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血染めの覇道  作者: 舞って!ふじわらしのぶ騎士!
王道 キン星山編 第一章 輝け!キン星山!
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第八十四話 血戦、スモーデビル対スモーナイト‼の巻

レビューまで書いてもらったのに見事なまでに遅れちまったぜ!


ごめんなさい。


次回は四月十二日に更新予定だ。久々の俺(天辺龍)の活躍を見逃すなよ!


 「貴様が天辺龍ペンドラゴンだと⁉」


 三角墓ピラミッドは目の前に立つ力士を見る。

 その獅子の鬣が如き金髪を、百獣の王と見紛うほど太く強靭な手足を、顔面を覆う溶接工の人がつけている防護マスクみたいな仮面を三角墓ピラミッドは己の眼に焼き付ける。


 (そんなバカな事があってたまるか。天辺龍といえばあの御方の戦歴に唯一傷をつけた伝説の力士と同じ名前ではないか…。しかもあの御方が魔界に君臨する以前の話だ…)


 天辺龍の背後に控える巨漢は動かない。

 全身に剣道の防具をつけたような姿をした力士、グレープ・ザ・巨峰は新たな主”二代目天辺龍”の命令があるまで動くつもりは無かった。

 それが真のスモーナイトの姿だと言わんばかりに…。


 「主よ。あの者はおそらくスモーデビルの実力者、三角墓ピラミッドでしょう。我らの獲物たる”はぐれスモーゴッド”を遥かに凌駕する実力を備えた力士で御座います」


 天辺龍はグレープ・ザ・巨峰に向かって”その場に止まれ”と片手を出す。

 対してグレープ・ザ巨峰は身体を前に倒しながら主君の命を謹んで受けた。

 

 三角墓ピラミッドはその間、肉体の破損した部分に包帯を使って回復を図る。

 三角墓ピラミッドはかつて先代のキン星山”海星雷電”との決闘に引き分け肉体を失っていた。

 そして半死半生となったキン星山は後に暗黒洞ワームホールと戦い、敗北してしまったのだ。

 現在、三角墓ピラミッドは肉体を失ったペナルティとして呪術を使う度に体の一部を生贄として捧げなければならなくなっている。

 ブロッケン山を仲間に引き込もうと画策する理由も現世における自身の肉体が限界に近づいていることを悟っての事である。

 いつも高飛車な三角墓だが、その性根はスモーデビルの未来の為ならばいつでも命を捧げる覚悟があった。

 

 「どうやら奴さん、今日はコンディションが完璧じゃないようだな。おい、逃げるなら見逃してやってもいいんだぜ?」


 三角墓ピラミッドは全身に包帯を巻いて万全の体勢を立て直した。

 

 (こやつら、やはり只者ではない…。吉牛たちの助けを借りるか?)

 

 その時、三角墓ピラミッドは己の中に渦巻く焦燥の念に舌打ちをする。

 今日印度華麗に憑依してキン星山に敗北した大西洋の事が頭の中に在った事は間違いない。

 非情のスモーデビルといえど仲間への連帯意識というものは存在する。


 (余ともあろう者が仇討ちなど、片腹痛い…ッ‼)


 三角墓ピラミッドは天辺龍のまわしを取った。

 天辺龍は正面からの取っ組合いを避けて三角墓ピラミッドの腕を引き剥がそうとする。

 しかし、それは叶わなかった。恐るべき三角墓の剛力が天辺龍の行く手を阻む。


 「天辺龍とか言ったな、小僧。余と対等に戦うつもりならば今の三倍は鍛え直して来い…冥途でだなあッ!」


 三角墓は天辺龍の身体を横に引き倒そうとする。

 呪いの包帯で強化された腕力ならば、例え相手が三角墓の苦手とする力技に特化した相手であろうとも優位に立つ事は可能なはずである。

 三角墓は天辺龍を己の股下に向かって叩きつけた。

 顔面から土俵に落下する天辺龍。その時、三角墓の意識は奥に控える巨漢グレープ・ザ・巨峰に向けられていた。


 (どうした⁉お前の仲間の窮地に何故駆けつけて来ない?スモーナイトとは何よりも仲間の命を大切にする者では無かったのか?)


 グレープ・ザ・巨峰は冷めた視線で天辺龍を見ている。

 あたかも三角墓に向かって”自分の試合に集中しろ”とばかりに…。


 「浅いな。それしきの力で我が主に勝とうなどと…。鍛え直すのはお前の方だ。スモーデビルよ」


 グレープ・ザ・巨峰は侮蔑の入った言葉を三角墓に手向ける。

 直後、熾烈な鉄砲が三角墓の頬を張り飛ばす。

 三角墓は驚愕と共に天辺龍の洗礼を受けることになった。


 「あ、が…ッ‼まさか貴様、肩の関節を…」


 通常の思考からは決して考えられぬ奇策だった。

 天辺龍は自らの関節を外し、あろうことか敵に背を向けた状態で張り手を撃ってきたのである。

 天辺龍は逆方向に曲がった左肩の関節を直しながら不敵に笑った。


 「いいねえ、最高だよ。久しぶりに相撲をした気分になれたぜ。なあ、巨峰よ?お前とのスパーも悪くは無いんだが毎日じゃあ飽きちまう…」


 天辺龍は豪快に腕を回し、肩の骨を元通りにした。

 無論、その行為に痛みが無かったわけではない。

 痛みへの恐怖よりも未知の強敵との戦いに対する高揚感が勝っただけの話だった。

 天辺龍は三角墓の前に再度、立ち塞がる。


 「凡夫ごときが、どこまでも余を愚弄するつもりか…。いいだろう、スモーデビルの本当の恐ろしさというものを教えてやろう。秘術、サハラ砂漠迷宮…」


 三角墓は両手を組んで空に向かって念じる。

 いつの間にか三角墓の足元に砂が螺旋状に砂が集まっている。

 渦巻く砂は風を起こし、いつしか三角墓と天辺龍たちの周囲には砂嵐が発生していた。


 天辺龍は太い腕をもって砂塵を振り払った。


 グレープ・ザ・巨峰もまた竹刀で砂を纏う風を切り裂く。

 二人の力士が砂嵐の向こうで見た者とは、巨大な太陽を天に頂く灼熱のサハラ砂漠だった。


 (※予算の都合上、微妙に真夏の鳥取砂丘に見えなくもない)


 砂漠の中心には頭にはネメス布(※ツタンカーメンが頭からかぶっている布の事)、腰には巨大なピラミッドの飾り付きのまわしを身につけた男が立っていた。


 「ほう。ここがお前のホームグラウンドってわけか。いいねえ、雰囲気が出ているぜ。で、次はどんな手品を見せてくれるんだ?魔術師マジシャンの旦那」


 「スモーデビルよ、これしきの小細工で我らをどうにか出来ると思っているのか?我らを倒したければ貴様のような使い走りではなくデビルスモーナイトか、スモー大元帥を連れて来るのだな」


 天辺龍とグレープ・ザ・巨峰は微塵にも驚く様子は見せなかった。

 しかし、三角墓の真の目的は彼らをこの地に引き止める事であり、戦力を分析する事でもある。


 「クッ、貴様ら如きにデビルスモーナイトが出てくるものかよ。ましてあの御方の名前を口にするなど無礼千万、万死に値するぞ‼」


 三角墓は両腕の包帯を解き、天辺龍とグレープ・ザ・巨峰に向かって投げつけた。

 包帯の先はキングコブラに代わり、毒液を滴らせ牙を剥く。

 狙うは喉元、鋼の装甲に覆われた肉体を持つ力士といえど体内に毒を入れられてしまえば死するのみ。

 グレープ・ザ・巨峰は天辺龍の前に立ち、右手を出した。

 開かれた五本の指先に赤き電光が生れる。だが何を思ったか天辺龍はグレープ・ザ・巨峰を下がらせた。

 野生の力士は本能で三角墓が己らの実力を見抜く為の芝居をしていることを見破ったのだ。


 「どうなされた、主よ?」


 「おいおい、巨峰よ。あんまり俺の出番を奪ってくれるなよ。ここは俺の新技を使う場面さ」


 天辺龍は右手に力を込めて物を掴む道具から、敵を倒す武器へと変化させる。

 感覚的な話になるが天辺龍は武者修行の中で己の中に眠っていた力を操る術を覚えようとしていた。

 天辺龍の右の手首から先が鋼鉄と化する。


 「この腕は護国の宝剣…ッ‼折れたる剣(カレッドヴルフ)張り手ッッ‼」


 天辺龍は大きく踏み込み、一本張り手を打つ。

 これが新たなる天辺龍の力。

 荒ぶるスモーゴッド、ガイア山の遺産ガイアフォースを力で制し己のものとした覇王の張り手。

 憐れ三角墓の放った幻影のキングコブラは一瞬で砕け散った。

 そしてその余波が本体である三角墓を襲う。

 衝撃波を受け止めた三角墓の腕も粉々に砕け散る。

 否、砂漠の結界を敷いた時に三角墓は己の両腕を生贄として捧げていたのだ。

 恐るべきは天辺龍の力か、はたまたスモーデビルの執念か。腕を失ったはずの三角墓は無言のまま立っていた。


 「おい、三角墓ピラミッドとやら腕はどうした?さっさとスペアを用意しろよ」


 天辺龍は右手を大きくスィングする。

 先ほどの一撃で肩の関節が外れかけていた。

 威力に見合った肉体が出来上がっていないのだ。


 一方、三角墓はありったけの憎悪を込めて天辺龍とグレープ・ザ・巨峰を睨む。


 (最悪、この二人を道連れにしてでもここで仕留めておかねばなるまい。天辺龍という力士も危険だが、あの奥に控える巨漢の力士はそれ以上だ。許せ、吉牛、エックス、暗黒洞よ。ここで余は死ぬかもしれん…)


 そして三角墓は己の死に様を笑った。


 「貴様らなどにその必要は無い。スモーデビルの底力を見せてやる…。秘術、暗黒砂嵐…」


 三角墓は口から血を吐きながら呪文を唱える。

 今度は空に暗雲と山ほどの大きさの竜巻が出現した。

 一本、二本、三本目の竜巻が生じると三角墓の右脚が吹き飛ぶ。

 しかし、三角墓は微動だにせず天辺龍とグレープ・ザ・巨峰の前に立ちはだかった。

 巨峰は腕を組んで片足だけで立っている三角墓を見据える。


 「敵ながら天晴な力士よ。ならばこの私、グレープ・ザ・巨峰も本気を出してやろう。目覚めよ、ガイアフォースアルファッッ‼」


 グレープ・ザ・巨峰は息を大きく吸い込み、咆哮を放った。

 背中には猛火の如きオーラが沸き立ち、周囲の風景を歪める。

 

 三角墓は数本の竜巻を自らの周囲に引き寄せて防御の布陣を敷いた。

 

 巨峰は地面に向かって手刀を落とす。

 真紅のオーラは衝撃波となって大地を引き裂き、三角墓に向かって行った。


 「馬鹿め‼我が秘術が攻撃の道具だとでも思ったか‼この暗黒砂嵐は無敵の盾にして矛ッ‼お前のチャチな攻撃など吹き飛ばしてくれるわ‼」


 三角墓は漆黒の竜巻に向かって熾烈な念波を送る。

 竜巻は回転の威力を上げて迫り来る衝撃波を全て打ち消した。


 「ぐはッ‼」


 三角墓は顔面の孔という孔から血を噴き出した。

 かのスモーデビルはまたもや己の一部を生贄として捧げたのである。


 「見事だ、三角墓とやら。だが我がガイアフォース・アルファは破壊の技のみに非ず!今度はその真価を見せてやろう…」


 グレープ・ザ・巨峰は黒い竜巻に向かって手を広げた。

 黒い竜巻の中に引きこまれたグレープ・ザ・巨峰の真紅のオーラがガイアフォース・アルファに呼応して再び活力を取り戻す。

 三角墓は口内に溜まった血を地面に吐き出しながら、グレープ・ザ・巨峰との戦いを最後の一瞬まで見届ける覚悟をしていた。

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