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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

担保の夢

作者: らいか
掲載日:2026/05/01


【本文】

兄は、軽い顔で借金をしたらしい。


最初はただのパチンコだった。

勝てば返せる。そういう話だった。


でも、返せなかった。


気づいたときには、相手は普通の貸金じゃなかった。

名前も知らない、顔もよく見えない人たち。

ただ「返せ」という圧だけが、部屋の空気を変えていった。


そして、妹がいなくなった。


「担保にしたから」


兄はそう言った。

悪びれもせず、むしろ仕方ないだろ、とでも言いたげに。


意味がわからなかった。

人が担保になるわけがない。


でも、なるらしい。


探しに行くしかなかった。


どこにいるのかもわからないまま、ただ足を動かした。

現実感がなかった。夢の中みたいに、景色がずれていた。


その途中で、あいつに会った。


早乙女乱馬。


場違いなくらい軽い顔で、でも当たり前みたいに隣に立ってきた。

「助けに行くんだろ」って、当然のことみたいに言った。


現実じゃない。

でも、その時はそれでよかった。


一人じゃないと思えたから。


妹は、見つかった。


でも、それはもう「妹」じゃなかった。


身体に何かが埋め込まれていて、

呼吸も、目の動きも、どこかぎこちなかった。


「商品だから」


誰かがそう言った。


価値があるから、まだ残してあるだけ。

価値がなくなれば、処分するだけ。


その言葉が、やけに静かに刺さった。


助けようとした。


でも、方法なんてなかった。


力もないし、交渉もできない。

怒鳴っても、何も変わらない。


乱馬は戦った。

現実離れした動きで、何人かは倒した。


でも、それだけだった。


数が多すぎた。

仕組みが、深すぎた。


兄は、その日の夜に死んだ。


自分で終わらせたらしい。


「もう無理だから」


短いメッセージだけ残して。


ふざけてると思った。

全部置いて逃げただけじゃないかって。


でも、怒る先も、もう残っていなかった。


妹は、その翌日に処分された。


「担保が多すぎるから整理した」


そう言われた。


理由としては、それで十分らしかった。


何も残らなかった。


助けに行ったはずなのに、

動いたはずなのに、

全部、遅かった。


乱馬はいつの間にかいなくなっていた。


最初からいなかったみたいに。


帰り道だけが、やけに現実だった。


信号も、音も、人の声も、全部普通で、

何も起きていないみたいだった。


でも、確かに全部終わっていた。


私は、誰も救えなかった。


それだけが、はっきりしていた。


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