第53話 空を裂く光と、迫り来る影
いつも読んでくださってありがとうございます!
前回はリンブがまさかの化け物化、そしてドラゴンまで乱入してきて大混乱の戦場でしたが……
今回はさらにカオスです。
ぜひ楽しんでいってください。
キャスカの様子がおかしい……。
ルファスのことが気になって仕方ないって顔しやがって、相手はドラゴンだぞ。集中しろ。
「キャスカ!
お前の愛する者を信じろ!
ルファスは絶対勝つ! だから目の前の敵に集中しろ!」
「わかってるわよ!
お兄様が負けるわけないでしょ!
バカのくせに偉そうにしないでほしいですわ!」
言い返すと同時に、キャスカは上空へと舞い上がった。
クソ生意気なガキだが……本調子に戻ったみたいだな。
それでこそ、俺の頼りになる大事な仲間だ。
「レイラ、狙うのは目とか急所! 焦らなくていい、確実に当てろ」
「わかった!」
確実にと言ったが、心配なんてしていない。
俺の嫁は、可愛くて綺麗で最高で、そして強い。
「カイ、あんたの腕は未知数だが……この矢を使ってくれ」
アイテムボックスから取り出した矢を渡す。
「わかりま……って、この矢って!?」
「驚くのは後。連続で撃ってくれ」
ミスリルの矢に驚いていたカイの顔が、一瞬で引き締まった。
任せて大丈夫そうだ。
レイラは距離を取り、長弓を限界まで引き絞る。
「フィリー、あんたの魔法で一番威力のあるやつを撃ってくれ!」
「詠唱に時間が欲しいですぅ!」
「時間は作る! すぐ詠唱開始!」
「は、はい~!」
頼りないが、今は全員ができることを最大限やるしかない。
「カイ! フィリーの詠唱の時間を稼いでくれ!」
俺の指示で、カイが射撃を開始した。
ミスリルの矢が連射され、ドラゴンの鱗に次々と突き刺さる。
「す、すごい! あんな硬そうなのに……これなら!」
カイが驚愕と興奮を混ぜた声を上げる。
連射された矢に押され、ドラゴンがこちらに踏み込めない。
ミスリルの威力もあるが、カイの腕も悪くない。
レイラには及ばないが、十分戦力だ。
だが、ドラゴンはタフだ。
矢を何本も受けているのに、倒れる気配がない。
頭を下げて矢を嫌がって……いや、力を溜めてる?
レイラを見ると、精神を研ぎ澄まし、限界まで引き絞った弓を構えていた。
狙いは――ドラゴンの眼球。光を奪う一撃。
「あっ!」
ドラゴンの頭が動いた。嫌な予感が走る。
「キャスカ、何かしようとしてる! 止めろ!」
魔導通信で叫ぶ。
「わかってるっての! ファイヤァーー!!」
キャスカの強化型マジックロッドが、魔力を何倍にも増幅する。
――火球がデカい。
「流石、うちの開発部だぜ!
キャスカの魔法の威力を増幅させるなんて!」
これならいける。
ドラゴンに致命傷を――
「なんだよ、あれ」
いや、増幅しすぎだろ。
空に、常識外れの巨大火球が出現した。
あんなの落ちてきたら、ドラゴンどころか俺たちも終わり、この森ごと地形が変わるレベルだ。
「……あー、やっちゃったな」
俺は見上げながら、うちの開発部に問いかけた。
何作ってくれちゃったんだよ、やりすぎだろ。
ゴゴゴゴゴ……
「あわわ、あわわ……」
メテオ級の火球を出した張本人のキャスカが一番あわあわしている。
そりゃそうだ。俺も死を覚悟した。
ドラゴンが火球に気づいた。
あんな隕石みたいなの、気づかない方がおかしい。
ドラゴンはブレスを吐いたが――
「あ、やめた」
死ぬと悟ったのか、ブレスを中断し、急上昇を開始した。
「そりゃ逃げたくも――」
その瞬間、俺の目が光った。
「キャスカ! 軌道修正!」
「こんのおぉぉぉぉーー!!」
キャスカが必死に火球の軌道をずらし――
「いっけぇーー!!」
巨大火球が一気に加速した。
逃げるドラゴン。
追う隕石級火球。
そして――
遥か上空で、世界が割れるような大爆発が起きた。
俺も、仲間も、そしてリンブでさえ呆然と空を見上げた。
「あの~、詠唱が終わったんですけど……どうしましょう?」
フィリーが恐る恐る声をかけてきた。
「フィリー! リンブに当てろ!」
「は、はい~! ファイヤー!」
フィリーの火球が、呆然としていたリンブに直撃。
まともに食らったリンブは大ダメージを負い――
「逃げるな!」
レイラの矢がリンブの腹を貫き、
最後はルファスが止めを刺した。
いきなり襲ってきたコーディネーターも倒した。
一件落着……なのか?
・
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全てが終わり、落ち着いた俺達が集まる。
「……ドラゴン討伐、成功だよな?」
俺は確認した。
「確かに倒したが……跡形もなく消し飛んで、証明がないぞ」
ウィズの言う通りだ。どうすんだこれ。
「せっかく討伐成功したのに!」
俺とウィズが頭を抱えていると――
「いや、そんなことより、おかしいでしょう?」
大柄なバンが、体格に似合わない弱々しい声で言った。
ああ、アレか。
「キャスカの魔法のことだよな?」
確かに、あれが上じゃなくて下に落ちてたら全員消し飛んでた。
俺を咎める気か?
俺は撃った本人を見る。
俺は指示はしたけど実行犯じゃない。
撃ってないし。
うん、悪いのはキャスカだな。
「俺は悪くない」
結論は出た。
「悪くないって何の話ですか?
いや、確かに魔法もおかしいですけど、そうじゃなくて……セガル王国ですよ!
リンブが化け物になって襲ってきたり、冒険者を殺すために集めてるとしか思えないですって!」
バンの言葉に、俺とウィズはようやく思い出した。
……そうだ。殺されかけたんだった。
「そ、そうだな。おかしいよな、ウィズ」
「お、おう。もちろんだ。
そんなことは大前提で……うん、疑ってたとも。ほんとに」
ウィズがメタメタになりながら答える。
「しかし、本当に解らないことだらけですね」
ルファスが難しい顔をした、その時。
「あ、またドラゴンだよ」
カイが上空を指差した。
またなのか?
「……いや、今日どんだけ出てくんだよ」
ここまで読んでくださってありがとうございます!
キャスカの火球、やりすぎでしたね。
ヒロシも言ってましたが、あれ下に落ちてたら全滅でした。
開発部は反省してほしい(ヒロシ談)。
そして、ドラゴン討伐は成功したものの――
証拠がないという致命的な問題が発生。
さらに最後に“またドラゴン”が登場。
セガル王国の闇も深まり、次回はさらに波乱の予感です。
続きも楽しんでいただけたら嬉しいです!
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