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第60話 帝国の動きとギルド再開

セガル王国でやるべき事は、あらかた終わった。

後は、自分たちの用事を済まして次の冒険に向う事にしよう。

◆ ヴァルファ帝国ーー


 皇帝の城では、今日も淡々と定例報告が続いていた。

 広い謁見の間に響くのは、重臣たちの声と紙をめくる音だけだ。


「……次に、セガル王国の件に移りますが、王が消息不明で、現在、治安維持にゼノス王国軍が駐留中との連絡がありました」


 報告を受けたヴァルファ14世は、玉座に深く腰掛けたまま、興味なさそうに片眉を上げるだけだった。


 辺境国同士の揉め事など、帝国にとっては砂粒ほどの価値もない。

 皇帝は、まるで「昼飯の献立でも聞いているのか?」という顔で報告を聞き流していた。


「また、セガル王国ですが、密偵より、我が帝国領への侵攻を企てていたとの報告があった為、周辺に兵を派遣しておりましたが……この状態では、その心配もないと思われます」


 重臣が続ける。


「そこで、防衛の為に配備していた軍を、戦闘が続くグラナス高原へ移したいとの要望が来ております。

 いかがいたしましょう、皇帝陛下?」


 宰相が要望書を持って皇帝の横へ進み出る。


 皇帝は書類を受け取ると、内容を読むこともなく、サラリとサインをして宰相に返した。

 宰相は深く頭を下げ、元の位置へ戻る。


「皇帝陛下より、セガル王国周辺に派遣中の兵をグラナス高原への移動を許可する。次の報告者は前へ!」


 宰相の声が響き、重臣たちが次々と前に進み出る。


 ――帝国は、今日も変わらず大きく、そして面倒くさいほど無感情だ。



◆ セガル王国ーー


 俺達は、軽キャンが突っ込んで穴の空いた冒険者ギルドにいた。


 ここでキメラ兵との戦闘があったことを思い出す。

 ルファスやレイラ、ウィズたちと一緒に戦ったな。

 ……まあ、俺はバンの後ろにいただけなんだが。


 セガル王国領の他地域から派遣されたギルドマスターと職員たちによってギルドが再開されたという報告を受けて俺たちは来たのだ。


「ここのギルド職員がセガル王国と組んで、多数の冒険者の命を奪った事……誠に申し訳なかった」


 新任のギルドマスターが、俺達に深々と頭を下げた。


「気にするなとは、言えない。

 沢山の冒険者たちが犠牲になったんだ。

 そのことを忘れないでギルドの再建を頼みます」


 ギルドと国が組んで起きた悲劇を、二度と繰り返してほしくない。

 再建を担う新任ギルドマスターも大変だとは思うが、当然の責務だ。


「ああ、忘れはせん。

 国と組んで自主独立の精神を失ったこのギルドを、本来の形に戻すことを約束させてもらおう。

 お前たちには、本当に世話になった。ありがとう」

 

 ギルドマスターが改めて頭を下げてきた。

 犠牲者の事を思うと複雑な気持ちだが、それが何よりの供養になるのだろう。


「では、依頼されていたランク申請の件だが……」


 ギルドマスターは書類を手に取り、俺達を見た。


「ノガミ達がギルドの信用を守る為に、不正を働いたギルドの者を処分してくれたこと。

 本来の力の無いドラゴンとはいえ、ドラゴンを多数倒した実力……

 それらを鑑みて、ランクFからランクCにランクアップだ」


「やったな、ヒロシ!

 普通ランクアップって一段階ずつ上がるのに、三段階アップだぜ!」


 ウィズが興奮して言ったが、そうなのか?

 全然仕組みがわからない。

 だけど、そういう事なら凄いじゃないか。


「本当なら実力的にAランクでもおかしくは無いと思うのだが……申し訳ない、私の力不足だ」


 ギルドマスターは再び頭を下げた。


「三段階アップなら十分凄いじゃないか。

 その先は、また頑張りゃいいんだから」


 俺達は納得してランクCの冒険者証を受け取った。

 レイラ、プロム、ルファス、キャスカも喜んでいる。

 それが一番嬉しい。


「シルバーファングのメンバーは、文句なしでAランク昇格だ」


 ギルドマスターの言葉に、ウィズ達の肩が震えた。


「いや、ちょっと待て!

 お前ら……シルバーファングってパティ―名だったの?」


「……最初の顔合わせの時に言ってましたよ?」


 ルファスが首をかしげて言ったので、俺は黙った。

 一緒にドラゴン討伐に行った他の冒険者パーティーの名前も全く覚えていないし、大丈夫か俺。


「いや、知ってたし」


 とりあえず言っておいたが、残念な人を見るような目で見られた。


「俺たちが、Aランクに……」


 Sランクはほぼ存在しないらしいので、Aランクは事実上の最高ランク。

 それになれたんだな、ウィズ。


「良かったな、Aランクになりたいって――」


 ウィズを見ると――泣いていた。


 今までどれだけ苦労してきたのか。

 どれだけ悔しい思いをしてきたのか。

 その全部が、今ようやく報われたんだろう。


 茶化そうと思ったが……無理だった。


「……よかったな、ウィズ」


 そう言うと、ウィズは涙を拭いながら笑った。


「あ、ああ。ありがとな、ヒロシ」


 その笑顔は、今まで見たどの笑顔よりも一番の笑顔だった。


 ――それなのに。


 ウィズが、あんなことを言い出すなんて……

俺たちのパーティとウィズ達のパーティは揃ってランクアップを果たしたと。

やったなウィズ。

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