第15話:三点防衛
選んだのは、三つ。
北の要衝、岩峡砦。
補給の中継点、リゼル平原。
そして、王都へ繋がる橋梁都市――エルミナ。
他は、捨てた。
「撤退完了」
報告が上がる。
「住民も移動済みだ」
バルガスが言う。
「よくやった」
短く返す。
犠牲はない。
それでいい。
「で」
バルガスが腕を組む。
「どこが本命だ」
「全部だ」
「……は?」
「帝国は“選ばせた”」
「なら、次は“崩す”」
地図を指で叩く。
「三点同時に来る」
「戦力は分散しているが」
「一つでも崩れれば終わり」
「……つまり」
「全部、守るしかない」
静寂。
「無茶だな」
「そうでもない」
淡々と答える。
「守る方法を変えるだけだ」
その時。
「伝令!」
「帝国軍、三方向より進軍開始!」
来た。
「岩峡砦、接敵!」
「リゼル平原、接敵!」
「エルミナ橋、敵先鋒確認!」
三点同時。
予想通りだ。
「……どうする」
バルガスが低く問う。
「簡単だ」
一枚の書類を差し出す。
「これは?」
「敵の補給経路だ」
「三つに分けたのは、こちらだけじゃない」
「向こうもだ」
「つまり」
「一つ崩せば、全体が崩れる」
「……どこだ」
「リゼル平原」
即答する。
「ここは補給が薄い」
「速度重視の部隊だ」
「叩けば、止まる」
「だが」
「他の二つはどうする」
「耐えろ」
短く言う。
「時間を稼げ」
「……それだけか」
「ああ」
「それだけでいい」
バルガスは一瞬、目を細めた。
そして。
「……了解だ」
迷いはなかった。
戦が始まる。
岩峡砦。
狭い地形を活かし、防衛戦が展開される。
数で押されるが、崩れない。
エルミナ橋。
橋を封鎖し、敵の進軍を遅らせる。
犠牲は出るが、持ちこたえる。
そして。
リゼル平原。
「今だ」
小さく呟く。
伏せていた部隊が、一斉に動く。
狙うは、補給。
前線ではない。
後ろだ。
「――焼け」
指示が飛ぶ。
火が上がる。
荷車が崩れる。
馬が暴れる。
混乱。
統制が崩れる。
「……効いたな」
バルガスが低く笑う。
「当然だ」
「腹が減れば、戦えない」
そして。
数時間後。
「リゼル平原、敵撤退!」
報告が上がる。
「続けて、岩峡砦――敵後退!」
「エルミナ橋――敵進軍停止!」
三点すべて。
止まった。
「……やったな」
バルガスが息を吐く。
「いや」
首を振る。
「まだだ」
「これは“選別”だ」
「向こうは、まだ見ている」
静かに言う。
「次が来る」
その言葉は。
確信だった。
戦は、終わっていない。
むしろ。
ここからが、本番だった。




