった。


 「いけませんよ、若!あれはテキサス山の必勝パターンです!」


 観客席と控室をつなぐ通路。そこに光太郎と美伊東君はいた。


 呆気にとられたままの光太郎の隣で、美伊東君が眼鏡をかけ直しながら叫んだ。


 テキサス山は不敵に笑いながら大神山に詰め寄る。

 しかしテキサス山のショットガンのような張り手を食らい、大神山の身体は大きくのけぞってしまったがその目はまだ死んではいなかった。

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