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血染めの覇道  作者: 舞って!ふじわらしのぶ騎士!
覇道 春九砲丸編 
19/162

剥ぎ取られた秘密のヴェール!グレープ・ザ・巨峰、必殺のガイアフォース・アルファ炸裂の巻

 猛り立つ春九砲丸の姿を見て、グレープ・ザ・巨峰は激怒した。

 勝利以外のものに何の意味がある?

 なけなしの努力など傍から見ればただの自己満足でしかない。

 もう一度、グレープ・ザ・巨峰は血まみれの春九砲丸の姿を見た。

 惨たらしくも傷つきながら立ち尽くす若獅子の姿に畏敬の念さえ覚える。

 だが、どれほどの威容を発しようとも認めたくないものはやはり認められない。そのことがグレープ・ザ・巨峰の憎悪をさらに根深いものにしていった。

 

 この光景は、あの時と同じだ。

 グレープ・ザ・巨峰は突進する。それは大地に足跡を残すほどの力強い地響きだった。

 

 口の減らない若造が。

 

 死にかけのひな鳥を押しつぶして黙らせてやる。


 春九砲丸は巨体の突進を受け止める為に身構えた。

 無理は承知だ。

 しかし、体に染みついた彼の生き方が敵前逃亡という選択肢を許さなかった。


 次の瞬間、春九砲丸はトレーニングジムの壁まで吹き飛ばされた。

 そして息をつく暇も無くグレープ・ザ・巨峰の両手は春九砲丸のまわしを掴む。

 

 みしっ!みしぃっ!

 下半身の骨という骨を破壊しかねないほど強力な腕力。もはや春九砲丸は悲鳴を上げることすらままならなかった。


 「どうした、小僧!まさか今までのお遊びを私のスモーだと思っていたのか?」


 どうだ。わかったか。

 これが力だ。

 力に理由など存在しない。

 トレーニングの総量が力の増減に関係することなどない。

 十分な修練を積めば強者を打倒できる?

 確かな実績が不動の自信に繋がる?

 甘ったれるな。

 真の強者とはそういったものを生まれながらにして持ちえる者たちなのだ。

 最強の力に屈しろ、春九砲丸。

 そして、私に許しを乞え。

 私が間違っていました。

 貴方の言い分が正しかった、と言ってみろ。

 お前が属する真に世界とは容赦ない非情の世界なのだ。


 グレープ・ザ・巨峰は指に渾身の力を込めた。

 敵の指をへし折り、肘関節を破壊するのは古代スモー独特の戦法である。

 

 これはリスペクト。

 目の前の男は手を抜いて相手が出来るような雑魚ではない。

 一流の闘志と実力を持ったスモーレスラーだったのだ。

 グレープ・ザ・巨峰は春九砲丸の実力を認めざるを得なかった。


 「ふんぬっ!!!」


 片足を立て、前方に額をぶち当てる。

 俺の頭はケンドーマスクよりも硬い。負けるわけがない、と春九砲丸は捨て身でグレープ・ザ・巨峰に頭突きを食らわせる。

 指に力を込めた。

 この命の灯が消えようとも決して屈しはしない。


 右に動いて、こちらの体勢を崩そうとするグレープ・ザ・巨峰の足を逆にこちらから足を引っかけて止めてやった。


 競り勝つ。

 小技などには頼らない。

 力と力で競り合い、これに打ち勝つ。

 猛獣の爪の如きグレープ・ザ・巨峰の五指がさらに暴れる。

 春九砲丸は自分の首を後方に引き上げ、また一歩足を踏み出した直後に頭突きを当てた。

 ごんっ!

 衝突した瞬間、目の中に火花が生じる。

 やはり硬い。もはや石頭というよりも鉄塊だった。


 「その程度か、春九砲丸。いいか、本当の頭突きというものはこういうものだ!」


 今度はグレープ・ザ・巨峰の巨体が一歩、後に引いた。


 ちぃっ。舌打ちをしたすぐその後に極大の衝撃に備える。

 さあ、覚悟を決めろ。

 次は頭蓋が砕けるか、はたまた脳が飛び出すか。

 春九砲丸は歯を食い縛り、首を後方に引く。

 そして、もう一歩進んでから傷だらけの額をぶち込んだ。

 ごごんっ!!!


 「ぐぬぅぅぅ!生意気な……ッッ!!!」


 ピシッ、ピシィッ。

 数回の頭突き合戦の結果、グレープ・ザ・巨峰のケンドーマスクに歪な裂け目が生じた。

 総合的に考えれば、この頭突き合戦はグレープ・ザ・巨峰の勝利なのだろう。

 しかし、これほど明確な結果をつきつけられても春九砲丸の心は折れなかった。

 死の今際、傷ついても打ちのめされても立ち上がり続ける春九砲丸の姿にグレープ・ザ・巨峰はかつての盟友の姿を重ねる。


 そして、憤怒の咆哮を上げた。


 「我が宿敵、スモーナイト!!我上院ガウェインッッ!!!死して尚、我が道に立ちふさがるかッッ!!!この怨霊めッッ!!!」


 グレープ・ザ・巨峰は怒りのままに春九砲丸の両耳に指をかけた。

 そして、そのまま完全に意識を失った春九砲丸に向かって頭突きを繰り返す。

 頭部を打って出来た裂傷がすり潰れるまで繰り返される頭突き。

 もはやその光景は試合ではなく、私刑のそれであった。

 ガッ!ガッ!ガツッ!ガツンッ!

 失神した春九砲丸を相手に頭突きを繰り返すグレープ・ザ・巨峰。

 しかし、その凶行も長くは続かなかった。


 「顔が近いぜ、グレープ・ザ・巨峰さんよぉッ!!!」


 両手で半壊したグレープ・ザ・巨峰のケンドーマスクを掴む。

 そして、反撃の頭突き。

 両者の間合いが決闘開始前の位置にまで戻った。

 春九砲丸は自分の足元を見る。

 床のコンクリートにはいくつもの血のプールが出来上がっていた。そして、苦笑する。

 ようやくこれで俺のスモーらしくなってきやがった。


 「遊びは終わりだ、小僧ッ!我が真の力をその身に刻むがいいッ!ガイアフォース・アルファ、スタンバイッッ!!!」


 グレープ・ザ・巨峰は叫ぶと同時に真紅の闘気を纏った。

 その姿を例えるならば嵐を纏った狂える戦の神だった。

 グレープ・ザ・巨峰の身体を覆う赤いオーラはやがて彼を中心に渦巻き、烈風となって春九砲丸を襲う。 春九砲丸は両腕で風の猛威から己の身を守った。


 やばい。

 

 まずい。

 

 この男には逆立ちしても絶対に勝てない。


 雰囲気が、その場の空気そのものが変わった。

 春九砲丸は吹きつける風をその身に浴びて己が身に迫る危機に戦慄する。

 目の前に立つスモーレスラーは果たして俺の知るグレープ・ザ・巨峰なのか。

 春九砲丸は強敵を前に後退していた。


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