第55話 カレーと夜の準備
いつも読んでくださりありがとうございます!
今回は、久しぶりに のんびり回 です。
ヒロシ達のわちゃわちゃした日常を、肩の力を抜いて楽しんでいただければ嬉しいです。
それでは本編どうぞ!
今日の宿泊の割り振りが決まった。
キャンピングトレーラー1は、俺とレイラとプロム……そして、なぜかミロース。
「なぜだ!?」
なぜミロースがこっちに泊まる。
俺の愛する嫁達と愛し合う、あの甘い時間が……
ドラゴン一匹のせいで台無しだ!
もちろん、怖いから抗議なんてしませんけどね。
「キャンピングトレーラー2は、ルファス、キャスカ、フィリー」
「は? ノガミさん、フィリーさんもですか?」
「そうだよ」
能面のような顔で、ルファスを見ずに答えた。
「そうだよって……私とお兄様が愛し合っているの知ってるのに酷いですわ」
だからなんだ、キャスカ。
ということで無視。
「あの~、私はウィズたちの方に行ってもいいですぅ」
「そうですの――」
キャスカが嬉しそうに食いついた瞬間、俺は割って入った。
「させるか!」
俺はフィリーの肩を掴み、迫真の演技で訴える。
「悲しいこと言うなよ、フィリー!
俺たち、仲間だろ?
そんなのけ者にするような真似ができっかよー!」
チラチラとルファスに視線を送る。
「そうですよ、フィリーさん。
一緒にいてください」
ルファスが優しく言った。
(よっしゃ!)
ちょろい……いや、仲間思いの良い奴だ。
「そんな……お兄様……」
「決定!
フィリー、ルファス達と親睦を深めるんだぞ。
俺はウィズたちの様子を見てくるので、さらばだ」
俺を睨むキャスカを華麗にスルーして笑顔で言った。
……よし、これでお前らも巻き添えだ。
俺だけ我慢するのは不公平だからな!
キャンピングトレーラー3は、ウィズ、カイ、バンの男三人。
「適当に使ってくれ」
三人に言ってさっさと帰ろうとしたら、腕を掴まれた。
「そんだけ?
もっと説明とか無いのかよ?!」
「ここに来るまで乗ってたんだから、説明要らないだろ」
めんどくさいなぁ……
ウィズたちにぶつくさ言われたが、こんな感じの振り分けになった。
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「さて、次は夕食だ!」
ウィズ達は、どうしていいか分からないといった顔で突っ立っている。
「働かざる者食うべからず。ほら、コレを頼む」
俺はジャガイモとニンジンを渡し、皮むきを命じた。
最初はミロースにやらせたのだが、生でガシガシ食べ始めて役に立たなかったので、椅子に座らせて“待機”させている。
レイラ、プロム、キャスカの三名は、慣れた手つきで野菜を刻み、鍋に火を入れ、玉ねぎと肉を炒める。
油が弾ける音と、立ち上る香ばしい匂いが食欲を刺激する。
ジャ〇カレーの箱からルーを取り出し、鍋に投入すると――
鍋から立ち上る湯気が、夜風に乗ってふわりと広がる。
玉ねぎの甘い香りと、炒めた肉の香ばしさ。
そこにスパイスの刺激が混ざり、腹が鳴る。
「うわ……いい匂い……」
レイラが嬉しそうに目を細める。
「この香り……絶対うまいやつだ」
カイがゴクリと喉を鳴らした。
ミロースは鍋の前でそわそわと足踏みしながら、湯気を吸い込んで幸せそうにしていた。
鍋の中では、黄金色のルーがゆっくりと波を立てながら煮えている。
俺とルファスは、手際よくテーブルや椅子を組み立てていく。
こういう作業はもう慣れたもんだ。
今日のメニューは、レイラが大好きなカレー!
俺は軽キャンに戻り、ウスターソースを取ってきた。
そう、俺はカレーにソース派なのだ。
「おい、それは?」
ウィズが興味津々で覗き込んでくる。
そりゃそうだ、異世界にウスターソースなんて存在しない。
「ソースだよ。
カレーに少しかけようと思って持ってきた」
「うぐぐ……ヒロシ、俺も良いの持ってるから待ってろ!」
なぜか対抗心を燃やしたウィズが道具袋を漁り、誇らしげに一本の瓶を掲げた。
「見ろ! ノガーミ印のマヨネーズだ!
ちまたの紛い物とは違う、本物だぞ!」
俺の商会の商品だった。
そうか……そう来るか。
「フッ……ウィズ、ちょっと待ってろ」
俺は軽キャンに戻り、貴族向けノガーミ印の最高級マヨネーズ――
『皇』
を持ってきた。
「そ、それは……皇!
庶民が一生に一度食えるかどうかの、あの……皇!
くそっ……負けたぜ、ヒロシ……
いや、ヒロシ様!」
ウィズが膝をついた。
周りのみんなは、俺とウィズのくだらない勝負を完全に無視して、
「手伝えよ……」
キャスカが、ゴミを見るような目で言った。
「……はい」
「……はい」
俺とウィズは、反射的に返事してしまった。
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カレーのビジュアルに当初は引き気味だったウィズたち“カレー初体験組”だったが――
「な、なんだこれは……?」
口に入れた瞬間、スパイスの香りが一気に広がる。
とろけた野菜の甘みと、肉の旨味が舌の上で混ざり合う。
カイが一口食べて固まった。
「討伐に来て、暖かい料理が食べられるだけでも驚きなのに……
こんな旨いものが食えるなんて!」
バンは大きな体を丸め、獣のような勢いでカレーをかき込んでいる。
「美味しいけど……辛いですぅ……」
「フィリー、水もっと飲みなさいよ」
プロムが横から世話を焼いている。
俺の嫁さんは優しい。
フィリーは涙目で水を飲んでいるし辛いのが苦手らしい。
美味しいと言ってもらえたが、悪いことをしてしまった。
今度は、ホワイトシチューとかにした方がいいな。
「ヒロシ様は最高のリーダーだぜ! ヒャッホーー!」
ウィズは……まあ、放っておこう。
大人しく食べてるだけマシだ。
みんなが笑顔で食べている姿を見ると、胸が温かくなる。
喜んでくれるのが、嬉しい。
俺は席を立ち、鍋の方へ向かう。
ミロースはカレーをスプーンで豪快にすくい、口の端にルーをつけたまま夢中で食べ続けている。
「……気に入ったみたいだな」
おいしそうに食べてくれる仲間達を見ていると、心が満たされる。
笑顔で囲む食卓ほど、幸せなものはない。
その温かい空気から少し離れ、俺は魔導ブレスレットを口元に寄せた。
「俺だ、ノガミ。ノガミ ヒロシだが……聞こえるか?」
『……ノガミ様?
はい、聞こえております。
どうかなされましたか?』
「すまないが、頼みがある……」
夜風が静かに吹き抜ける中、
ヒロシの声だけが低く、真剣に響いた。
読んでくださりありがとうございました!
今回は、旅の合間の ほっこり回 でした。
こういう時間も大事だなぁ、と書きながらしみじみ思いました。
次回はまた少し動きがあります。
引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。
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