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血染めの覇道  作者: 舞って!ふじわらしのぶ騎士!
覇道 春九砲丸編 
17/162

奇蹟の復活!逆襲の春九砲丸!!の巻

 学生時代のスモーの修行取材で辛かったこと。タックルみたいなやつを受け止める役をやらされたこと。俺はデブだけどスモーレスラー志願者じゃねえ!と何回文句を言ったことか。デブ = スモーレスラー(あるいは柔道)みたいな風潮が許せないトゥデイ。でも少しだけ楽しかったイェスタディ。

 「チッ」

 

 舌打ちをする。

 実に筋違いな話である。

 自らが策を弄したことに対して苛立ちを覚えているのか。はたまた予定よりも多くの時間を費やしたことが腹立たしいのか。

 

 「スモーナイトだって羽目を外したくなることくらいはあるさ」


 過去の幻影が一瞬だけグレープ・ザ・巨峰の脳裏を過った。

 

 あの時に戻れと?


 ふざけるなッ!!!


 この蛆虫どもが何だというのだ。地べたを這いずり腐肉をすするしか能がない出来損ないではないか!


 こんなものは断じてスモーレスラーではない!


 グレープ・ザ・巨峰は地に伏してもがき苦しむ鰤天部屋のスモーレスラーたちを睥睨する。

 それはあたかもこの上なく卑しいものを目にした様子だった。


 ミシリ。

 彼の持つ竹刀バンブーソードを掴む春九砲丸の手が目に映った。


 まだわからんのか。


 グレープ・ザ・巨峰は竹刀バンブーソードにありったけの力を込める。

 その力は何のためのものか考えたこともないのか。

 竹刀バンブーソードを介してグレープ・ザ・巨峰は己の中に渦巻く憎悪の一片を伝えようとした。

 しかし、依然として春九砲丸がグレープ・ザ・巨峰の規格外の腕力に屈することはない。


 彼奴もまた選ばれたものか。


 この時になってグレープ・ザ・巨峰は春九砲丸を一人の敵として認めた。


 「私の目的は神への反逆だ。選ばれしもの、春九砲丸よ」


 春九砲丸は何とか距離を詰めようとするが突きつけられた竹刀がそれを邪魔する。


 掴んでへし折るか。


 春九砲丸は両手で竹刀を破壊することをイメージした。

 コントロールの効かない力とは恐ろしいものだ、と今さらながらに実感する。

 ついさっきまでは指一つを動かすだけで痛みを受けることを覚悟しなければならなかったというのに、今ではどうだ?この手で掴んだ物全てを容易に破壊することさえイメージ出来るのだ。

 筋肉、それに伴った腱、骨が現在のコンディションが万全なものであることを伝えていた。

 今の春九砲丸にこの地上で破壊できないものはないのだ、と。


 頭のいかれた野郎にこれ以上つき合う必要はない。

 春九砲丸は現時点における自身の健康状態の最終チェックをすませた直後に前進する。


 小癪な。


 グレープ・ザ・巨峰は春九砲丸に向かって竹刀を投げつけた。

 相手が常人ならば肉体に突き刺さってもおかしくはない破壊力とスピードを持った投射である。

 回避することが妥当だろうと誰もが考えたはずだ。

 あろうことか春九砲丸はそれを突進によって跳ね返す。

 暴風渦巻く嵐と化した春九砲丸を前にしてはさしもの竹刀バンブーソードとて粉々に砕け散るのみであった。

 そして、グレープ・ザ・巨峰の豪腕をかいくぐり何とかまわしをとることに成功する春九砲丸だった。


 「ずいぶんと大きな目標を掲げているわりには呆気ねぇな、大将」


 普通の相手ならば、このまま持ち上げて土俵の外まで強引に押し出すのが定石だ。

 春九砲丸の腕力も普段の状態に戻っている。

 だが、この難攻不落の城塞を前にしたようなプレッシャーは何だというのだ。

 これから繰り広げられるであろう激戦を予感してか、春九砲丸の全身から滝のような汗流れ出した。


 「羽虫を潰す為に全力を費やす巨象などおるまい」


 剛腕と呼ぶにふさわしい二本の腕が春九砲丸のまわしに食い込む。

 並大抵のスモーレスラーならば、上手を取るだけで圧殺することが出来る。

 だが、この男ならばどうか。

 グレープ・ザ・巨峰の手心、出し惜しみの一切無しの掴みが春九砲丸を捕らえた。


 「雀蜂ホーネットってのもカテゴリー的には羽虫だよな?」


 春九砲丸の左手がグレープ・ザ・巨峰の太い腕をがっしりと鷲掴みした。

 これは春九砲丸が対グレープ・ザ・巨峰の戦法として考えていたものだった。

 グレープ・ザ・巨峰のような常識を超えた怪力の持ち主と真っ向から力で戦うことは有効な戦法ではない。何しろ相手と組み合っただけで骨折する危険性があるのだ。

 どういう事情があるのかは知らないが、少なくとも前回の戦いではグレープ・ザ・巨峰が手を抜いてくれたから骨折程度のダメージで済ませることが出来た。

 正直、次にあの怪物と戦うことになれば全身骨折くらいは覚悟しなければならない。

 ならば、どうすれば良いかと春九砲丸は知恵を絞って考えた。

 考えた末にたどりついた答えは上手の外側から腕を握りつぶす、というものだった。

 無論、容易な作業ではない。

 鉄骨を素手で掴んでいるような感触だった。

 グレープ・ザ・巨峰の肉体は鉄よりも強固だろう。

 だが、こうしているから実感できることがあった。

 ヤツの筋肉と骨は破壊されている、悲鳴を上げている。


 「グレープ・ザ・巨峰の旦那、蹴り技は使わなくてもいいのかい?上体を揺らしてから、相手の脚を蹴って転がす。スモーレスラーなら新弟子ニュービーでも知ってらぁッ!!」


 グレープ・ザ・巨峰は春九砲丸の左脚を凝視した。

 この小枝の如き小僧の軸足を折れと言うのか。

 春九砲丸の反撃を警戒しつつ、重心を右寄りから反対方向に動かした。

 そして、何の前触れもなく不動の大地が傾いた。


 「乗ってやる。お前の稚拙な挑発に乗ってやるぞ。小僧ォォッ!!!」


 脛の内側に向かって振るわれるグレープ・ザ・巨峰の処刑刀エクスキュージョナーブレード、疾風迅雷の刈り足だ。

 これには流石の春九砲丸も苦痛に表情を歪ませる。

 ただの一撃を堪える為に全神経を集中させなければならなかった。


 「我が蹴たぐり、この伝家の宝刀と讃えられしアロンダイトをッ!古のスモーナイトたちに土の味を教えてやった絶技を耐えて見せろッ!春九砲丸ッッ!!!」


 それは肉を削ぎ、骨を削らんとする蹴り技の応酬だった。

 このまま軸足が崩されるようなことになればすぐにでも投げられてしまうだろう。

 春九砲丸は自分の左腕を中心に据えて弧を描くように移動する。

 スモーにはプロレスのようにローキックを脛でカットする技術は存在しない。

 故にこのような状況に陥ってしまった場合はクリーンヒットするポイントをずらしながら逃げるしかなかった。


 「ようやくスモーらしくなって来たなぁッ!ええっ?グレープ・ザ・巨峰さんよぉっ!」


 春九砲丸は笑う。その時は否、笑うしかなかった。

 こうしている間にも彼の身体は未知なる力によって復活が成し遂げられようとしていたのだ。

 恐ろしい。この戦いの先に一体、何が待ち受けているというのだ。


 俺は、俺のままでいられるのか?

次は出来るだけ早く投稿します!ごめんなさいっ!

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