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レベリングオート ~かつて最強だったプレイヤーが、Lv1からやり直すそうです~  作者: 行川 紅姫
序章:トップランカーやめました
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初心者とトップランカー

序章と同時投稿です。

「なんじゃこりゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」

 突如、喉の奥深くからありったけの声が木霊するかのように鳴り響いた。


 一瞬付近の人々も突如彼の嘆きにも似た叫びによって一斉に彼に視線が集中するも数秒後にはその視線は次第に薄れていった。


 初心者核石人種(プレイヤー)ばかりが集まる毎日がお祭り騒ぎの町イニティアム。


 10月、この時期は辺りにある木々の葉が紅く変わる頃でもある。毎日お祭り騒ぎの中心街には|原人種

《NPC》達が市場から仕入れてきたであろうサツマイモ等の旬の味覚や装備などが売られていた。


 そんな中、町のシンボルでもある大樹がそびえ立つ場所に、初期の装甲装備の『布の服』を身につけている一人の少年の姿があった。


 名はラルフ、Lv1として、たった今この地に降りた一人の初心者(、、、)プレイヤーだ。


 実際、初ログイン(、、、、、)なので初期装備である『布の服』を身につけてはいたが、逆にそれ以外の剣や盾などの装備は一切付いてはいなかった。


 いま彼の目の前には、一つのメニューウィンドゥが展開されていた。


 メニューの内容はステータスだ。HP、MP、攻撃力、守備力などはそれぞれLv1らしい低数値となっていた。


 ほんの興味(、、、、、)本位であった(、、、、、、)


 しかし、今になって考え直してみればどうしてこのようになってしまったのだろうか。


 ラルフは、つい数時間前のとある出来事(、、、、、、)をふと思い返してみる。


 ◇◆◇


 西暦2062年、とあるVRオンラインゲームが発売された。


 その名は『Crystal(クリスタル) Would(・ワールド) On-line(・オンライン)』。


 通称CWO、『誰もが楽しく遊べる「仮想世界」』というコンセプトで開発されたVRMMORPGだ。


 このゲームはとある異世界を舞台とし、プレイヤーは様々な仲間と武器、魔法でモンスターを倒してクエストをクリアしていくというとても単純なものだった。


 今の時代これと同じような内容のゲームはちょくちょく出てはいたが、それでも人気に火が付く要素がたくさんあった。


 そのうちの一つがこのゲームの題名にもなっている、『とある』アイテムの存在だ。



神の結晶(クリスタル)



 それは、このゲームのワールド上に3つしかないと言われ、このゲームの中で最高レアリティを誇るアイテムだ。


 このアイテムは、あらゆる武器、防具に配合して使用するものであるが、これを入手するためにはある『クエスト』をクリアしなければならなかった。


 その名は、クリスタル獲得クエスト『神に相応し者へ――』。


 このクエスト限定、7大陸にいる龍の頂点に君臨する『全てを司る者(レギレン・アーラー)』の討伐とおまけ(、、、)にこのCWO上の()モンスターを同時討伐という鬼畜内容となっていた。

 更に言うと、このクエストは最大50人のレイドが可能なのだがそれでいてもクリアすることもできなかった。いや、正確に言えば『誰一人相手にすらならなかった』の方が正しいか。


 過去にこのクエストに挑戦した組は100を軽く超える。各プレイヤーのレベルも800以上で全く問題ないステータスを持っていた。しかし、このクエストに挑戦した誰に話を聞くも「『全てを司る者(レギレン・アーラー)』に全く傷一つ与えられなかった」という答えしか返ってこなかった。



 それほど凶悪なクエスト……

 しかし、それをクリアした者への報酬はとてつもないものだった。


 それが、『神の結晶(クリスタル)』。


 それと配合した武器、防具は7色に光り他の装備とは桁違いの能力を持つと言われ、誰からも認められる『チートアイテム』だった。


 後に分かる事なのだが、実際このクエスト『神に相応し者へ――』はこのワールド上には、なぜか2つ(、、)しか存在しなかった。


 ◇◆◇


 サービス開始から4年――。



 2066年10月26日午後10時28分15秒


 怒号にも似た大きな歓声が入り交じるコロシアム。年に一度のトップランカーを決めるゲーム大会なのか大きな盛り上がりを見せていた。


 360°観客席を見渡す限り人、人、人。とにかく人で溢れていた。もし、コミュ障の人間が突然こんな場所に立たされたらどうなるだろうか? ……大体の察しが付くだろう。


 そんな歓声の声が響く中、どこからか女性の実況が会場に響き渡る。

『さあアアァァぁああ!! 皆さんお待ちかね! このCWO全プレイヤー75万人の頂点を決めるこの大会、第6回「クリスタル・レイロード」もいよいよ大詰め、これまでゲーム内7大陸での1か月間の予選を勝ち抜いた上位5グループがこの舞台に集結!! 熱いバトル繰り広げてきました。そう、あの長かった「クリスタル・レイロード」も今はもう最後の戦い、決勝戦だああアァァアああ!!!』

「「「おおおおおおおお!!」」」

 実況者が声を嗄らしながら言い放つと、それに釣られるように観客席の人たちから一斉に大きな歓声が上がる。


 この光景はゲーム内の全ワールドに向けて生放送されていた。今頃、視聴者はゲーム内のネット中継においておよそ百万人を超えていた。

 そんな『観客の視線』というプレッシャーに満ちあふれたその対戦場の入場門には、とある真っ白な服を着た1人の少年の姿があった。

 名はルイス、過去4年間この大会の決勝大会に出場して連続優勝している『王者』に君臨する者だった。

 彼が『王者』と言われる理由は言うまでもない。『王者』と呼ばれる者に相当する力を持っているのだ。


 それは、この大会を含め4回の予選でトップ出場を果たしその上完全優勝の内、第2回大会以降ソロ(、、)でのノーダメージのパーフェクトゲームを達成という化け物のような偉業を達成しているからだ。


 ギギギッ!! と木が軋むような音とともに対戦場の扉が両者開門する。


 ルイスはゆっくりと対戦場に足を踏み入れる。真正面の門からもぞろぞろと5人の核石人種(プレイヤー)がこの対戦場に足を踏み入れる。同時に会場内はより一層盛り上がりが増していた。


 このゲームのルール上、各チームの人数は最大で5人と定められている。


 ゲーム上最高レベルは999と定められていた。その上相手核石人種(プレイヤー)のレベルは全員950以上、合計でも4500を軽く超えるレベルとなっていた。


 因みにルイスのレベルは999だ。このレベルは全CWOプレイヤーを探してもルイスただ一人だけだろう。


 人数差は4人、レベルの差においては3500を超えていた。その状況下でもルイスは、その5人を相手にとろうとしていたのだ。


 ルイスは頭のフードを取りゆっくりと会場内360度見渡す。


 会場はこの決勝のファイナリストが登場してから、より一層騒がしくなっていた。


 相手チームは、前からの何らかの作戦なのか、鞘から剣を抜き一定の配置についていた。故に5人のギラついた眼差しは、ラルフから離れることはない。


 相手が行った配置それは、よくサッカーのフォーメーションなどで見られる前方3人、後方2人の基本陣営だった。前方の3人は接近戦、後方の2人は魔法での補助・回復を専門とする者たちだ。


 間もなくして、またスピーカーから声が聞こえる。


 それは先ほど熱く実況していた女性の声ではなく、男性の爽やかな声のアナウンスだった。

『間もなく、第6回「クリスタル・レイロード」決勝戦を開始します。このアナウンス終了30秒後に試合の開始を合図するブザーが鳴ります。それまでお待ちください』


 ピンポン♪ というよく学校で聞くようなチャイムの後に、そうアナウンスされると会場のモニターや観客席にいる各プレイヤーのメニューウィンドウからは『残り30秒』のカウントダウンが始まっていた。

 ピ・ピ・ピ、という電子音とともにカウントが減っていく。次第に、会場にいる人間は「15!! ・14!! ・13!!」と一斉にカウントをしていく。



 そして――、残り10秒を切る。


 相手チームは剣を握りしめ、膝を少し曲げた体勢で剣先をルイスに向ける。彼らの後方の人たちは心を落ち着かせるために深呼吸をしていた。

 対するルイスはゆっくりと、右手を長刀の持ち手に触れ、もう一本の短刀は左手で逆手に持ち体の重心を少し前に傾ける。


 次の瞬間――

 ビー!! とカウントが0になりブザーが大きくコロシアムに鳴り響く。


 刹那――ブザーが鳴った瞬間彼の身に突如異変が起きた。

 その異変はまるで立ちくらみに似ていた。視界がまるでゼリーのように歪み前方の向かってくるプレイヤーがまるで2,3人に分身しているかのように錯覚する。

 次の瞬間、プツン! と、まるで一本の糸が切られるように突如ルイスの視界が一瞬にして闇の奥深くへと落ちてゆくのであった。

 ――――。

 ――。


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