ハズレスキル『品種改良』で成り上がりスローライフ~悪役貴族の第四子に転生した俺、役立たずだと弱小領地に追放されたのでチートスキルで貧困の村を最強の城塞都市に作り変えます~
――貴族、クロード家の所有する大聖堂。
今日は10歳になった俺、アンリ・クロードが『スキル鑑定』を受ける日だった。
数名の関係者に見守られながら、クロード家の第四子である俺はその場に立たされていた。
父であるジョージ・クロードは期待に満ちた瞳で俺の肩を叩く。
「アンリよ! 代々騎士の家系である我がクロード家に恥じぬ立派な『戦闘スキル』を発現させるのだぞ!」
「はい! 父上!」
神官は俺の目の前でスキル鑑定の呪文を唱えた。
「アンリ・クロード。スキルは――」
神官は鑑定結果を見て驚愕の表情を浮かべた。
「ひ、『品種改良』!?」
その結果に周囲はざわつく。
『品種改良』は一般的な農業スキルだが、ほぼ意味がないと言われている。
スキルを発動しても『数%の確率で、少しだけ実が大きくなる種ができるかも』という程度の補正。しかも、まともな成果が出るまでに50年、100年かかるため、「戦力外どころか、一生を無駄にする呪いのスキル」とまで思われている。
つまり、どこに出しても恥ずかしい立派な『ハズレスキル』である。
「そ、そんな……僕のスキルが……品種改良だなんて……」
膝から崩れ落ちると、俺は地面に手をつく。
しかし、その伏せた顔はニヤリと笑っていた。
(知ってました)
実は、俺は転生者だ。
生前はブラック企業からの帰り、働き過ぎで朦朧とした意識の中、川に飛び込んで溺れていた子犬を助けると俺はそのまま流されて無事死亡。
全く後悔はない、なんなら犬を救った自分を褒めてやりたい。
転生の女神が犬愛好家だったので、俺の善行を称えて魔王も真っ青の戦闘チートを与えて勇者にするというが、俺は頑なに拒否。
せっかく退職(死)できたのに、なんでまた仕事を押し付けられなきゃならんのか。
なので、生前夢見ていたスローライフな農家とかやりたいので「生産系のスキルをください」と「生まれなおしたらすぐに使えるようにしてください」の2つのお願いをしていたのだ。
結果として与えられたスキル『品種改良』は女神補正がかかってとんでもない性能になっていた。
試しに、品種改良で色々と作ってみたら――
・一日分の栄養が全て取れるリンゴ。
・一晩で大豪邸に成長する巨大カボチャ。
・岩をも切り裂く高圧水鉄砲キュウリ。
・全身が極上の高級肉になる豚……などなど。
どうやら、俺の品種改良は『本来は数万年かかる種の進化を、数秒で完結させてしまうスキル』らしい。
俺は生まれてからずっと、このスキルを隠れて使っていた。
バレたら確実に狙われるし、道具として利用されるからだ。
俺はこんな息苦しい貴族社会から抜け出して自由に生きたい。
(今度の人生こそは自分勝手で思い通りのスローライフを送ってやる……!)
転生の女神によると、クロード家の第四子に生まれることは変えられなかったので俺はどうにかここで無能として親に追放されたいのだ。
失望した父、ジョージは俺に言う。
「何という恥だ……もう、殺すしか……」
(待った、それは予定と違う! コイツ、思った以上にクズだった!)
俺は慌てて進言する。
「お、お待ちください! 父上! 追放っ! 追放で手をうちませんか!?」
「しかし……追放となるとお前のような恥が世間に出てしまうではないか」
その瞬間、側近が父上に耳打ちした。
「ジョージ様。北部の辺境の村『ネムリネ』をアンリに任せるのはどうでしょう?」
「村の管理をコイツに?」
「はい、あの村はすでに終わっております。作物も育たず、領民は飢えて死にかけています……アンリを領主に据えることで、管理の失敗の責任を全て擦り付ける事ができましょう」
「……ほぉ、なるほどな」
「しかも、村を襲う野党やモンスターも多く領民たちはクロード家への怒りも凄まじい。我らが手を汚さずともアンリを殺害してくれますし、そうなれば我らがあの村を滅ぼす口実にもなります」
「ふん、要らぬ村と要らぬ者を同時に消せるならこれ以上ない話だな」
(丸聞こえなんだよなぁ)
どちらにせよ、この話を受けなければ今殺されるので俺に選択肢はない。
父、ジョージは俺に言う。
「アンリよ。慈悲深い私からの提案だ。私の管理する『ネムリネ』の領主にお前を据える。その地で、住民たちと共に死――暮らすがよい!」
「はい! 承知いたしました!」
ひとまず、自分の首が繋がったことにホッとする。
それにしても、相変わらず最低な父親だ。
飢える領民をほったらかしにして、しかもその責任を息子に擦り付けて殺そうとするなんて。
コイツには、絶対に痛い目を見てもらおう。
教会の扉から出るときに、俺は父上に別れの挨拶した。
「では、父上。これからは《《俺無し》》で頑張ってくださいね」
「……何を言っておる? 早く消えるが良い」
「意味はそのうち分かりますよ。それでは……」
俺は扉を閉めて出て行った。




