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第5話 缶詰を渡しただけで大誤解されるおっさん

異世界に来てからというもの、ヒロシの周囲では“無自覚な大事件”が連続発生中。

魔王城を軽キャンで破壊し、獣人一家に誤解され、魔力を垂れ流して魔物をビビらせる男。

今回は、そんなヒロシがついに“異世界の住民と初接触”する回。

果たして彼のコミュ力(?)は通じるのか。


笑顔を絶やさない俺。


獣人の男はふと俺を見て眉をひそめた。


「……お前、妙に魔力の気配が強いな」


「え? そうなの?」


俺は鼻をほじりながら答える。


(訳の分からないことなど、どうでもいい。

 早く缶詰を食って感動して、俺に感謝して、仲良くトークしようぜ!)


(こ、こいつ……自覚がないのか!?

 魔力を隠すどころか、垂れ流している……!

 危険すぎる……!)


獣人の男は内心震えていた。


しかも、ヒロシの周囲の空気は微かに波打っている。


(な、なんだこの圧……!

 魔王軍の幹部でも、ここまでの魔力は……!)


ヒロシは気づかず、缶詰を掲げた。


「食事、一緒にしませんか?」


(フフフ、どうせ缶詰なんて食ったことないんだろ?

 俺は賢いから、お見通しだぜ。さあ、驚け!)



「……」

現実は違った。


缶詰は放置され、俺はイライラし始める。


子供が興味を示すと、母親が慌てて引き離す。


(あの人間……やはり精神が不安定なのね……

 でも魔力が強すぎる……刺激したら危険……)


獣人の女は小声で言った。


獣人の男は堅そうなパンを差し出してきた。


「……ありがとう」


食べてみると、口の水分が全部持っていかれた。


「思ってた展開と違う……」


俺は呟き、気まずくなって軽キャンの方へ少し離れた。

缶詰の袋をいじりながら、気持ちを落ち着ける。



一方その頃、獣人一家は——


「マルス、あの人間は……可哀想な人なの」


「こんな鉄の塊を食べ物だと言って……」


(精神は不安定……だが魔力は規格外……

 下手に刺激したら一家全滅もあり得る……!)


獣人の男は真剣に考えていた。



戻ってきた俺は、缶詰を掲げた。


「いいか、お前ら! これは缶詰と言うんだ!」


「おお、そうか、そうか」


(落ち着け……刺激するな……)


獣人の男の笑顔……まるで俺がヤベー奴みたいではないか。

こんなにフレンドリーで慈愛に満ちた笑顔の俺が?

そうだよな?ヤベー奴って、ないない。俺の考えすぎだ。

さてと……


「者ども、コレを見るが良い!」


缶詰を突き出す俺。


「ひっ」

震える獣人一家。

「何で!」

もういい、開けるぞ。


パカッ。


缶詰を開けた瞬間、俺の魔力がふわりと揺れた。


(なっ……!? 鉄の塊をいとも簡単に?!

 中に食い物らしきもの……魔力が……中身にまで浸透している……!?

 これは……“祝福の食事”……!)


獣人の男は震えた。


「食べてみ。美味しいよ~」


(いやらしい笑顔で……毒味を……俺に……!?

 いや、違う……これは“試練”だ……!)


獣人の男は意を決して食べた。


「う、う、う、うまーーいっ!!」


(こ、これは……身体の奥から力が湧いてくる……!

 まさか……回復薬……!?

 いや、違う……これは“祝福の食事”だ……!)


ヒロシは小さくガッツポーズ。


(気に入ったようだね、獣人の男くん!)


(……この男……何者なんだ……!?)



「いやぁ、最初は頭の可怪しい奴かと思って警戒していたんだぞ!」


獣人の男の言葉に、俺は少しイラッとしたが、大人なので流す。


「ヒロシ! こっちが女房のカローラだ!」


カローラが会釈する。

胸がデカい。

顔には出さない。


「んで、こいつが息子のマルスだ!」


「おじちゃん、美味しい物ありがとう!」


可愛いな、マルス。


「俺はノガミ ヒロシ! あれが俺の相棒、軽キャンだ!」


「軽キャン?」


カローラが首をかしげる。

胸がデカい。


「馬車のようなもんだってよ」


獣人の男が説明する。


「ヒロシはどこから来たんだ?」


俺は適当に“遠くから来た”と言った。


「やっぱり外国からなのね! 馬なしで馬車が走るなんて!」


(文明レベルが違いすぎる……!

 やはり只者ではない……!)


カローラは軽キャンに興味津々。

俺はカローラに興味津々。


獣人の男は続ける。


「俺達は戦争から逃げてきたんだ。勇者が魔王様の城に攻め込んだって聞いてな」


「大変なんだな……」


(魔王も勇者も死にましたよ、とは言いにくい……)


「安心して暮らせる土地を探すんだ」


獣人の男は寂しそうに言った。


マルスは無邪気に笑い、カローラは不安げな顔をしている。


よっしゃ。


「俺も行き先わかんねぇし、一緒に行ってやるよ!

 人数が多ければ安全だし、軽キャンで休めるし、いい土地探そうぜ!」


「しかし……」


「……ちなみに、缶詰まだあるぞ」


獣人の男の目が光った。


(……この男と行動を共にすれば……

 “祝福の食事”がまた食べられる……!

 いや、それだけじゃない……

 この男の魔力……護衛としては規格外……!

 むしろ、俺達が守られる側だ……!)


獣人の男はヒロシの手を握りしめた。


「一緒に旅してください!」


(どうか……どうか我が家族を守ってくれ……!)


「勿論です!」


俺も握り返す。


獣人の男が空になった缶詰をヨダレを垂らして見ていることなど、些細なことだ。

ヒロシの魔力が無自覚に周囲へ圧を放ち、獣人一家が勝手にビビる構図が面白すぎる。

次回は、ヒロシの“善意”がさらなる誤解を生む予感しかしない。

読者の皆さん、ヒロシのコミュ力の行方を温かく見守ってほしい。


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