■第88話:接触⑩
戦いは。
続いている。
だが。
形が。
崩れていた。
■前線(中央消失)
「中央……消えました」
報告が落ちる。
もはや。
戦線ではない。
穴だ。
広がる。
埋まらない。
「……放置するな!」
レオナルトが叫ぶ。
だが。
声が届かない。
一拍。
遅れる。
それだけで。
誰も動かない。
「……くそっ」
■右翼
「単独で押せ!」
命令が飛ぶ。
兵が動く。
今度は。
個で。
噛み合う。
進む。
「いける――」
だが。
戻る。
無意識に。
揃う。
そして。
止まる。
「……またか」
■左翼
「補給、途絶!」
叫びが上がる。
ルートはある。
だが。
通らない。
遅れる。
一拍。
それだけで。
届かない。
「なんでだ……!」
■後方
「指揮系統、断裂寸前!」
「命令が届きません!」
「再編、不可能!」
一拍。
崩壊の数字。
だが。
まだ。
止まっていない。
■レオナルト
「……前に出る」
低く言う。
副官が驚く。
「閣下!?」
一拍。
「後方では回らん」
判断。
「現場で整える」
最後の手。
自ら。
噛み合わせに行く。
■前線(指揮介入)
レオナルトが入る。
命令を出す。
即座に。
正確に。
「右、半歩下げろ」
「左、合わせるな」
動く。
今度は。
噛み合う。
進む。
「……戻した」
一瞬。
戦線が。
形を取り戻す。
■その瞬間
全体が。
揃う。
そして。
ズレる。
戻したはずの形が。
一瞬で崩れる。
「……は?」
理解が遅れる。
それだけで。
崩壊が広がる。
■観測(レグナス側)
「前線指揮、介入確認」
ミレアが言う。
「一時的に回復」
一拍。
「再崩壊」
ガイラスが笑う。
「頑張るなぁ」
カイルが震える。
「……どうやってもダメなんですか」
ヴェルドが答える。
「どうやっても同じだ」
■ルナたち
「……届かないね」
ルナが言う。
「どこまでやっても」
レオンが笑う。
「限界が決まってる」
エリナが小さく呟く。
「……それって」
一拍。
ルナが言う。
「最初から決まってる」
■他国視点(傭兵団)
「まだ終わらねぇのかよ」
男があくびをする。
「レグナス相手に長引きすぎだろ」
別の男が笑う。
「宰相がどうとか言ってたが」
一拍。
「所詮、冒険者上がりだろ?」
「戦争は別モンだっての」
軽口。
誰も疑わない。
■レグナス
「報告」
「ヴァルハイン、戦闘継続」
一拍。
「問題ない」
それだけ。
戦いは。
壊れている。
だが。
終わらない。
崩壊寸前。
それでも続く。
それが。
この戦場だった。




