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血染めの覇道  作者: 舞って!ふじわらしのぶ騎士!
王道 キン星山編 第一章 輝け!キン星山!
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第百二十三話 ファイナルミッション‼の巻

 今回も遅れてすいません。次回は十二月八日くらいに投稿したいと思っています。

 テリーマンのシューズの紐が切れたという演出をやりたかったのでブロッケン山対ラーメン山戦は挟んでみました。

 

 果たして「吉野谷牛太郎」の名をこの場で明かす事は正しいのか?

 

 光太郎とフラの舞の前に現れた伝説の守護神”黄龍”は考える。

 彼に使える四聖獣を含めて、彼らはスモーデビルと敵対するスモーゴッドの側である。

 だがどちらにせよ地上の正義、平和には縁遠い存在には違いない。吉野谷牛太郎こそは神々と人の認識の違いが生み出した悲劇の張本人だった。

 後にキン星山を中心とする正義力士軍の吉野谷牛太郎が誕生するのはこの時の黄龍の選択が大きな要因である。

 そして吉野谷牛太郎は生涯を通じてその事実を知る事も無かったし、黄龍はこの先誰にも語る事は無かった。


 舞台は吉野谷牛太郎とキン星山(海星ショウ)の決戦に戻る。

 渾身のキン星バスター投げを破られた海星ショウは腕と足の骨を砕かれながらも立ち上がり吉野谷牛太郎の前に立つ。

 吉野谷牛太郎は口元を歪ませ、ニヒルな笑みを浮かべたと同時にショウに向かって必殺の体当たりを仕掛けた。

 自慢の爆発したアフロ・ヘアから突き出した伝家の宝刀”ゴールデン牛角”は容赦なくショウのわき腹を切り裂いた。


 「ごふッ‼」


 既に肋骨と背骨を砕かれたショウは悶絶し、口から血を吐いた。


 だが倒れない。


 キン星山の名が彼を土俵の上に立たせていた。

 しかし吉野谷牛太郎は死にかけのショウを嘲る様に見下す。


 その瞳に込められた感情は紛れも無い侮蔑。


 「かつて相撲神の王”建御雷山(ゼウス山の事)”には二人の子がいたらしいな。一人は”スサノオ山”、もう一人はお前ら海星一族の開祖と呼ばれる”ワダツミ山”だ。建御雷山は弟の月読山(ポセイドン山の事)に敗れて天界に帰されたわけだが地上に残った二人の神の皇子は人々に求められ新たな神の座についた。そして二人の神は父親たちと同様に争い、また負けた方が神の座を追放されちまったってわけだ。俺の二本の角はスサノオ山の子孫の証ってわけよ。そしてキン星山よ、お前の使うキン星山の奥義は相撲神”月読山”の残した技だ。ククク…、先祖の自慢話なんざ髪の毛一本ほど興味が無かったけどよ。こうして無様な姿をさらしているお前を見ると悪くはねえもんだな」


 吉野谷牛太郎は張り手を撃った。

 ショウは正面から受けて数歩下がる。

 

 実際に掌を受けたわけではない。

 衝撃波だけで吹き飛ばされたのである。

 

 この時すでにショウは知っているキン星山の奥義を全て出し尽くした後だった。

 結果は目の前の鬼神の如く立ち塞がる吉野谷牛太郎の姿を見れば嫌でも思い知らされるだろう。

 彼にはキン星山の奥義が通じなかったのだ。

 

 それもそのはず”スサノオ山”の子孫である彼もまたキン星山の奥義と同等の力を持つ”牛丼超々特盛MAX(※八人前、880円くらい)パワー”を使う事が出来たのだから。


 吉野谷牛太郎は自慢の剛腕を振り回しながらショウが立ち上がるのを待っていた。

 勝者には敗者を嬲り尽す特権があるとばかりに。


 そして黄龍もその場にいた。

 彼は海星ショウの正義への熱き思いに心を打たれ、封じられていたキン星山の奥義のいくつかを伝授していた。

 黄龍の出した試練を乗り越え、海星本家からも認められて名実ともにキン星山となった海星ショウはスモーデビルたちに戦いを挑み快進撃を続ける。

 しかし、それはスモーデビルたちの仕組んだ罠だった。

 かつてのスモー最終戦争アーマゲドンによって懐刀のスモーデビルナイトシックスを失っていたスモー大元帥は新たな戦力の補強を狙っていた。

 彼は狡猾にも最初から海星ショウがキン星山になるように仕向け、黄龍が彼に肩入れして真のキン星山に育て上げる段階まで想定していたのである。

 

 スモー大元帥が欲していたのは己の血を受け継ぐ至高の力士だった。


 そうとは知らず海星ショウはスモーデビルの精鋭部隊スモーデビルセブンに戦いを挑む。

 彼は大西洋、暗黒洞ワームホール三角墓ピラミッドら強豪スモーデビルを退けて対象である吉野谷牛太郎に挑んだ。

 試合の前半はショウが優勢に進めていたが不敵な笑みを浮かべる吉野谷牛太郎はとんでもない秘密を明かす。

 彼はかつて邪悪な存在となった建御雷山に従って世界の相撲を悪に染めようとした吉野家グループ…ではなくてスサノオ山の末裔だったのである。

 吉野谷牛太郎はショウにキン星山誕生の秘密を明かして彼にスモーデビルの一員となる事を勧める。


 「わかったか、坊や。本来ならばキン星山は正義力士の側じゃねえ、スモーデビルの側の力士なんだよ。お前だって外国人の後妻のガキってだけでキン星山を名乗るどころか外で海星姓を名乗る事さえ許されなかったじゃねえか…。お前に落ち度は無い、お前の母ちゃんだって間違ってはいない。じゃあ悪いのは誰だ?こんなくだらない決まり事を作っていい気になっている世間のクズ共じゃねえか」


 「クッ…‼」


 海星ショウは奥歯を噛み締める。

 両親と母親違いの兄弟とは上手くやっていた。

 だから普通に力士になれるとばかり考えていた。

 しかし当時権力を手にしていた海星家の長老たちはショウがキン星山の名を継ぐ事も、力士となる事も許さなかった。

 長老たちはショウの兄たちがスモーデビルとの戦いで死んでしまってから重い腰を上げたのである。

 それを敵に見抜かれて悔しさで頭の中が熱くなる。

 だが何よりも我慢ならなかったのは敵の一方的な侮辱ではない。


 「吉野谷牛太郎、俺は今日ほど自分の弱さを憎んだ事はない。お前ごときの言葉でブレている決意が、俺には我慢ならない。俺は先に死んだ兄たちや父の為にお前を倒す‼」


 そして海星ショウは最後の”崖っぷちのど根性”を発動させる。

 黄龍はキン星山の、海星ショウの勝利と生還を祈った。

 一方、吉野谷牛太郎はショウの死を覚悟した特攻を前にしても動じる事は無い。

 それは互角の勝負だった。

 普段は仲間たちを相手に”命を賭けて戦うヤツは馬鹿”とうそぶこうとも信念を曲げた事は一度も無かった。(※一番キレるのは相棒のサスペンションX)


 「いいねえ。実に挫く価値のある魂だ。俺も本気で相撲をしたくなったぜ」


 吉野谷牛太郎は自慢のマタドールジャケットを脱ぎ捨て、低姿勢に構える。

 彼の”闘牛力士”の異名は伊達ではない。

 吉野谷牛太郎は舌を舐めずり手負いの獲物を見定めた。

 ショウは既に”崖っぷちのど根性”を使い果たし、命の残り火を使って突進している。


 (もはやヤツは死に体。吉野谷牛太郎よ、ヤツの綺麗な死体を持って来い)


 脳裏を霞む絶対者スモー大元帥の命令。

 だが吉野谷牛太郎は力士としてショウを倒したかった。

 一方、ショウは止まらない。

 決死の覚悟で吉野谷牛太郎の懐に飛び込む。

 ぶつかり合えば正義の心の大切さを知ってくれる、という儚い望みに全てを託してショウは命の全てを費やした。


 黄龍は記憶の回想を中断する。

 結果は言うまでもなく海星ショウは吉野谷牛太郎に敗北した。

 どういうわけか海星ショウが死ぬという最悪の結果は免れたが、ショウはその戦いを最後にキン星山の称号を返上する。

 男の恥という言葉の意味を知る海星ショウは余生を第二の故郷ハワイで過ごし二度と日本に帰る事は無かった。

 こうしてキン星山の名前は忘れ去られ海星家も角界での権威を失ってしまった。

 次代のキン星山”海星雷電”が登場するまでの空白はこうして生まれたのである。

 五十年後に海星の本家に生まれた雷電は数奇な巡り合わせの果てにキン星山の使命に目覚め、世界の命運を賭けた戦いに巻き込まれる。

 この戦いにおいても雷電はスモーデビルの策謀によって孤立無援で戦う事を強いられた。

 雷電は相撲人生と引き換えに復活した大西洋、三角墓ピラミッド、愛ポッド、山本山らを撃退した。

 雷電はどういうわけか逃走した他のスモーデビルを追いかけずに、また次代のキン星山を育てる事を断念する。

 原因は実子英樹親方、愛弟子のタナボタ理事、羽合庵でさえ知らない。

 黄龍はこの時点でスモーデビル・セブンがスモーオリンピックの陰で暗躍している事実を知らなかったがこうして二人のキン星山の奥義を受け継ぐ力士が登場した事にはやはり何か意味があるのだと直感する。

 

 そして場所は光太郎とフラの舞の目の前に戻った。


 「かつて海星ショウと海星雷電というキン星山が世に現れた。いずれの力士も天の時に恵まれず不遇のまま世を去ったがワシはその事を無駄だとは思っていない。フラの舞よ、今だからこそ明かそうぞ。お前の父”ワイキキの浜”は死を目前にしてワシにお前をキン星山にする事を頼んだのじゃ…」


 (おい、キン星山よ。口調、変わってないか?)


 (まあまあ、フラの舞どん。こういう世界ではよくある事でごわすよ)


 二人は黄龍のキャラがブレている事に気がついて互いの感想を述べる。

 黄龍は口から雷のブレスを吐いて光太郎とフラの舞の足元を黒焦げにした。

 

 二人は大慌てでその場から飛び退き、話を先に進めるように頼んだ。


 「とにかく‼キン星山、フラの舞、時は満ちた。この四戦でお前たちには次代のキン星山の奥義を受け継ぐ器量を備えた力士である事を認定する。そして最後の戦いを勝ち抜いた者こそがキン星山と名乗るのだ」


 黄龍はまだ鼻から白い息を噴いていた。

 先ほどのブレスの反動なのかもしれないが意外にも短気な性格なのかもしれない。

 光太郎とフラの舞はこの先は話を脱線させないよう気をつける事にした。


 「…。おいどんは羽合庵師匠の試練を受けてキン星山を名乗っているわけでごわすが…、今回の試練に関しては大賛成でごわすよ。もしもおいどんの次にキン星山を名乗る力士が現れたならばフラの舞どん、それはあんさんであって欲しいでごわすッッ‼‼」


 「フン、敵に褒められて光栄な事なのだろうが素直に受け止めてやろう。俺も同じ気持ちだ、海星光太郎。俺以外の力士がキン星山を名乗るとすればお前以外には考えられん。もっとも俺の親父の遺言など今さらどうでもいい話だが」


 フラの舞は己の胸の前に手を置いた。そして力強く語る。

 光太郎も羽合庵からワイキキの浜とフラの舞の親子の確執は聞かされていた。

 さらに決して他人が立ち入るべき問題ではないとも考えている。

 だが光太郎は先の激闘の数々からフラの舞の並々ならぬハワイ相撲への情熱を感じている。

 即ちそれは亡父へのリスペクトではないかと考えてしまう。

 光太郎は年から年中英樹親方に怒られながらも父への尊敬(※プラス恐怖)を忘れた事が無い。故にどうしてもフラの舞を放っておけなかったのだ。


 「…俺の中でワイキキの浜の相撲は生きている。だから親父の遺言に関係なく俺はワイキキの浜の後継者として試練に挑む」


 「フラの舞どん、あんさんはやっぱり最高じゃー!」


 光太郎がフラの舞の漢気に絆されて抱きつこうとしたが躱されてしまう。


 黄龍は光太郎とフラの舞のやり取りを見て今度こそは海星ショウと雷電のような結果にはならないと願った。

 海星ショウは不幸な生まれのせいで仲間を信じられず、雷電は恵まれた環境で生まれ育ったが家名と伝統を守ろうとしたのが原因でスモーデビルに敗れてしまった。

 しかし、彼らの行いは決して徒労では無かった。

 ショウの正しき心はフラの舞に、雷電の不屈の魂は光太郎へと受け継がれている。


 (…今度こそ無敵のスモーデビル軍団に一子報いる時が来たのかもしれない。ならば私が為すべき使命とはキン星山とフラの舞のどちらかに”真のキン星バスター投げ”を伝授する事…)


 黄龍は初代キン星山との約束を思い出す。


 果たして光太郎とフラの舞はその資格を持った力士なのか。

 彼らは初代キン星山の持っていた力士なのか。

 その全てが次の一戦によって暴かれるのだ、と。黄龍は意を決して光太郎とフラの舞に”赤壁相撲”の最終決戦場を告げる。


 「いいか、よく聞け。フラの舞、キン星山よ。次なる戦いの場は…」


 舞台は変わって現世、東ドイツ代表ブロッケン山の控室に戻る。

 ブロッケン山は自身のトレードマークである軍帽を手に持っていた。

 試合までの時間は残り僅か、歴戦の勇士は肉体に過剰なトレーニングを強いて体調を崩すような失敗はしない。

 敵は戦績では同等のラーメン山。下手な小細工をすれば返り討ちに遭うのは目に見えている。

 ブロッケン山は心静かにただその時を待っていた。


 ドカンッ‼


 そこにドアを蹴破る勢いで鈴赤が到着する。

 少年力士の鼻息は荒く、妙に落ち着いた様子の父親を見るなり文句をつけてきた。


 「おい、親父。そんなにリラックスして大丈夫なのかよ。相手が誰だかわかっているのか?中国の相撲拳法界の至宝と呼ばれるラーメン山だぞ、もっと気合を入れたらどうなんだ⁉」


 鈴赤は片手に持っていたスモーオリンピックに関係する総合情報誌”東京相撲ウォーカー”を壁に叩きつける。

 ブロッケン山はため息をついた後、椅子から立ち上がって雑誌を拾い上げた。

 紙面は倫敦橋とテキサス山のインタビュー記事が中心であり、他はフラの舞から取材拒否を受けた事くらいしか載っていなかった。

 光太郎の写真は当然のように皆無であり、参加者の欄にキン星山という名前しか載っていない。

 だが鈴赤が憤っているのは今日の二回戦に関するコメントについてだった。

 ブロッケン山は自分とラーメン山の戦いが世間からどれほど注目を集めているかが気になって文面に目を通す。そして文章を読んだ後に大笑した。


 「なになに…、”東ドイツの古豪ブロッケン山は不調につき敗戦濃厚。謎のベールに包まれた中国代表のラーメン山は国内では敵無し、公式戦では無敗。ブロッケン山にかつてない試練が訪れる、だと⁉ククッ、言ってくれるじゃねえか。なあ、ソーセージよお?」

 

 ブロッケン山は自分とラーメン山の写真が掲載されている頁を鈴赤に見せた。

 写真のブロッケン山は十数年前の姿であり肉体は鋼のように引き締まっている。

 それは鈴赤が肌身離さず持っているブロッケン山の写真に写っている姿と同じ物だった。


 (畜生…。みんなで親父の事を馬鹿にしやがって…ッ‼)


 鈴赤は写真に写っている精悍な顔をした頃のブロッケン山に戻って欲しかった。

 しかし彼はブロッケン山が冷酷な戦闘マシーンから血の通った人間に為った理由が自分にある事を知らない。

 ”せめて子供の前では笑っていて”という遺言を残してブロッケン山の妻はこの世を去った。

 今の陽気な性格に変わったのは最愛の妻を失った反動と鈴赤に対する罪滅ぼしである。


 (こういうのはまだ理解できねえだろうなあ…)


 鈴赤は突然、立ち上がってスポーツバックの中から包帯を出した。


 「コレ、ホータイ先生から差し入れだってよ。使ってやったらどうなんだ?」


 鈴赤は目を合わせずに包帯を押しつけた。

 ブロッケン山は旧友のホータイ・マキマキの顔を思い出しながら真新しい包帯を手首に巻く。

 そして鈴赤に向かってそれを見せた。

 鈴赤は自分の要望通りになって少しだけ表情が明るくなる。


 (こういう所はまだまだガキなんだよな…)


 ブロッケン山は鈴赤の年齢相応の姿を見て思わず笑ってしまった。


 「アイツも律義だね。雇われスポーツドクターのくせに会う度に体の調子はどうとか聞いてきやがる…。まあ、今回は特別に使ってやるとするぜ。ところでこの包帯は俺に似合うか、ソーセージ?」


 ブロッケン山は新品同然の真っ白な包帯を手首に巻いて鈴赤に見せた。

 鈴赤は父親の手首を見た後すぐ別の方を向いてしまう。

 ブロッケン山は鈴赤の機嫌取りの為に両方にテーピングを施す。

 鈴赤はため息を吐きながらも父親の両手を見ては首を縦に振る。

 そして意趣返しにいつまでも子供あつかいをする父親に辛辣な感想を述べた。


 「まあまあだな。腹のだぶついた肉をどうにかしたら認めてやるよ。後、ホータイ先生が具合悪そうにしていたから試合が終わったら迎えに行ってやろうぜ」


 鈴赤は先ほど帰りの道すがらに出会ったホータイの姿を思い出しながら伝える。

 父の担当だったという怪しげなスポーツドクターは外見に変化は無かったが何かがごっそりと欠けている様子だった事は間違いない。

 ブロッケン山は眉間に皺を寄せながら頭を縦に振る。

 現在控室にいるコーチ役のヴァンツァー山と同様にホータイ・マキマキは若い頃から専属のドクター同然に世話になっている。


 (あのおっさんも仕事中毒者みたいなもんだからな…。医者の不養生だなんて洒落にならないぜ)


 ブロッケン山は首を大きく回してから立ち上がる。

 これこそがブロッケン山の中で肉体の最終調整が終わった時に見せる動作で、その落ち着いた表情からヴァンツァー山は今回の戦いにおける揺るぎ無い勝利の確信する。


 ヴァンツァー山は椅子から立ち上がりブロッケン山の下に駆け寄る。

 今ここに激動の時代を生き抜いた相撲軍人が復活したのだ。


 「やれるのか、ブロッケン山よ。ドイツの栄光が健在である事を皆の前で証明してくれるのか…ッ‼」


 「まあな」


 ブロッケン山は何も答えずに口元を歪ませる。

 一方鈴赤はいつもは寡黙な父の友人が急に大声を出した事に驚いて転倒しそうになっていた。

 そしてトレードマークの軍帽を被り、出入り口に向かって歩き出す。

 ヴァンツァー山と鈴赤は胸を高鳴らせながら彼の後ろについて行った。

 しかし悲劇の発端となる白い包帯は沈黙を保ったままブロッケン山の両手に巻かれている。

 果たしてこの後ブロッケン山に一体どんな運命が待っているというのか?


 今は誰にもわからない…。

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[良い点] 前回の感想を書き忘れました、すいません。 ただただ熱い。 それは明日への勇気を読者に与えてくれます。 ありがとうございます。 男なら明日を省みない勝負に出るのも悪くない。 [一言] 原作…
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