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第89話 陰謀の国で、会議は踊る

前川以外にこの国の情報を聞くことが出来そうだ。

よそから来た前川なんかより詳しいだろうし、話をしてみるか。

 馬に乗った若い男――チング王子が、前川を見つけて目を輝かせた。


「やっぱり勇者様じゃないですか!

 ドラゴン討伐からのお戻りでしたか!

 実は、アガス将軍もドラゴンを捕獲に行ったのですが、向こうでお会いになりませんでしたか?」


 前川は、嫌な汗をかきながら笑顔を作る。


「い、いや。

 まったく、全然、あっていません!」


 声が裏返っている。

 余計なことを言われたくない前川は、必死に話を切ろうとする。

 アガス将軍なら襲い掛かってきて返り討ちに合いました。などと言えるわけがなかった。


「そうですか……行き違いになったのかな?

 ところで勇者様。

 あそこでこちらを見ている者は?」


 チング王子が指差した先には――俺。


(おい、なんでアイツ俺を指差すんだ?)


 ヒロシは心の中で毒づいた。


「あ~、アレは部下です。

 物乞いをしていたので施しをしてやったら、懐きましてね。

 仕方なしに部下にしてやったのです」


 前川がヤレヤレと肩をすくめる。


「流石は勇者様、お優しいお方だ!」


 チング王子は感動していた。

 それに気を良くした前川は当然のように調子に乗り始める。


「見てください、あの品の無い顔を!」


 前川がヒロシを指差す。


「なんだ? 前川の野郎まで俺を指差しやがった」


 ヒロシはムッとした。


「無知なる者を導くのも勇者の務め」


 前川がキリッとした顔で言うと、チング王子はさらに感銘を受けた。


「確実に俺への誹謗中傷が行われている気がする」


 ヒロシは歩行速度を上げる。


「……勇者様、私も助けてはいただけないでしょうか……」


 チング王子が絞り出すように言った。


 前川は一瞬で商売モードの顔になる。

 面倒事に巻き込まれるなら、対価として金をもらうのは当然だと行動に出る。


「顔をお上げください王子。

 この勇者アキラも王子をお助けしたいのですが……

 私もああいう連中を養わねばならぬ身!」


 チラチラと王子の反応を伺う前川。


「も、勿論、お礼はさせていただきます!」


 チング王子が慌てて言うと、前川の顔にいやらしい笑みが浮かんだ。

 まいどあり……


 その瞬間――


 前川の視界に、ヒロシが近づいてくるのが見えた。


「不味い!」


 前川はチング王子に少し待つようにお願いすると、全力ダッシュでヒロシの元へ。



「ヒロシさん、どうしたんです?」


 息を切らしながら前川が聞く。


「いや、知り合いだろ?

 俺も挨拶しとこうかと思って」


「良いです! 大丈夫ですからぁ!」


 前川が必死にヒロシを止める。


「何だよ、変だぞ?」


「彼は……可哀想な奴なんです!

 そっとしてやってください!」


「意味がわからん」


 ヒロシは前川を突き飛ばし、チング王子へ向かった。


「やばい! 王子に何かあったら、俺がこの国に殺される!」


 この男は常識が通じない人間だ。

 何をしでかすかわからないと前川は震えながら思った。


 そして――


「こうなったら……!」


 前川は鼻に指を突っ込んだ。


「これを喰らいたくなかったら戻ってください!」


 指先には鼻くそグレープ味。

 前川の異世界転移特典の能力、鼻くそがグレープ味になるというものだ。

 だが、この場合ヒロシに対するおもてなしの意味など無い。

 脅しとして鼻くそを使っていた。

 それもそうだ。

 他人の鼻くそを食いたいなどと思う人間などほぼいないだろう。


ガッ!


 ヒロシは冷静に前川の手首を掴んだ。


「えっ」


 前川の顔が固まる。


「何を考えとるかぁ!」


バチィンッ!


 ヒロシのビンタが炸裂し、前川は鼻血を出して倒れた。


「貴様! 勇者様に何をする!」


 チング王子が剣を抜いて突進してくる。


「通り魔?!

 いきなり刃物を振り回しやがって!」


 ヒロシがチング王子から必死に距離をとると軽キャンからレイラとプロムが飛び出した。


ガッ!


 王子、瞬殺。



 気づけば、チング王子は地面に転がっていた。


「前川が泣いて頼むからこれぐらいで済ませてるけど、暴漢だぜコイツ。

 人に向かって刃物を振り回すとか、イカれてる」


 だが――


「王子だって?

 ……最悪の出会いじゃねぇか」


 ヒロシは倒れてるチング王子に急いで回復薬を飲ませた。


 同時に、

(まぁ、使える駒ではあるな)

 とも思った。



 王宮に行く前に作戦会議をすることにした。

 無策で突っ込むほど俺たちはバカじゃない。


 輪になって座る一同。

 ミロースとヘリウスは遠くでビールを飲みながら

 早く終われという顔をしている。


 つまんないだろうけど我慢しろ。

 一緒に行きたいって言いだしたのが自分たちだから声に出してまでは言ってこないのは助かるけど。


「で、チンコ王子、ギナの件だが」


「チングだ」


 王子が即ツッコミ。


「ギナは、ある日セガル王国の魔導科学者を連れて我が国に来ました……」


 チング王子が説明を始める。


「でも、そんな怪しい奴なのに、なんで信用してるの? チンコ王子」


「チングだ!」


 キャスカの素朴な疑問に、王子がまたツッコむ。


「キャスカ、もう一度チンコ王子と言ってご覧」


 ルファスが興奮気味に迫る。


「ライカ、チンコ王子と言ってご覧」


 バンまで参戦。


 ライカは真っ赤になりながらバンの耳元で囁く。


「ち、チンコおうじ……」


「ウヒョウー!」


 バンが走り去った。


(何やってんだあいつ)


 頭がクラクラしてくる。


「ところで、チャングム王国の名物料理は?」


 ウィズが真剣に聞く。

 本当に、なんだお前たち。


「今それ関係ないだろ!」


 流石に言って止めた。


「みなさん、チング王子をバカにしないでください!」


 前川が必死に言う。


「王子!

 王子の味方は私だけです!

 ですので、お礼の件も――」


 チング王子の前川を見る目が完全に【うさんくさい奴を見る目】になっている。


 作戦会議とは……?


 ヒロシは頭を抱えた。

 これ以上やっても時間の無駄だ。


「会議終わり!

 休憩の後、出発する!」


 強制終了した俺は、レイラとプロムを連れて休憩に入る。

鼻くそ野郎が鼻くそで襲い掛かってきた時は焦ったが、この国の王子と知り合えた。

これで、この国の責任者にビシッと言いやすくなった。

王子がいるから城に簡単に入れるだろうしな。

ところで、会議とは?

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