内部分裂?激突!!スモーゴッドたちのたそがれ の巻
今回も自信作です。自分でももう何を書いているかわからない、というかキャラが勝手に歩きまくっているような状態ですが次はマジで急展開するのでハンカチを用意して待っていてください!
ハデス山に命じられていそいそとネクターを買いに行くヘルメス山。
「おや。どうしました?」
しかし、自販機の前では天を衝くような巨漢がヘルメス山を引き留める。
彼こそはこのスモーティタノマキアの実質的な覇者でありハデス山に次ぐ実力者と名高いゼウス山であった。
ゼウス山は無言で黄金に輝く右腕でヘルメス山を追い返した。
そして、両の眼に宿る怒りを隠そうともせずにゼウス山は叫んだ。
「ヘルメス山よ、ネクターを買う必要はないぞ。なぜならば、その雑魚を殺すのは俺の役目だからだ」
それを決めるのはゼウス山ではない。喉がつまって困っているハデス山のはずだ。
「オーホッホッホッホッ。ゼウス山さん、それを決めるのは貴方ではありませんよ。我々のボスは一体誰だと思っているのですか?」
その時、天から雷の矢が降り注ぎヘルメス山に襲いかかった。いかにオリュンポス部屋のスモーゴッドとて直撃すればただではすまないだろう。
天から降り注ぐ怒れる鉄槌。明滅と轟音の後に立ち上る黒煙。
だが稲妻が落ちた場所にはヘルメス山はいなかった。
ゼウス山から見て真上の岩山の上に挑発的な笑みを浮かべながら立っていたのだ。
「まずは貴様から死ぬか?」
「できるものならやって御覧なさい。ゼウス山さん、皆の前で恥をかくのは貴方の方ですよ?」
純粋な闘士であるゼウス山と知略に長じた策士ヘルメス山の二人の仲は普段から険悪なものだった。そしてこの二人の実力はほぼ互角。試合で名前こそ上がることは無かったがヘルメス山の実力はオリュンポス部屋の三巨頭であるハデス山、ゼウス山、ポセイドン山に決して劣らないものである。
ゼウス山は自分の頭上に向かって天から雷を落とした。
その時、ヘルメス山の顔から不敵な笑みが消える。ヘルメス山は両手を前に出し迎撃態勢へと移行した。
「そこまでだ。ゼウス山、ヘルメス山」
一触即発の状況に介入してきたのはオリュンポス部屋の影の実力者として知られるスモーゴッド、アレス山(後の正義山)だった。
後ろからスモーナイトの死体を担いでヘパイストス山(後の奈落山)とビーナス山(後の一つ目)が現れる。
ヘパイストス山はこともなげに地面に向かってスモーナイトたちの亡骸をばらまいた。
ビーナス山は地面に転がっているスモーナイトたちの肉体を蹴って転がし、唾を吐いた。
「ゼウス山。そんなに元気が余っているなら俺たちの仕事を手伝ってくれよ?」
ビーナス山はへらへらと笑いながら言った。
当の死体を運搬役だったヘパイストス山はスモーナイトたちの死体を見ようともせず、ゼウス山とヘルメス山のいがみ合いをうんざりとした表情で見守っていた。
アレス山はゼウス山の手首を抑えて、さらに岩山からこちらを見下ろすヘルメス山を睨みつけた。
普段ならばこういったいざこざに干渉しないのがアレス山の性分だったが、オリュンポス部屋きっての実力者ゼウス山とヘルメス山の争いならば介入せざるを得ぬという事情があってのことである。
「いい加減にその手を放せ、アレス山。お前たち二人がいっぺんにかかってきても私は一向にかまわぬのだぞ?」
そう言ってゼウス山はヘルメス山とアレス山に向かって殺気を放った。
ここは一つどちらの実力が上かを示しておく必要があるかもしれない。
殺気を受けたヘルメス山は凄絶な笑顔でそれに応える。
一方のアレス山は当てられた殺気に動じることもなくさらに強い力でゼウス山の手首を締め上げるのであった。
「貴様の耳は飾りか、ゼウス山。私はくだらぬ争いを止めろと言っているのだ」
アレス山はゼウス山を睨みつけた。
アレス山は、ゼウス山とヘルメス山のらしからぬ出過ぎた行動の理由は嫉妬であることを看破していたのだ。
ゼウス山は他の誰よりも師匠であるハデス山のことを尊敬している。
ヘルメス山も同様に師匠であるハデス山を慕っているのだ。
彼らにとって下界の雑魚力士ごときが勝負の結果に不服を申し立てることなど許されることではないのだろう。
オリュンポス部屋のスモーゴッドと下界の雑魚力士では勝負にならない。
だが、現に嵐洲浪兎という下界の力士はアポロン山とバッカス山と互角に渡り合った。
アレス山は怒り心頭を発すゼウス山を見る。
アレス山とてゼウス山と戦えば無事では済まない。
未熟な下界の力士ならば一方的な虐殺劇を演じることになるだろう。
果たしてこれは驕れる下界のまがいもののスモーレスラーを粛清するという大義を持つスモーゴッドに相応しい行為なのか。
「止めるんだ、兄さん」
ついにはゼウス山の実弟ポセイドン山がやってきた。
ゼウス山とポセイドン山は血縁関係にあるがオリュンポス部屋の中では兄弟子、弟弟子という立場を崩すことは無い。
それでもポセイドン山は今回のゼウス山の暴挙には納得がいかなかった。
「絶対的な強者である僕たちスモーゴッドは、その誇りにかけてどんな状況でも戦いを挑まれれば引き受けなければならない宿命を背負っている。兄さんはハデス山に敵を選べというのか。スモーゴッドの誇りを捨てろというのか」
ゼウス山は反射的にポセイドン山を張り飛ばした。
ポセイドン山は甘んじて顔面を張り飛ばされる。兄の真意を知るためにはこれぐらいは承知の上だった。
「何という無礼の極み。ポセイドン山、貴様は髷を結って、頭に大銀杏を乗せたくらいで一人前のつもりか!ゴッド序列が上の私に意見するつもりか!」
ゼウス山の張り手を食らってもポセイドン山は微動だにしなかった。
スモーゴッドたちの中では一見華奢な体格に見られがちのポセイドン山だったが彼の実力はゼウス山に次ぐものである。
ポセイドン山はゼウス山の手を最初から何も無かったかのように振り払う。
その姿に他のスモーゴッドたちはポセイドン山の怒りの深さを感じる。
「兄さんこそ、僕のゴッドとしての階位が自分よりも下だから弱者だと見下しているのかい。だとすれば僕はスモーゴッドの威信にかけて兄さんと勝負しなければならない。なぜなら僕らスモーゴッドの行動は常に善であるべきだからね」
いつの頃からかポセイドン山とゼウス山はスモーゴッドの在り方について意見を争うようになっていた。 昨日今日始まった諍いではない。
しかし、ポセイドン山の考え方はスモーゴッドたちの間では異端であった。
勝負の後に弱者とCHANCE COATを囲むなど個として強さを追求することに存在意義をかけるスモーゴッドたちには考えられなかった。
実際、ポセイドン山の頑なな態度には彼の親友であるヘルメス山でさえ困惑せずにはいられなかったのである。
「ポセイドン山。お前のその下界の雑魚に対する甘やかしがスモーの堕落の原因となったのだ。もう許さぬ。己の言葉を取り消すつもりがないというなら己の髷をかけて私と勝負しろ」
再び、雷光がゼウス山の背に宿る。もはや兄弟でも兄弟弟子でもない。
敵対するゴッドとゴッドとしてゼウス山はポセイドン山を睨みつける。
「今度だけは僕も黙ってはいない。貴方の思い上がりこそ僕はもう許さない。ゴッドの誇りにかけて僕は貴方を倒す!」
ポセイドン山は困惑する嵐洲浪兎に一度だけ微笑みかけ、後の終生最大の強敵となるスモーゴッドと対峙するのであった。