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血染めの覇道  作者: 舞って!ふじわらしのぶ騎士!
王道 キン星山編 第一章 輝け!キン星山!
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第七十五話 伝説の相撲龍、現る‼の巻

次回は二月二十六日に投稿するでごわす。

 

 ラーメン山の持つ秘伝”相撲秘史”と記された巻物の封印の紐を解くと絵の龍が実体を得て、会場の中に姿を現した。

 

 光太郎たちは何が起きたかを理解出来ず、固唾を飲んで龍と相対するラーメン山の姿を見守るばかりだった。

 唯一例外だった吉野谷牛太郎は丸太のような剛腕を組んで不敵に笑っている。


 「久しぶりだな、ラーメン山よ。天の果てからお前たちの戦う姿を見ておったぞ」


 「お久しぶりです、相撲龍様。此度はある勝負を見届け、正しき答えを導き出す為に何卒お力をお貸しください」


 ラーメン山は自慢の三つ編みを揺らしながら平伏する。

 普段ならば真っ先に乗り込んでもおかしくはないフラの舞も凍りついたようになってしまっている。

 

 相撲龍はフラの舞と光太郎を順に見てから目を瞑ってしまった。

 未来を予見する神通力を持つ相撲龍はフラの舞と光太郎が先代からの因縁でぶつかり合うことを知っていたのだ。

 如何に万能の力を与えられても止められなければ意味はない。

 相撲龍は首を縦に振り、宿命の戦いを見届ける事を約束する。


 ヒュウッ‼


 その時、場違いな甲高い口笛が鳴り響く。

 吉野谷牛太郎は壁に寄り掛かりながらあたかも我が意を得たりといった様子である。


 ラーメン山と羽合庵は同時に吉野谷牛太郎を睨みつける。


 だが何もする事は出来ない。


 吉野谷牛太郎はまだ何もしていないのだから…。


 「フラの舞、キン星山よ。八卦鏡の欠片を渡しておくぞ。当日、その鏡の欠片を割らなかった方が真実の主となる。良いな?」


 光太郎の目の前に大昔の中国で占いの時に使われた鏡の一部が浮いている。


 光太郎は危険が無いか何度か人差し指で突いて確認してから手に取った。

 一方、フラの舞は自らの前に現れた鏡の一部を手に取ると慎重に観察している。


 (相撲龍から鏡を受け取り、ジグソーパズルのように完成させた者は世界の相撲界の頂点に立つ資格を手に入れる…。親父が遺した与太話だと思っていたが俺にも運が回ってきたという事か)


 フラの舞が野心的な笑みを浮かべている事をラーメン山と吉野谷牛太郎は見逃さなかった。


 「美伊東君、これは…何でごわすか?」


 光太郎は黄色い鏡の欠片を美伊東君に見せる。

 羽合庵はフラの舞に害が無いことを確認すると光太郎たちのもとに戻って来ていた。


 「これは僕らが使っている鏡とは明らかに違うものですね。考古学は専門外なので詳しい事はわかりませんがこの周りの模様とかを使って占いに使うものではないでしょうか?」


 そう言って美伊東君は欠片に刻まれている赤い線を指でなぞってみせる。

 それらは数字や方角を示すものだったが光太郎と美伊東君にはわかるはずもない。

 その間、ラーメン山は相撲龍を元の世界に還した上で光太郎とフラの舞に決闘方法の説明を始める。


 「まず最初に言っておくが、今回の”赤壁相撲”は貴様らの因縁に決着をつける為の方法でありキン星山、フラの舞のどちらかが意義を申し立てればその時点で本来のスモーオリンピック形式の戦いに戻すという流れになる。タナボタ理事、この方法ならば委員会の面子を潰さずに済むではないアルか?(※最終的にはアリなのか無しなのかよくわからない)」


 「むむむぅ…ッ。それは難しい話だぞ、ラーメン山よ。このまま普通にスモーオリンピックのルールに従えば光太郎…じゃなくてキン星山の勝ちじゃからのう」


 確かにフラの舞は光太郎の試合後に乱入し、一方的な暴行を加えている。

 どこのスポーツの大会、もしくは格闘技の大会であっても歓迎されるべき行為ではない。


 フラの舞は苦々しい表情で事の成り行きを見守っていた。

 だが光太郎はフラの舞の方を見ながら”赤壁相撲”で師とフラの舞の因縁に決着をつけることを望んだ。


 「お言葉ですが、タナボタ理事殿‼おいどんは日本を代表する力士。土俵の上での決着以外は認めんでごわすよ‼」


 光太郎は太鼓腹をびしゃりと叩き、二ッと笑った。


 羽合庵は光太郎の勇ましい姿を見て自分の不安が単なる杞憂にすぎなかったことに安堵する。

 そして、フラの舞は刮目して大見得を切る光太郎の姿に驚愕していた。


 「若‼」


 「よくぞ言った‼流石はキン星山だわい‼」


 美伊東君と英樹親方は喜びながら光太郎の腕を取った。

 以前の光太郎はぶよぶよのぜい肉だらけの腕だったが、幾多の戦いと訓練を経て筋肉と脂肪に守られた堅牢な武器と化していた。


 だがラーメン山は厳しい表情のまま沈黙を守っている。

 この時ラーメン山は光太郎の内なる力を認めつつ、さらに将来の雄敵となることを確信していた。


 「ラーメン山よ、キン星山はこの通りやる気満々だわい。そしてワシも今回のフラの舞の乱暴な振る舞いに関しては追求するつもりはない。お前が相撲龍から授かった”赤壁相撲”のルールについて説明してくれやしないか?」


 「念の為だ。フラの舞よ、お前はどうするつもりだ?」


 ラーメン山は背中からフラの舞の炎の闘志を受けながらも勝負を受けるかどうかについて聞くことにした。

 実のところ、ベテラン力士のラーメン山としてはフラの舞とキン星山の関係が良好となり、良きライバル関係を築く契機となることを願っている。


 (孤高の強さだけを求める倫敦橋には必ず限界が訪れる。彼奴を倒す力士は人の絆を信じられる者でなければならぬのだ…)


 ラーメン山は今の倫敦橋に危うさを感じていた。少なくとも英国に春九砲丸という荒くれの力士がいた頃は今のような氷のような冷たい瞳ではなかったはずだ。


 「今さら知れた事だ、ラーメン山。俺はコイツに正々堂々勝って親父の無念を晴らす。そしてスモーオリンピックで優勝してハワイの相撲こそ真の相撲ということを世界に認めさせてやるッッ‼」


 フラの舞は光太郎のみならずラーメン山と吉野谷牛太郎をも挑発するような口ぶりで勝負を引き受ける。


 羽合庵と光太郎への因縁めいた憎しみが消えたわけではないが、以前とは違う彼の異名”ハワイの若き帝王”に相応しい面構えに変わっている。


 光太郎はその勇姿に絆されて右手を差し出したが、フラの舞は手を出さなかった。


 「勘違いするな、キン星山。俺はまだお前を認めたわけじゃない。次の試合、三日後に開かれる第二回戦でお前が俺に勝ったら握手をしてやる」


 「ぬふふふッ‼それでは全力で、あんさんに挑ませてもらうでごわすよ‼それではラーメン山殿、”赤壁相撲”のルールを説明して欲しいでごわす‼」


 まずラーメン山は懐から別の巻物を取り出し、解いてみせる。

 巻物の中には天馬と鳳凰、青い龍と大きな亀が描かれていた。


 「これは四霊…。麒麟と鳳凰と応龍と亀霊ですね。…そうか‼相撲龍が現れたというのはそういうことだったんですね‼」


 美伊東君は光太郎の持つ鏡の欠片に描かれた模様と神獣たちを見比べる。


 (この欠片の示す方角、そして文字から察するに”天馬”の部分。ということは先に四枚の欠片を集めて相撲龍を呼び出した者が戦いの勝者になるわけか…)


 フラの舞は美伊東君の側に行って自分の持つ欠片を見せた。


 「美伊東君、君の噂はハワイまで届いている。良ければ俺の持つ欠片はどの守護者ガーディアンを示しているか、教えてくれないか?」


 美伊東君は米国の相撲マニアの間では草分け的な存在であり、フラの舞も彼の持つ知識と洞察力の高さには注目していた。

 そして美伊東君は快諾の意志を伝えた後、フラの舞の持つ鏡の欠片をじっくりと見つめる。


 「こちらは鳳凰、東洋のフェニックスです。この戦い、”赤壁相撲”とは即ち四種類の神獣全てを揃え尚且つ”相撲龍”を召喚した者が勝利するというものですね。どうですか、ラーメン山?」


 ラーメン山は美伊東君の顔を見てから頭を縦に振る。表情は相変わらず厳しいままだった。


 「左様。赤壁相撲とは三国志と呼ばれる時代において屈指の名勝負と呼ばれる赤壁の戦いに端を発するという言い伝えが残っている。しかし問題は四柱の神獣を全て揃えても肝心の相撲龍に認められるような勝負をしなければ、勝敗は決まらないというところにあるのだ。かつて魏の曹操山は相撲龍の決定に異を唱え、八卦鏡を強奪したことで相撲龍の怒りを買い船団の悉くを失ったらしい…」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 赤壁相撲が楽しみですな。また、どうしてもカピラリアの欠片で脳内再生されてします。楽しんでますね。 今は固唾を飲んで成り行きを見守るのみ。うまく言葉がでなくて、すいません。 [気になる点] …
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