第7話:評価
城内の空気が、変わっていた。
昨日までとは、明らかに違う。
廊下を歩けば、兵たちの視線が集まる。
恐れでも、軽視でもない。
――理解できないものを見る目だ。
「……あれが宰相か」
「戦ってないんだろ?」
「それで勝ったって……」
小さな声が、あちこちから聞こえる。
気にすることではない。
事実として。
戦は終わった。
それだけだ。
玉座の間。
王と、数名の重臣が集まっていた。
「改めて言おう」
王が口を開く。
「今回の戦、見事であった」
「……当然の結果だ」
短く返す。
ざわめきが走る。
「本当に、戦わずに勝ったのか……」
「信じられん」
重臣たちが囁く。
「疑うなら、もう一度戦を起こすか?」
静かに言う。
全員が黙った。
それが答えだ。
「……いや」
王が首を振る。
「その必要はない」
そして、ゆっくりと立ち上がる。
「本日をもって」
一歩前へ出る。
「宰相カインに、全軍の指揮権を委ねる」
ざわめきが爆発した。
「陛下!?」
「それはあまりに――!」
「異論はあるか」
王の声が、場を制する。
誰も、何も言えない。
結果が、すべてを物語っている。
「……問題ない」
バルガスが、低く言った。
全員の視線が集まる。
「俺は現場で見た」
「敵は、崩れていた」
「……理解はできん」
正直な言葉だった。
「だが」
一歩、こちらを見る。
「結果は出ている」
「ならば従う」
短く、そう言った。
それで、十分だった。
「……決まりだ」
王が頷く。
これで。
すべての権限が、こちらに集まる。
だが。
やることは変わらない。
「無駄な戦はするな」
それだけを言う。
「守るべきは、民だ」
誰も、反論しなかった。
会議が終わる。
外に出ると、レオンが待っていた。
「よぉ、宰相様」
「やめろ」
「はは、似合ってるぜ」
軽く笑う。
「で?」
「これからどうすんだ」
「次は来る」
「さっきのは、ただの前触れだ」
「……だろうな」
レオンは肩を回す。
「なら、準備だな」
「ああ」
短く頷く。
戦は終わった。
だが。
戦争は、これからだ。
――そして。
その噂は、すでに外へ広がり始めていた。
“戦わずに勝つ宰相”
その存在が。
周囲の国にとって、何を意味するのか。
まだ誰も、理解していない。
――だが。
すぐに知ることになる。




