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第59話 セガル王国の後処理

戦いが終わった。

シリアスな展開で仲間の心も疲弊しているのが伝わってくる。

目処も立ってきたし、引き継ぎも順調だからそろそろ出発しようかな。

 セガル王国に来てから、もう数週間が経った。


 その間、俺達はミロースの子供――ドラゴン達をひたすら狩り続けた。

 本来のドラゴンほどの力は無いとはいえ、数が多いと面倒だ。

 それでも、ミロースの気持ちを思えば、手を抜く気にはなれなかった。


 王を失ったセガル王国は混乱するかと思われたが、意外にも落ち着いている。

 ゼノス王国軍とノガーミ商会が治安維持に入っているおかげだ。


 なぜ彼らがここにいるのか?

 それは、俺が王都へ向かう前に魔導通信で派遣を要請していたからだ。

 王様を捕まえた後の混乱を最小限に抑えるための判断だったが、今となっては正解だったと思う。


 他国の軍が入った事による反発を懸念していたが、今のところ目立った反発は無い。

 民にとって、支配者が誰であろうと関係ないのだろう。

 治安が良く、飯が食えて、生活が回ればいい。それが一番大事な事なんだ。

 その点、ゼノス軍とノガーミ商会の働きは優秀だった。


 周辺領地の貴族達も、地位の保証や商会からの資金援助が効いたのか、今のところ不穏な動きはない。

 むしろ、俺達や治安維持軍の高官に媚びを売りに来る始末だ。


 出世のチャンスを掴もうと必死なのはわかる。

 だが、俺自身に言われても正直めんどくさい。


 俺は全部、治安維持軍に丸投げした。

 ゼノス国王と上手く調整してくれれば、それでいい。

 別に俺がこの国で権力を握りたいわけでもないからな。


 丘の上。

 ここからセガル王国の町がよく見える。


 草の上に腰を下ろし、俺はぼんやりと町並みを眺めながらタバコを吸っていた。


「今のところ、特に混乱もなくこれましたね」


 隣に腰を下ろしたルファスが、静かに声をかけてくる。


「そうだな」


 俺は町を見下ろしながら答えた。


「ヒロシ、この国もだいぶ落ち着いてきたね」


 後ろからレイラが顔を出す。

 その後ろには、プロムやキャスカ、ウィズたちの姿もあった。


「そうだな、レイラ。

 これからこの国は、少しはましになるんじゃないか」


「バカの癖にかっこつけてますわ」


 キャスカが腕組みして言う。


「フフ、そうかもな」


「気持ち悪い笑顔ですわ。

 お兄様、ヒロシがバカの癖に私をいやらしい目で――」


「誰がいやらしい目だよ!

 誹謗中傷、良くない、良くないよ!」


「そうですよ、キャスカさん。

 ヒロシ様はレイラ様と私をいやらしい目で見ているんです!

 昨日の夜も私を――」


「うん。ありがとうプロム。

 そして、ちょっと黙ってて」


 なんで毎回プライベートを口走るんだ、こいつは。


「ヒロシ、お前がしんみりしてるなんて柄じゃねぇよ」


「柄じゃないって……あのな、ウィズ」


 ウィズは笑っている。何も考えていないんだろう。


「ドラゴンの討伐依頼に来たのに、国の体制を変えちまったんだからな」


「バンの言うとおりだぜ!

 こんな無茶苦茶な奴に出会うなんて思ってなかった」


 ウィズが俺を見て言ったが、無茶苦茶って俺の事か?

 こんな常識人の俺に何を言っているんだろう。


「毎日忙しかったですぅ」


「フィリーも頑張ってくれたからな。

 あとは治安維持軍に引き継いで終わりだ」


 珍しく俺も頑張ったからな。


「でも、ノガミさんが治安維持の事まで考えていたなんて思ってなかったですよ」


 カイが感心してくれた。

 そうか。

 ちゃんとわかってくれてて嬉しいよ。


「カイ、あんまり褒めるとつけあがるのですわ」


「ヒロシ様は凄いんですからね。

 二人を相手に毎晩――」


「プロム、その辺で」


 本当に油断も隙もない。


「でも、最初は観光がてらにドラゴン討伐に来たのに、こんな事になるなんてね」


「そうだよなぁ、レイラ」


「そうよ、バカの口車に乗ってとんでもない事になったのですわ」


「キャスカ、これも経験だから」


「お兄様がそう言うなら、そうですわ」


「世の中に無駄な事なんてありません」


「お、プロム。良いこと言うねぇ」


 プロムが胸を揺らせて照れる。

 ……デカい。

 ぼいんぼいんぼい――

 いや何を考えているんだ俺は!


「それもこれも、お前たちみんながいてくれたから、良かったんだよ」


 本当にそう思う。

 こいつらがいるから、俺はまだまともでいられる。


「今度ミロースに会ったときに恥ずかしくないようにって……俺は、ちゃんと頑張れているのだろうか?」


 ミロースに頼んで、この国を滅ぼさずにいてもらった。

 本来なら怒りに任せて焼き払ってもおかしくなかったのに。


 だからこそ――俺には、この国に対して“責任”がある。


「ヒロシ様、あなたが背負いすぎる必要はありませんよ」


 プロムがそっと肩に触れる。


「そうだよ。ヒロシはヒロシらしくしてればいいんだ」


 レイラが笑う。


「……そうだな。俺は俺のやり方でやるさ」


 タバコの煙を空に吐き出す。

 青い空に溶けていく煙を見て、少しだけ肩の力が抜けた。


「めども見えてきたし、そろそろ行くか。ここで止まってる暇はねぇしな」


「次はどこ?

 ヒロシがちゃんと考えているのか不安ですわ」


「本当にしょうがない奴だな、お前は。

 決まってんだろ?

 前だよ、前。前進あるのみ!」


 俺は立ち上がり、軽キャンの方へ歩き出した。


「ノープラン!」


 キャスカが喚いていたが無視。


 背後で、仲間達の笑い声が風に乗って響く。


 ――悪くない。

 こんな日も、悪くないよな。

この世界にやってきて、沢山の仲間に支えられてここまで来ることが出来た。

大金持ちになったが、仲間が一番の財産だと気付かされる旅になったと感じる。

俺は幸せ者だ。

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