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第12話:再編

城の会議室。


 


 机の上には、書類が山のように積まれていた。


 


 税収、人口、兵の数、食料備蓄。


 


 どれも、目を覆いたくなる数字だ。


 


 


「……終わっているな」


 


 


 小さく呟く。


 


 


 王も、バルガスも、何も言わない。


 


 


 言えない。


 


 


 事実だからだ。


 


 


 


「まず、税を変える」


 


 


 静かに言う。


 


 


「上げるのか?」


 


 


 王が問う。


 


 


「下げる」


 


 


 


「なっ――」


 


 


 バルガスが声を上げる。


 


 


「この状況でか!?」


 


 


「だからだ」


 


 


 


 書類を一枚、机に置く。


 


 


 


「今の税率では、民が死ぬ」


 


 


 


「死ねば、税は入らない」


 


 


 


「ならば、生かす」


 


 


 


「それだけだ」


 


 


 


 単純な理屈だった。


 


 


 


 だが。


 


 


 


 誰も、それをやっていない。


 


 


 


 


「……短期的には、さらに苦しくなるぞ」


 


 


 王が言う。


 


 


 


「構わない」


 


 


 


「どうせ、このままでは終わる」


 


 


 


「ならば、変えるしかない」


 


 


 


 


 視線を上げる。


 


 


 


「次に、兵だ」


 


 


 


 


「三割、削減する」


 


 


 


 


「は!?」


 


 


 バルガスが立ち上がる。


 


 


 


「兵を減らすだと!?」


 


 


 


「無駄が多すぎる」


 


 


 


 淡々と言う。


 


 


 


「食わせるだけの兵はいらない」


 


 


 


「戦えない者は、別の役割に回す」


 


 


 


 


「農地の再生、輸送、補給」


 


 


 


「やることはいくらでもある」


 


 


 


 


「兵は減るが」


 


 


 


「国は回る」


 


 


 


 


 沈黙。


 


 


 


 


「……なるほどな」


 


 


 バルガスが、ゆっくりと座り直す。


 


 


 


「戦えない兵に、無理をさせるよりはいい」


 


 


 


 


「そういうことだ」


 


 


 


 


 


「最後に」


 


 


 


 


 地図を広げる。


 


 


 


 


「補給線を再構築する」


 


 


 


 


「今の流れは非効率すぎる」


 


 


 


 


「ここを通せば、三日短縮できる」


 


 


 


 


 指でなぞる。


 


 


 


 


「その分、備蓄が増える」


 


 


 


 


「つまり」


 


 


 


 


「次の戦で、余裕が生まれる」


 


 


 


 


 


 静かな説明。


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 それは、すべて繋がっていた。


 


 


 


 


 税。


 


 兵。


 


 補給。


 


 


 


 すべてが、一つの形になる。


 


 


 


 


「……変わるな」


 


 


 王が呟く。


 


 


 


 


「この国は」


 


 


 


 


「ああ」


 


 


 


 


「変える」


 


 


 


 


 短く言う。


 


 


 


 


 


 その時だった。


 


 


 


 


「報告!」


 


 


 


 


 扉が開く。


 


 


 


 


「国内各地で、不審な動きが――」


 


 


 


 


 一瞬、目を細める。


 


 


 


 


 ――来たか。


 


 


 


 


「流言が広まっています」


 


 


 


 


「宰相は危険だと」


 


 


 


 


「このままでは国が崩壊すると」


 


 


 


 


 


 沈黙。


 


 


 


 


 


「……早いな」


 


 


 


 


 小さく呟く。


 


 


 


 


 


「どうする」


 


 


 王が問う。


 


 


 


 


 


「放置すれば、民の不安が広がるぞ」


 


 


 


 


 


「問題ない」


 


 


 


 


 


 即答する。


 


 


 


 


 


「むしろ、好都合だ」


 


 


 


 


 


「……何?」


 


 


 


 


 


「炙り出せる」


 


 


 


 


 


「誰が、敵か」


 


 


 


 


 


 静かに言う。


 


 


 


 


 


「全員、捕らえろ」


 


 


 


 


 


「例外はない」


 


 


 


 


 


 その言葉は。


 


 


 


 


 


 あまりにも冷たかった。


 


 


 


 


 


「……容赦はしないのか」


 


 


 


 


 王が問う。


 


 


 


 


 


「しない」


 


 


 


 


 


 迷いはない。


 


 


 


 


 


「これは戦だ」


 


 


 


 


 


「見えないだけで」


 


 


 


 


 


 


 沈黙。


 


 


 


 


 


 


 かつての自分。


 


 


 


 


 


 命を数で見る、あの感覚。


 


 


 


 


 


 


 それが、戻ってくる。


 


 


 


 


 


 


 だが。


 


 


 


 


 


 


「……必要だ」


 


 


 


 


 


 


 小さく、呟く。


 


 


 


 


 


 


 戦わないために。


 


 


 


 


 


 


 切り捨てる。


 


 


 


 


 


 


 それが。


 


 


 


 


 


 


 今の、自分の戦い方だった。

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