第51話 コーディネーター・リンブと森の奥へ
いつもありがとうございます。
今回は、セガル王国でのドラゴン討伐が本格的に動き出す回です。
では、今回もよろしくお願いします。
城の前は広い広場になっており、多くの冒険者たちが集まっていた。
係員が冒険者を振り分け、コーディネーターがパーティーを編成し、規定人数に達したグループから順に出発していく。
俺たちは急いで係員に討伐参加証を見せた。
「はい。それじゃ、あそこの集団のところへ行ってくださーい」
軽い調子で指示された場所へ向かうと、背の低い眼鏡をかけた女の子が前に立った。
「あなたたちで五パーティーになりますね。
それでは自己紹介から。
私はリンブ、十九歳です。
コーディネーターは今回が初めてですが、よろしくお願いします」
丁寧にお辞儀をするリンブに促され、各パーティーが順に自己紹介をしていく。
俺たちのグループは、ランクEの俺たち、ランクAの五名パーティーが一組、ランクCの四名パーティーが一組、同じくランクCの五名パーティーが一組。
そして最後の一組の紹介の番がきた。
「俺はウィズ。戦士だ。
パーティーは弓使いのカイ、盾役のバン、魔法使いのフィリーの四名。
ランクはBだ」
魔法使いのフィリー以外は全員男のパーティーらしい。
これで俺たちが最もランクの低いパーティーだと確定した。
「総勢二十三名にコーディネーターが一名。
これも何かの縁だ、頑張っていこうぜ!」
リーダーとして声を張ったが、ランクAのパーティーが露骨に嫌そうな視線を向けてくる。
まあ、実力不足がいれば成功率も生存率も下がる。
ランクの低い俺たちが混ざって気分が悪いのだろう。
当然だ。腹は立たない。
「それじゃ、自己紹介も終わりましたし、向こうの馬車で現地へと出発します」
リンブが言ったところで、俺は手を挙げた。
「ちょっとまった!
コーディネーターさん移動の件なんだけど……」
俺はリンブに、俺たちの馬車――軽キャンがあることを伝え、それで現地へ向かうことを提案した。
目的地がどこか知らんが、馬車より軽キャンの方が早いだろう。
ランクEの俺からの提案だからか、露骨に嫌そうな顔をされたが無視して軽キャンへ戻る。
「なあ、馬車でチンタラ行ってらんないから軽キャンでいくぞ」
「ヒロシ、あの人数大丈夫なの?」
「何とかなるだろう。
狭かろうが馬車よりマシだって」
レイラが納得してくれた。
「じゃあ、ヒロシ様に密着して場所を開けないといけませんね」
そういって俺の腕にプロムが抱き着いてきた。
や、やわらかい。
「ちょっと、プロム! 近すぎよ!」
レイラが反対側の腕にしがみつく。
これはこれで良いじゃないか!
「デレデレあほ面してないで早く行きますわよ」
「あ、ああ、すまん。
みんな待ってるし急がないとな」
キャスカに注意され、我に返る。
仕事とプライベートは分ける男、それが俺だ。
「……あほ面って言った?」
「ノガミさん何してるんですか? 行きましょう」
「そうだな、急ごう」
ルファスに急かされ、軽キャンへと向かった。
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ブロロロロ~
「おい、なんだアレ!」
「こっちに来るぞ」
リンブの待つ馬車乗り場へ軽キャンで乗り付けると、周囲は驚きの声だらけだった。
「みなさん、お待たせ!
こいつで現地に行きますから、こっちのトレーラーに乗ってくださいよ」
「は? このスペースにって無理が……
って、押すな! わかったから」
「せ、狭い」
「馬車に乗り合わせた方が……」
「いや、無理だって!」
「もっと詰めろよ!」
キャンピングトレーラーを追加で出しておいたが、確かに窮屈そうだ。
まあ、乗れないこともない。
善意で快適な移動手段を提供しているのに、狭さに文句を言う者もいたが無視だ。
急ぐのが最優先。
「コーディネーターのリンブさんはナビしてもらうから、こっちの助手席に座って」
「これに乗るんですか……?」
渋るリンブを助手席に乗せ、出発した。
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国境の町を出てしばらくすると、軽キャンの速度メーターは時速100キロを超えていた。
「やっぱ、現地まで遠いんじゃないの。
軽キャンで来て正解だぜ!」
「ノガミさん、速いですって!
危ないから! そもそも何ですか、これ!」
「気にするな! 馬車と同じようなもんだ」
「いや、同じって?!
あ、その先の十字路を右にお願いします!」
リンブは速度に驚きつつも、必死にナビを続けてくれていた。
先行していたパーティーを次々と追い抜き、森の奥地へと向かう。
軽キャンは立ちはだかる樹木をものともせず突き進み、どんどん奥へ、さらに奥へと進んでいく。
女神の加護のおかげで、木や枝がガンガン当たっても軽キャンは無傷だ。
王都を出てずいぶん走ってきたが、まだなのか?
リンブが俺の肩を叩いた。
「もういいでしょう。この辺で停まってください」
「え? この辺なのか?」
指示通り軽キャンを停める。
「もう、真っ暗だぜ。
今日はここでキャンプするのか?」
「ヒロシ、泊まれるように準備する?」
「そうだな。ろ暗いままだと危ないし……何より俺が怖いから明かりの用意だけしようか」
俺たちは軽キャンを降り、明かりの準備を始めた。
電球タイプのLEDライトをポータブル電源につなぐと、周囲が明るく照らされる。
そのとき、キャンピングトレーラーの方からうめき声が聞こえた。
もしや、幽霊?
「って違う! 忘れてた」
慌ててキャンピングトレーラーのドアを開けると、ギッチギチに詰め込まれてた冒険者たちがぐったりしていた。
「あらら、大丈夫か?」
いくら無敵の軽キャンでも、木にぶつかれば中は揺れる。
慣れていないとキツい……いや、慣れの問題じゃないな。
「荒い運転になってしまい、申し訳ない。
こいつを飲んだら元気になるから、頑張れ」
回復薬(小)を配ると、少し元気を取り戻したようで安心した。
「さて、みんなで食事の用意でもしますか」
元気よく俺が声を上げた。
お腹もへってきたし、晩御飯を――
「……」
返事がない。
食べないと元気が出ないのに、今は食べたくありませんってか?
ランクAもBもCも、だらしない。
「多めに作っとくから、お腹が減ったら食べるんだぞ。
そしたら、レイラとプロム、晩御飯作るの手伝って」
「その必要はありませんよ」
「いや、なんでだよ!」
振り向くと、リンブが立っていた。
食事の用意をしてくれるのかと思ったが――違う。
「……そういう訳でもなさそうだね」
リンブの様子が明らかにおかしい。
「予定外に目的地に着きましたが……
みなさんには予定通り、ここで死んでもらいます」
「ああ、そういうこ……死んでもらう?!」
リンブがお辞儀をした。
わあ、礼儀正しい! ってなるか、バカ。
俺は、やばい感じの人から距離をとらせてもらうぞ。
「お前、何を言ってるんだ!」
ランクAのパーティーが前に出た。
「おっし、行け!
ランクAは伊達じゃないってところを見せてやれ!」
「なんだ、お前は!」
応援したのに怒られた。
理不尽だが、今はそれどころじゃない。
「うるせぇな。おとなしく死んどけ」
リンブが言った瞬間、ランクAパーティーの首が飛んだ。
「は?!」
一瞬でランクAのパーティーが全滅したんですけど。
「ヒロシ、こっちに来て!」
俺はレイラの後ろに回る。
死にたくない!
全員に緊張が走る。
リンブは眼鏡を外し、蛇のような舌をチロチロと出し入れしていた。気持ち悪い。
「全員食ってやる。
ただ…… お前は不味そうなので、豚に食わせる」
「なんでだよ!」
なぜか俺だけ指名され、不味そうと言われた。
食われたいわけじゃないが、失礼だ。
「おいおいおいおい……」
リンブの背中からは蝙蝠のような羽が生え、足は蛇のように変形していく。
……うん、キショイ。
「こんなの聞いてない!」
「冗談じゃないぜ!」
Cランクのパーティーが逃げ出した。
「ずるい。俺も逃げた―― 見てるし!」
リンブが俺をジッと見ていた。
「だから、なんでだよ!」
ドドーン!!!
凄まじい音が響いた。
「今度は何?」
最悪なのに、まだ何かあるのか。
「ぎゃぁあぁー!」
叫び声が上がった。
声の方を見ると――
さっき逃げたCランクの冒険者たちが、ドラゴンに食われていた。
……最悪だ。完全に詰んでる。
リンブは化け物になってこっちを狙ってくるし、後ろにはドラゴン。
前も地獄、後ろも地獄。どうしろってんだよ。
仲間たちの顔が青ざめていく。
そのとき――ドラゴンがこちらを向いた。
……終わったな、これ。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
まさかのリンブの正体判明、そして逃げた冒険者をドラゴンが食うという最悪の状況に。
前も地獄、後ろも地獄で、ヒロシたちは完全に追い詰められました。
次回、このピンチをどう脱するのか?
ぜひ続きも読んでいただけると嬉しいです!




