第49話 セガル王国の町での情報収集
いつも読んでくださりありがとうございます。
今日は、セガル王国の小さな町での情報収集回です。
ヒロシが真面目に仕事をするのか、
それともいつものように脱線するのか――
温かい目で見守っていただければ嬉しいです。
それでは本編へどうぞ。
俺、レイラ、プロムの三人は効率を考え、手分けして情報を収集することにした。
「小さな町だが、酒場があるんだな……」
情報は酒場に集まる。
情報収集にはうってつけだ。
俺は中へ入り、地酒を頼んだ。
店内のざわめきに耳を澄ませ、俺たちに関係する話題がないか慎重に探る。
「……ほう」
素晴らしい。
これほど“目を引く情報”もそうそうない。
俺の視線は、一人で飲んでいる女に吸い寄せられた。
なぜなら――
見えているのだ。
俺の位置から、ちょうど。
「……赤か」
俺は、あくまで遠くを眺めている風を装いながら、気配を消して視線だけを送る。
女が足を組み直すたび、視界に色が差し込む。
うむ、酒が旨い。
実に、旨い。
もっと、こう……角度を……いや、顔を向けたらバレる。耐えろ俺。
そんな至福の時間を邪魔するように、女の前へ男が立った。
「……あっ」
そこに立つな。見えないだろうが!
声を出しそうになったが、ギリギリで踏みとどまる。
抗議なんてしたら、何を見ていたかバレるに決まっている。
仕方なく、俺は自然を装って席を移動した。
俺が折れてやればいいだけだ。
これが大人の余裕って奴なんだろう。
「さて…… ベストポジションはどこだ?」
酒を片手に、絶景ポイントを探す俺。
そんな俺がウロウロし始めた頃――
「ヴァルファ帝国からの連絡は?」
女が、後から来た男に尋ねた。
「ゼノス王国に派遣された密偵からの連絡が途絶えたらしく、注意喚起が来た」
男は席に着いた。
「ゼノス王国って、辺境とはいえ経済大国だし……
セキュリティに力を入れてるのかもね」
女は興味なさげに酒を飲む。
「明日は我が身だ。俺達も気をつけなきゃな。
こんな任務で命を落とすなんて御免だ。
……それより聞いたか? 王都で……」
男は声を潜め、周囲を見回してから続けた。
「セガル王国が、帝国への侵攻を計画中って噂……」
「はぁ? バカなの?
セガル王国は小国じゃないけど……帝国に侵攻? 正気とは思えないわ」
女は呆れたように椅子にもたれた。
「……そこで、例のドラゴン討伐だよ」
女は眉をひそめる。
「このセガル王国に冒険者が大量に集まってるだろ?
ランクフリーでドラゴン討伐なんて、どう考えても怪しい。
裏がある。帝国侵攻の噂と無関係じゃない気がするんだ」
男は興奮気味だが、女は興味なさそうに酒を煽る。
「あんたが言うように、何か関係あるのかもね。
でも、私達は帝国に言われた通り、状況を報告しておけばいいのよ。
危険なことに首突っ込む必要なんてない」
「……それもそうだな。
昇進しても危険が増すだけだし、俺ら下っぱは言われたことだけやってりゃいい」
「そういうこと。
帝国だって、この国のことをそこまで重要視してるわけでもないでしょうしね」
女がグラスを置くと、二人は店を出ていった。
俺は、二人の後ろ姿を恨めしそうに見つめる。
「あぁ~……」
ベストポジションを探している間に、女が出ていってしまった。
せっかく酒場に来たのに、情報も大して得られなかった。
いや、目の保養はできたが……仕事としては失敗だ。
「大体、酒飲んで仕事しようなんて、虫が良すぎるってもんだ」
酒を飲み干し、俺も店を出た。
「レイラ、聞こえるか?
こっちは収穫なしだ。そっちは?」
俺は魔導ブレスレットに話しかける。
『ヒロシ、こっちもダメ』
レイラの声がクリアに聞こえる。
本当に便利だな、この魔導ブレスレット。
『ここのギルドじゃ詳細は分からないから、王都で聞いてくれって』
「そうか、わかった。ありがとな、レイラ!
そんじゃ、別れた地点に行くから、お前達も来て!」
「了解、すぐ行くわ」
通信を切り、合流地点へ向かう。
「良いものは見れたから酒場に行ったのは失敗じゃないが……
ドラゴン討伐の話をしてる奴がいても良かったのに。
後半はベストポジション探しでそれどころでは無かったが…… おっ!」
別れた地点の近くまで来ると、レイラとプロムの姿が見えた。
『みなさん、宿とれましたから、軽キャンのとこまで戻ってください』
ちょうどその時、ブレスレットからルファスの声が聞こえた。
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ルファス達が手配した宿は、こじんまりとした家庭的な宿だった。
「ルファス、キャスカ、ありがとうな」
「部屋が空いてて助かりました。
ノガミさんとレイラさん、プロムさんの三人部屋と、僕とキャスカの二人部屋をとりましたが、良かったですか?」
流石、ルファス。
「ああ、大丈夫だ。
レイラとプロムもその方がいいだろう?」
「ヒロシのエッチ」
「ヒロシ様、今日も沢山甘えてくださいね」
「レイラ、プロム、二人の前でそういう事は言わないように」
「だって、ヒロシ様ったら甘えて私の――」
「プロムさん、本当にいいですから」
「あんた、プロムに何させてるのよ?ですわ」
ほら、キャスカが食いついてきた。
「いや、大丈夫なんで」
俺は愛想笑いで答える。
キャスカの汚物を見るような目が刺さる。
「大丈夫って、答えになってないですわ」
うわぁ、しつこい。
「キャスカ、その辺にして。
皆さん、宿に入りましょう」
ルファス。
お前って本当に良い奴だ。
それに比べてキャスカは……同じ兄妹とは思えないぜ。
キッ!
「こいつ、私を睨んだですわ!」
「ん? 何が?」
しらを切る。
まだ何かごちゃごちゃ騒いでるキャスカを無視だ。
「さ、レイラ、プロム、行こう。
どんな部屋か楽しみだなぁー」
さて、明日は王都へ行き、そのままドラゴン討伐だ。
「忙しくなるぞ」
「ヒロシのエッチ」
「ヒロシ様、今からもう夜の事を?」
「いや、違うから!
忙しくなるって、明日の話!」
……まあ、夜は二人の言う通りなんだけど。
ゆっくりできる最後の今日は、レイラとプロムと過ごすつもりだ。
ただ、二人の前で言う必要はない。
「ノガミさん、ちょっと」
「何?
どうしたルファス」
ルファスが小声で耳打ちしてくる。
ああ、そうか。忘れてた。
「待ってろ、ルファス」
「ありがとうございます」
ルファスが嬉しそうだ。
よしよし任せろ。
「レイラ、プロム、キャスカは先に部屋に行ってて。
俺はルファスと少し打ち合わせしてから行くから」
「早く来てね」
おう、レイラ。
「荷物運んでおきますね」
ありがとう、プロム。
「打ち合わせって、何?ですわ」
余計な詮索をするな、キャスカ。
「ハハハ、いいから。 行った行った」
三人が宿へ入ったのを確認し、俺は軽キャンへ戻って荷物を取り、ルファスの元へ戻った。
「ほら、回復薬(小)だ。
俺の分も持ってきた。
夜にこれ飲んで頑張ろうぜ!」
最低なノリでウインクする俺。
「ありがとうございます、ノガミさん!
朝まで頑張ります!」
ルファスも大概だった。
「朝までは、やめてね。
明日は、ドラゴン退治なんだから」
俺も一応、注意はしておいた。
……が、夜が待ち遠しい。
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俺とレイラとプロム。
ルファスとキャスカ。
それぞれが互いの気持ちを確かめ合い、心を通わせた。
愛って素晴らしい。
レイラをプロムを抱きしめると心が満たされる。
俺達は夜遅くまで愛を語り、寄り添い合い、ほとんど寝ていない状態のまま夜明けと共に宿を後にした。
読んでくださりありがとうございました。
今回は情報収集回でしたが、
ヒロシの“仕事の仕方”は相変わらずですね。
次回はいよいよ王都へ向かい、物語が大きく動きます。
更新は 火・木・土・日 の21時 です。
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次回もよろしくお願いします。




