序章
「雪文あんたは雪女よ」
「まだ引っ張るんかい!!」
「引っ張るわよ大事なことだもの。雪文、これから話すことはあんたのこれからに関わる大切なこと。だからよく聞いて。」
思わず身がまえてしまう。母さんは間を置いて再び話しはじめた。
「始めにあなたの祖先、私のとも言えるかな。その祖先様は雪女だったの。祖先様はとても名高い雪女だったそうよ。でも今では雪女っていう種族は滅んでいるわ。というより妖怪という種族自体がこの世から消されてしまったのよ。あんた安倍晴明っていう人知ってる?」
「ああ。映画とかになってる有名なやつだろ?」
「彼は 清浄 という大掛かりな儀式を成功させ妖怪という種を滅ぼしたらしいわ。詳しくは分からないけどね。でもそんな中1妖怪が生き残ったわ。それが祖先様の娘よ。その娘はただの妖怪ではなかったの。人間と妖怪のハーフだったのよ。人間と妖怪が子を成すっていうのは妖怪社会では禁忌とされることだったみたいで、その娘以外は人間と妖怪の子はいなかったみたい。」
ふと疑問に思ったことを母さんにぶつけてみた。
「その娘はなんで 清浄とやらで無事だったんだ?」
「人間とのハーフだったからじゃないかしら?詳しくは分からないわね。」
「っで、その娘はその後どうなったんだ?」
「すぐに安倍晴明率いる人間たちに捕まったらしいわ。でも彼女は半分妖怪だけど半分は人間だった。彼女が殺される前に安倍晴明は考えて自分が育てることを申し出たそうよ。妖怪全てを滅ぼしたことへの罪滅ぼしだったのかもしれないわね。そうして続いてきたのが私たち一族っていうわけ。」
また疑問がわいた。
「ということは母さんも雪菜も雪女ってこと?」
「私と雪菜は雪女ではないわ。先祖様の娘、初代は既に妖怪の血を半分しかもってなかったわ。そして人間と子どもを成すたびに妖怪の血は薄れていく。そうして雪女として発現することもなくなり、私が生まれたときには妖怪の血がほぼなくなったみたいね。あと雪菜も雪女になることはないわね。雪女になるものは首すじに雪の結晶のようなアザがあるらしいけど雪菜と私にはなかったもの」
たしかに俺には首すじに雪の結晶のようなアザがあった。
「ということは母さんは俺が雪女になるって知ってたって言うこと?」
「あたり前じゃない。そんな楽しそうなこと。あんたが生まれた時に確認したわ。でも本当は半信半疑だったわ。でもこうして雪女になったあんたがいるんだから本当のようね」
「なんで俺だけ・・・」
「遺伝の神秘ね♡」
「遺伝で済ますな!!!」
わたくしこと桜井雪文、遺伝の神秘により雪女になった模様です。