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汚れた血統種(上)

1万アクセス記念作品。本編「第14話 星をみるひと」以降に読むことをお勧めします。

 今、私には気に入らないものが二つある。

 

 一つは、なめらかな黒髪を揺らす野犬。

 愛想の良い表情を貼り付けているが、その中身は酷くえげつない正義を詰めた女だ。この女については、百の罵詈雑言を並べ立てても、私の怒りが収まらないので、これ以上は言及しない。


 そしてもう一つは、私を威嚇する野良猫。

 こちらは文字通り、動物の猫である。

 

 本来長くて柔らかい毛並みを持つ猫なのだが、その毛並みは痛み、みすぼらしい。

 野良猫は木に登り、私の手が届かない枝の上にいくと、ふーふーと息を荒らげ、翡翠(エメラルド)の瞳でこちらを睨む。

 

「なに睨んでるのよ、この野犬」

 

 野生に落ち、汚れた野犬の目が気に入らない。

 決して枝の上から降りてこないこの猫が、私は痛く気に入らない。

 

「だからお嬢様、妖精猫(ケットシー)ですって」

 

 隣の銀髪従者は、呆れた顔をしていた。

 

 

 

     ◆

 

 

 

 私がこの野良猫に遭遇したのは、入学二日目の話だ。

 女学院から北東方向へ飛ぶこと20分。直線距離にして約20km地点にあるカフランという海辺駅に辿り着いた。打ち寄せる波音が岸を叩く音。潮風の匂いが鼻孔をくすぐる。

 

「ふあーあ。お嬢様は朝から元気ですね」

「別に無理してついてこないで良いわ」

 

 一歩後ろにつく従者エメロットが欠伸をする。普段から無気力な瞳は、早朝は眠気も手伝い、退廃的にすら感じる。

 何で彼女はこう――いや何も言わないでおきますわ。


「何か言いたげな目ですね、お嬢様」

「別に」

 

 いちいち勘が鋭い従者をあしらい、私は杖に再びまたがった。海を見に来たわけではない。私はただ自分の速さを確かめに来ただけだ。


「戻るわよ、エメロット」

「疲れたので、後ろに乗せてくれますか」

「……貴方の杖は飾りなのかしら」

 

 エメロットは動じない。ただ足元の石ころを蹴るだけだ。

 やがて観念したように杖を取り出すと、不意に首を回した。

 彼女の濁った瞳は、土色と緑色の地面の境目、アウロイ高地の裾野を見つめている。


「どうしたのよ、急に」

「妖精猫です」

 

 妖精猫はセントフィリア王国に棲む固有種だ。魔力を帯びた美しい毛並みを持つ蹴鞠(けまり)のような生き物だと聞いた。ただ私も現地人ではない。詳しくは知らない。


「追いますよ、お嬢様!」

「ちょっと待ちなさい、エメロット」

 

 珍しく目を輝かせた彼女は、アウロイ高地へ走りだしながら杖にまたがった。

 彼女は杖に横乗りすると同時に、魔力を噴かせる。飛行魔法のお手本のようにスムーズに加速し、未舗装のアウロイ高地へ続く道へと突っ込む。


 私は慌てて杖にまたがり、【風の槍(ランス)】を展開した。点になった彼女を追うために、空気抵抗ごと引き裂いて加速する。

 杖に魔力を上乗せして飛ぶこと数秒。ようやく距離を詰めて、並走する。


「エメロット、貴方なに急にやる気出しまたの」

「妖精猫は高く売れます! 生活費の足しにしましょう」


 この守銭奴め。急にやる気出したと思ったら、世俗的な理由ですこと。

 そんな非難がましい目で見ていると、エメロットから手痛い反撃をくらった。


「お嬢様が女子寮のシャンプーは嫌だとか、あれこれワガママを言うからですよ」


 悔しいがぐうの音も出なかった。

 庶民的な女子寮暮らしは私の肌に合わず、事あるごとにエメロットに買い替えを申し付けた。それはシャンプーから始まり、部屋の調度品に至るまでのありとあらゆるものだ

 ……仕方ないですわ。だって気に入らないのだもの。


「その上、カード停止処分ですか」

「それは貴方もですわ!」

「自爆テロの被害者に、よくそんなこと言えますね」

「……悪かったわよ」


 入学式前に派手に空中レースを繰り広げた罰として、私はカード配布を後ろに伸ばされた。このカードというのは、魔法少女の財布にあたるカードだ。魔力を担保にしてお金を借りる仕組みなのですが、まあそれは良い。今問題なのは財布がないことですわ。

 

「あれだけ派手にやらかしちゃねえ。フィロソフィアちゃんには悪いけど、一ヶ月は我慢して貰おうかしら」

「何でですの! 全部私が悪いとでも言うのですか! 私だけではありませんわ。エメロットの賭け事に乗った野犬どもも同罪ですわ――ッ!」

 

 行かず後家の担任の言葉につい熱くなり、賭け事の首謀者を暴露。

 エメロットのカード交付が後ろに伸びたことは言うまでもありませんわ。

 

 ……全てはあの野犬のせいだ。

 あの野犬だけはいつか噛み殺してやる。あの絹のような黒髪が頭に思い浮かぶと、無性に腹立たしい気分になりますわ。


「お嬢様」

「今度は何よ。まだ文句を言い足りないのですか!」

「前危ないですよ」

「――ぷげらっ!」


 よそ見していた私は、前方の茂みに勢い良く突っ込んだ。無数の枝葉に叩かれて、精神のたがが緩む。ちょっ、真面目にこれ地面に落ちる寸前ですわ。

 エメロットはその光景を見て、含み笑いを浮かべた。この女もたいがい腹立たしい。


「ぷふっ。大丈夫ですか、お嬢様」

「喧嘩売ってますの、貴方」


 ひょっとこみたいに尖らせた口。心配を最大限まで薄味にした台詞の棒読み。

 ……怒りますわよ、エメロット。


「お嬢様のマヌケな経験を活かして、この先は歩くことにしましょう」

「ええ、その提案には心から賛同します――わッ!」


 バックナックル気味に右手を振り回すと、エメロットは何事も無かったかのようにひょいと避けた。ちっ、相変わらず反射神経が良いですこと。

 

 私は昔から彼女と喧嘩をして勝てた試しがない。もっとも今の彼女は、拳を固めるような真似をしないため、勝ち負けもあったものではないのだけど。


「ほらお嬢様、掴まって下さい」

「大丈夫よ。子供じゃあるまいし」


 手を差し伸べるエメロットの申し出を断る。この歳で手を引かれるのはさすがに恥ずかしい。

 と、躊躇する私の手をエメロットが強引に引っ張った。一歩前につんのめった私の頭上を風切り音が通り過ぎていく。


 風切り音の正体は、両手足に飛膜を張ったムササビだった。

 私が動物図鑑で知るような品種とは違う。丸くて赤い瞳も特徴的ではあるが、なにより口元から飛び出した獰猛な牙が目を引く。

 

 もしエメロットが手を引かなかったらと思うと、背筋が少し寒くなりますわ。


 滑空したムササビは向かい側の灌木にへばりつくと、折り返すように再び私めがけて飛び込んできた。舐められたものですわ。


「この野犬が――ッ!」


 最速で【突風】を吹かすと、ムササビの軽い体は容易く灌木へと直撃した。

 ふんっ、小動物ごときが調子に乗るんじゃないわよ。


「お嬢様、ムササビですって」

「わかってるわよ」


 ムササビを野犬と呼ぶ私を、エメロットが可哀想な子を見る目で見た。

 止めなさいその目つき。私の敵は、野犬という名前で一括りなだけですわ。


「ほらね、危なかったでしょ」


 気づけば私は手を握られたままだ。この醜態を晒して振りほどくことはできない。

 何よりエメロットの薄い笑みを見ると、簡単にこの手を離せなくなる。

 

 薄くなった彼女の表情のなかにもまだ生きる、無邪気な部分を垣間見た。

 ――そんな気がした。


「仕方ないわね。さっさと行くわよ」

「ええ、お嬢様。妖精猫を私たちの日銭にしますよ」


 手を繋いで歩く私たちの距離は、どこまで近いのだろうか。

 私の名前を呼ばなくなった彼女が、本当に私の側にいるのか、ときに不安になる。

 

 それでも確かなことがあるとすれば、きっとエメロットだけは私の野犬にならないということだけだ。

 

 私たちはアウロイ高地をさまよう。

 ここがやけに暗いのは、早朝だからではない。あまたの木々が太陽の光を求めて伸ばした手は、皮肉にも光をさえぎる緑の天井となる。

 

 私たちは日中も陽の当たらないアウロイ高地を歩いて行く。

 存在さえ不確かな妖精猫を求めて。

 

 

 

     ◆

 

 

 

 入学三日目。晴れ。今日も機嫌が悪い。

 学食棟のボルシチが不味かったからでない。

 あの黒髪の女が――あの野犬が。思い出すだけでも腸が煮えくり返る。

 

 入学初日だけでは飽きたらず、二日目もあの野犬が暴れ回っていたと聞いた。すべての元凶はあいつですわ。誰か早く保健所に電話しなさい。

 

 これは昨日の学力テスト後の話だ。

 白亜の城から出ると、何かが焼けるような匂いが鼻についた。火の魔法の匂いですわ。バカな野犬が暴れた痕跡でしょうと、流し見して帰る間際。私は捕まった。

 

「ちょっと、貴方なにをしたの」

 

 老婆と呼んで差し支えない教師がこちらに難癖をつけた。

 よく見れば、周囲の人間も疑惑の目を向けていた。きっと私が初日に暴れた問題児だから。本当に嫌になりますわ。


 まったく冗談じゃないわ。私が風属性の魔法少女だとも知らない人間が。レッテルを貼るしか能がない無能が。なに見てるのよ野犬ども、噛み殺しますわよ。

 

 一時は一触即発の空気を醸しだしたが、すぐにエメロットが弁護に割って入ると、ほどなくして私の嫌疑は晴れた。なかなかやるじゃないの。

 

 しかし、腑に落ちない結果だった。青筋を立てていた老婆は謝りもせず、見物客はただ残念がって帰っていきました。


 なんですの、これは。ふざけるんじゃないわ。

 

 この時点でかなり頭にきていたが、翌日の今日にはさらに腹立たしい事実が発覚した。火の匂いがする場所が、あの野犬の暴れた場所と判明した。

 あの野犬はどこまで私をおちょくれば、気が済むのかしら。

 

「今度こそ吹き飛ばしますわ」

「ちなみに首謀者は、ルバート=ピリカという火属性の魔法少女のようです」

「そう、そいつの名も覚えておくわ。今度吹き飛ばすためにね」

 

 今日もアウロイ高地の苔むす道を歩く。

 三日目早朝も含めて、今回で三度目の捜索だ。

 金策になるという妖精猫は見当たらない。

 生い茂る高地にいるのは、昨日のムササビ――アカサビを始めとした、小動物が中心だ。大した戦闘力のない、要は雑魚ですわ。相手が悪かったわね。

 

「誰に牙を向けているのよ、この野犬が――ッ!」

「だからお嬢様、ムササビですって」

 

 妖精猫の探索を続けていくと、足元をカサカサと這いよる怪しい気配。ん、何か変なのがいますわね。


 丸く盛り上がった灰色の背中。頭には二本の触覚。私の腰の高さまでありそうな虫だった。脅かさないでよ。虫は嫌いですわ。

 

 重そうな見た目だったので、突風ではなく【風の魔法弾】をぶつけると、灰色の虫は唐突に丸まり始めた。突然の変形に驚いたが、そこから動きはないようだ。

 

「あれはワラジムシ目の、ロックボールですね。硬い甲殻を持ち、外界からの刺激を受けると、丸くなるのが特徴のようです」

「ふーん」

 

 エメロットは手元の書籍『アウロイ高地を生きる』を読みながら答える。

 図書室から借りた書籍らしい。まあ、害がないなら良いわ。放っときましょう。

 

 ときに飛び交うアカサビを吹き飛ばし、ときに邪魔となるロックボールを【魔法弾】で威嚇する。この散歩は適度な魔法の訓練にもなるし、なかなか悪くない。

 

「たいした魔物はいないわね。アウロイ高地」

「油断するお嬢様とか、死の香りしかしませんよ」

「うるさいわね。油断しても勝つのよ」

 

 油断するのも強者の証であり、そして油断しても勝つのが強者の証明だ。エメロットはその辺がわかっていない。

 

「良いこと、この機会に――」

 

 会話を物理的にさえぎられた。

 エメロットに口元を押さえられ、背中を後方の木に押し付けられた。

 ちょっとなんですの、急に。

 

 その唐突な行動の意味は、すぐにわかった。

 小さく唸る虎。重量感のある身体が、自然を踏みつける音がした。

 

 白い毛並みと黒い毛並みが交じり合う、ゼブラ模様の虎が悠然と歩いている。

 アウロイ高地の王者――テオタイガー。この前読んだ女性誌のブランドバッグ特集に載っていたやつですわ。

 

 どくんと――心臓がはねる。

 テオタイガーの足取りは遅い。

 猛獣の目が何かを探るように、警戒を露わにする。

 近づく野生を前に身動きがとれない。

 息を殺し続けるべきか、それとも逃げ出すべきか、その判断すらつかない。

 私はただ木に背中を押し付けたまま固まっていた。

 

 待つこと数十秒。

 テオタイガーはこちらに来なかったが、まるで生きた心地がしなかった。高地の王者が去るまでの時間は一分にも満たなかったが、相当長い時間に感じた。

 

「……行きましたよ、お嬢様」

「そうみたいね」


 有り余る自然から、足りない酸素を補給する。酸素美味しいですわ。

 

「お嬢様が死亡フラグを建てたので、警戒して正解でしたね」

「あなたにも立てましょうか、死亡フラグ」

 

 本当は感謝すべきなのだが、エメロットが相手だとつい憎まれ口を叩いてしまう。まあ彼女は有能な従者なので、その辺は汲み取れるでしょう。

 というかわかれ。礼など言わないわよ。

 

「あっ、いましたよ」

 

 エメロットが指差したのは、テオタイガーが徘徊していた近辺の木々の一本。

 見上げると、枝の上に財布代わりの妖精猫がいた。お高く止まっていますわ。

 

「なんか、思いのほか汚いわね」

「確かに毛並みが悪い。まるでお嬢様」

 

 こみ上げる怒りをグッと抑える。

 先ほど助けられたばかり。クールダウンですわ。今の私は仏のフィフィーです。三度までは許しましょう。まあ、その先は保証しませんけどね。

 

 しかし、彼女の軽口は流すにしても、確かに毛並みが悪い。妖精猫は毬みたいな見た目と聞きましたが、毛並みは不揃いの上に傷んでいる。心なしか目つきも悪い。何ですのこの生き物。

 

「本当にお金になるのですか、この子」

「多少値段が落ちるでしょうが、腐っても妖精猫。腐っても御三家ですよ」

 

 ……二回目。私は静かにカウントした。

 

「どうぞ」とエメロットが前に手を差し出した。

 一体何を勧めていますの。まさか私に木を登れという気ですか。そういう面倒事を魔力で片付けてこその魔法少女でしょうが。

 

「全く。貴方という子は」

 

 猫はどんな高さからも着地できると聞いた覚えがあるので、安心して落とせますわ。

 私は上空に向けて弱風を吹かせた。後は空から貯金箱が落ちるだけだ。

 ――そうなる予定でしたわ。

 

「なっ、あの猫!」

 

 妖精猫が私の風を受け流した。

 驚くことに、あの猫は風属性の魔法を使った。原理は不明ですが、妖精猫の流した風に乗せられ、私が吹かせた風は方向を変えられた。

 

「妖精猫は簡単な魔法を行使できます。属性は瞳の色に現れる、とのことです」

 

 エメロットは手元の二冊目の書籍『妖精猫と生きる』を読みながら答える。

 もう何とでも共生して生きれば良いわ。

 

 だが有益な情報ですわ。翡翠の瞳は風属性ね。

 風を吹かせることを考慮して捕獲する必要がありますわ。

 そう考え、悠長に上を見上げていた私は足元をすくわれた。

 

「ひゃあ!」

 

 屈辱。足元を吹いた風にこかされた。

 転げた拍子に、地面を走る根っこにすねもぶつけた。地味に痛いのですが、何より私のプライドが痛みますわ。猫風情に好きにやられてたまるものですか。

 

 もう怒りましたわ。覚悟なさい。

 立ち上がると杖をおおきく振りかぶり、地面に叩きつける勢いで振り下ろす。

 

「この――野犬がッ!」

 

 あの黒髪の野犬を吹き飛ばした、最大風速の【突風】を妖精猫めがけて叩きつけた。小動物がざわめき、野鳥が飛び立つのが見える。

 ふははっ、猫風情が調子にのった報いですわ。

 

「なん……ですの」

 

 ありえない。突風をぶつけた筈の妖精猫は欠伸をして、前足で顔を掻いていた。

 さも何もなかったといわんばかりだ。

 

 動揺する私の足元に、再び風が吹いた。

 だが甘いですわね。一流に二度目はないですわ。

 私は一歩後ろに下がり、木の根に足を引っ掛けた。

 屈辱。二度目の転倒だった。

 

「……お嬢様、完全に遊ばれていますよ」

 

 あのエメロットの言葉が弱々しい。

 野良猫にも劣る主人に気を遣っている。止めなさい。なじるなら全力でやりなさい。いっそう惨めな気持ちになるでしょうが。

 

「私をフィロソフィア家の気高き魔法少女と知って愚弄するか。……いい度胸じゃないの」

 

 この妖精猫は、私が全身全霊を持って売り飛ばしあげますわ。

 落ちぬというなら、落ちるまで【突風】をふかすまで。落ちたが最後。私の生活費にしてさしあげますわ!

 

「お嬢様!」

「何よエメロット。人が燃えてるときに」

 

 肩を掴まれて振り返ると、グルルと低い獣の唸り声が聞こえた。

 遠目にゼブラ模様の虎がいた。いや一匹ではない。私が放った【突風】に刺激され、何匹もの野生が目を覚ましていた。

 

 前門も虎。

 後門も虎。

 トラ・トラ・トラですわ!

 

「くっ、一時退却ですわ」

「言われなくても」

 

 私とエメロットは杖にまたがり、上空へと逃げる。

 交差する木々を無理やりすり抜け、アウロイ高地の緑の天井を突き抜けた。

 

 領空を荒らされた野鳥たちが、私たちに続いて大量に空へと羽ばたく。があがあと騒がしい声を聞くと、あの日の屈辱までもが鮮明に蘇る。

 

「私は鳥も、猫も嫌いですわ――ッ!」

 

 この日を境にして、私と妖精猫の仁義なき戦いが始まった。

妖精猫との仁義なき戦いの記録

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2日午後:○妖精猫―✕お嬢様

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記録者:気高き従者エメロット

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