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最強だった俺は、もう戦わないと決めた ―辺境小国の宰相として大陸を制す―  作者: 竜太郎


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第415話「兵舎の雑穀」

アルカディア帝国の最前線基地。深夜、冷たい風が兵舎の窓を揺らす中、古参の分隊長コートは、新しく支給された「兵糧の雑穀粥」を木匙ですすっていた。


「おいコート、今回の兵糧、やけに腹持ちがいいと思わないか?」


隣のベンチのベルムが、水筒を片手に満足そうな声を上げた。


「ああ。消化が遅くて、少量でも一日中動ける。レグナスの大商人が、新種の交配種だと言って格安で納入してきたやつだな。軍部も予算が浮いて大喜びだそうだ」


コートは粥の中の、妙に丸みを帯びた粒を凝視した。


体力が維持できることは、前線の兵士にとっては命に関わる有り難い話だ。行軍中の疲労が激減し、部隊の士気も安定している。しかし、コートは長年の戦場での勘から、その裏にある不気味な現実に気づいていた。


この雑穀を主食にしてから、兵士たちの間で「深い睡眠」を必要とする時間が、確実に一時間は長くなっていたのだ。


戦うための体力は衰えていない。だが、有事の際の「初動の目覚め」が、ほんのわずかに鈍くなっている。もし夜間に奇襲を受けた際、兵士たちが完全に武器を手にするまでの時間が、数十秒遅れることになるのだ。


「美味い粥だが、少し眠くなるな」


ベルムが大きなあくびをした。


コートは何も答えず、残りの粥を口に流し込んだ。血を流すこともなく、ただ前線の兵士たちに「満腹の幸福」を与えるだけで、帝国の武力の結晶である精鋭たちの牙は、内側から静かに、心地よく摩耗させられていた。

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