某所……
遅くなりました。
初心者プレイヤーの最初のログイン地点にもなっている所――『始まりの町・イニティアム』。
そこには、沢山のLv1~Lv50のプレイヤーとNPCで溢れていた。町の周りには半径200メートルで囲まれた草原がありその先にはその高原を囲むようにして500メートルほどの森が存在していた。その森には平均Lv40のモンスターがウヨウヨ住み着いていた。そのため初心者プレイヤーにとって“旅の登竜門”と言われていた。
同時刻、その“旅の登竜門”と言われている森の外側では、何やら20~30ほどテントがあった。テントの頂には一本の旗が刺されおり獅子の絵が描かれていた。テントは森を囲むようにして所々に建っていた。
中でも、だれから見てもお偉いさんが入ってそうな無駄な装飾が施されたテントが1つだけぽつんと建っていた。入り口には2人の護衛プレイヤーが、けだるそうに立っていた。
テントの中では一人の大男が椅子に座って各のテントのメッセージを確認していた。
ピピッ!! ――『こちら1班異常なし』
ピピッ!! ――『こちら5班異常なし』
ピピッ!! ――『こちら14班異常なし』
軽い電子音と共に次々に同じようなメッセージが流れる。全ての班の報告が終わり大男は一安心していた。
すると、テントの中に一人の小柄な少女が入ってきた。
「ク、クトラ? 今いい?」
何となく後めたがるように話しかけて来た。
他人から見て、年齢は13、14ほどだろうか、水色の艶の入った長い髪は一本のリボンで結ばれており装備の衣服は黄緑がメインとなっていた。
クトラは左手で表示していたメニューウィンドウを閉じライムの方を見る。
「どうしたライム?」
「あの……今更かもしれないけど、本気でアレをやるの?」
「当たり前だ。しかしこれは、俺の為でもあるし、お前の為でもある筈だ……分かるだろう?」
「うん、だけど自分自身本当にやっていいのか拒む自分が……」
彼女の話を聞くとクトラは、大きく息を吐き再度ライムの方を見る。
「怖いのか?」
「うん、正直……」
ライムは、こくりと小さく頷く。
「そうか……じゃあ――」
クトラは、一度躊躇うと再度口を動かす。
「ライム、お前は参加しなくていいぞ」
「……え?」
「元々、この“作戦”は俺が考えたやつだ。故に最初から俺のやり方のつもりだ。故にお前をこれに巻き込むつもりなんてのっけから考えてない。そして――」
そう言うとクトラは、左手でメニューウィンドウを二つ開き彼女に見せる。
「これが何だか分かるか?」
「え?」
一つ目の画面には、ライムが見るにその画面の一つには大量の1と0の2進数があった。誰から見ても何となく何かしらの『プログラム』であることが分かる。もう一つの画面にはブラウザーの画面が映し出されていた。
まずライムが真っ先に見たのは、ブラウザーの画面だった。そこにはこう記載されていた。
『これまで謎に包まれてきた「第3の神の結晶」の在処が明らかに!? ――。』
ライムはその記事を読み進めていく。彼女は、最後の行を読み終えると完全に彼が何しようとしているのかを察したのか、震えた声で問いかける。
「……やっぱり本気なのね?」
「ああ、作戦の実行は明日の午後8時からだ」
「……お兄ちゃん……」
「その名前で呼ぶな」
「ご、ごめん……」
落ち込んだ様子で返すとライムは、下を向き黙り込みすぐさま、このテント内から出て行った。
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