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第13話:止める者

捕らえた者は、二十七人。


 


 商人、農民、兵。


 


 立場は様々だ。


 


 だが共通しているのは一つ。


 


 ――外から流された情報に、反応した者。


 


 


「……全員、関与を認めています」


 


 報告が上がる。


 


 


「処分は」


 


 バルガスが問う。


 


 


 部屋の空気は重い。


 


 


 当然だ。


 


 


 これは戦だ。


 


 だが。


 


 相手は、民でもある。


 


 


 


「処刑」


 


 


 即答だった。


 


 


 誰も、言葉を発しない。


 


 


 


「……全員か」


 


 


 王が静かに問う。


 


 


「ああ」


 


 


「例外はない」


 


 


 


 それが最適だ。


 


 


 見せしめ。


 


 再発防止。


 


 内部統制。


 


 


 すべてを満たす。


 


 


 


「……それが、一番いいのか」


 


 


 


「いい」


 


 


 迷いはない。


 


 


 


「一人残せば、また広がる」


 


 


 


「ならば、断つ」


 


 


 


 ただ、それだけの話だ。


 


 


 


 沈黙。


 


 


 


 誰も、反論できない。


 


 


 


 正しいからだ。


 


 


 


 


「……準備を」


 


 


 バルガスが、低く言う。


 


 


 


「待って」


 


 


 


 声がした。


 


 


 


 振り向く。


 


 


 


 扉の前に、ルナが立っていた。


 


 


 


「……ルナ」


 


 


 


「今の、聞いた」


 


 


 


 まっすぐな目。


 


 


 


 逃げない。


 


 


 


 


「処刑って、言ったよね」


 


 


 


「ああ」


 


 


 


「必要だ」


 


 


 


 


「本当に?」


 


 


 


 


 問いが、落ちる。


 


 


 


 


「必要だ」


 


 


 


 繰り返す。


 


 


 


 


「これ以上広げないために」


 


 


 


「ここで断つ」


 


 


 


 


「それが、一番多くを救う」


 


 


 


 


 感情はない。


 


 


 


 ただの、最適解。


 


 


 


 


「……それ」


 


 


 


 ルナの声が、わずかに震える。


 


 


 


 


「前と同じだよ」


 


 


 


 


 ――。


 


 


 


 


「数で見てる」


 


 


 


 


 心臓が、わずかに揺れる。


 


 


 


 


「……違う」


 


 


 


 


「違わない」


 


 


 


 


 即答だった。


 


 


 


 


「何人助かるかで決めてる」


 


 


 


 


「誰が死ぬかじゃなくて」


 


 


 


 


 


 言葉が、刺さる。


 


 


 


 


 


 昔と同じ。


 


 


 


 


 


 あの時と。


 


 


 


 


 


「……それが、最善だ」


 


 


 


 


 


 絞り出すように言う。


 


 


 


 


 


「違う」


 


 


 


 


 


 一歩、近づく。


 


 


 


 


 


「それは“楽なやり方”だよ」


 


 


 


 


 


 息が止まる。


 


 


 


 


 


「全部まとめて切った方が、考えなくていいから」


 


 


 


 


 


「悩まなくていいから」


 


 


 


 


 


「……違う」


 


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 


 否定しきれない。


 


 


 


 


 


 


「カイン」


 


 


 


 


 


 名前を呼ばれる。


 


 


 


 


 


 


「それ、昔の顔だよ」


 


 


 


 


 


 


 ――完全に、止まる。


 


 


 


 


 


 


 あの時。


 


 


 


 


 


 


 命を切り捨てた時の。


 


 


 


 


 


 


 自分と同じ顔。


 


 


 


 


 


 


「……」


 


 


 


 


 


 


 言葉が出ない。


 


 


 


 


 


 


 


「戦わないんでしょ」


 


 


 


 


 


 


 ルナが言う。


 


 


 


 


 


 


「だったら」


 


 


 


 


 


 


「同じこと、しちゃだめでしょ」


 


 


 


 


 


 


 


 静かに。


 


 


 


 


 


 


 だが確実に。


 


 


 


 


 


 


 何かが、止められる。


 


 


 


 


 


 


 


「……どうする」


 


 


 


 


 


 


 王が、低く問う。


 


 


 


 


 


 


 


 判断を求めている。


 


 


 


 


 


 


 


 視線を落とす。


 


 


 


 


 


 


 


 二十七人。


 


 


 


 


 


 


 


 切れば、楽だ。


 


 


 


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 


 


 


「……分ける」


 


 


 


 


 


 


 


 言葉が、出た。


 


 


 


 


 


 


 


「主導した者と」


 


 


 


 


 


 


 


「流されただけの者を」


 


 


 


 


 


 


 


 


「主犯は処刑」


 


 


 


 


 


 


 


「それ以外は拘束」


 


 


 


 


 


 


 


「再利用する」


 


 


 


 


 


 


 


 


 完全な最適解ではない。


 


 


 


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 


 


 


 それでいい。


 


 


 


 


 


 


 


「……甘いな」


 


 


 


 


 


 


 


 バルガスが呟く。


 


 


 


 


 


 


 


「そうだな」


 


 


 


 


 


 


 


 否定しない。


 


 


 


 


 


 


 


「だが」


 


 


 


 


 


 


 


 


「それでいい」


 


 


 


 


 


 


 


 


 静かに言う。


 


 


 


 


 


 


 


 


 ルナの方を見る。


 


 


 


 


 


 


 


 


 少しだけ、笑っていた。


 


 


 


 


 


 


 


 


「……それでいい」


 


 


 


 


 


 


 


 


 同じ言葉を、繰り返す。


 


 


 


 


 


 


 


 


 戦わない。


 


 


 


 


 


 


 


 


 その意味を。


 


 


 


 


 


 


 


 


 もう一度、思い出す。


 


 


 


 


 


 


 


 


 切り捨てるだけじゃない。


 


 


 


 


 


 


 


 


 守ること。


 


 


 


 


 


 


 


 


 それもまた、戦いだ。


 


 


 


 


 


 


 


 


 ――そして。


 


 


 


 


 


 


 


 


 その選択を。


 


 


 


 


 


 


 


 


 間違えないために。


 


 


 


 


 


 


 


 


 止めてくれる存在が、いる。


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