第4話 獣人一家と遭遇。俺、完全に不審者扱いされる
ついに異世界住民と遭遇!
相手は獣人一家。
しかしヒロシの“無自覚な魔力漏れ”のせいで、彼らは恐怖のどん底に……。
ヒロシのコミュ力(?)が火を吹く回です。
「うまぁーーい!」
インスタントコーヒーでも、自然の中で飲むと驚くほど旨い。
タバコを吸いながら、俺は至福の時間を満喫した。
「……異世界に来たのに、普通にコーヒー飲んでタバコ吸ってる俺ってどうなんだ?」
驚いたり泣き叫んだりした方が“主人公っぽい”のかもしれないが、そんな気力はない。
「めんどくせぇ……」
コーヒータイムを終え、片づけをして出発しようとしたその時。
——ガララララ……
木々の向こうから、車輪の音が聞こえた。
「んっ!」
俺の目の前を、馬車が通った。
「おおーー! 異世界っぽいぞ! 馬車!」
あれについて行けば、村か町に行けるんじゃないか?
「よっしゃ、決めた!」
俺は急いで荷物を片付け、軽キャンに飛び乗った。
「見失ってたまるか!」
ブロロロー……
すぐに馬車に追いついた。
「てか、おせぇーーなぁ、おい!」
怪しまれないよう距離を保ちつつ、俺は馬車を尾行した。
・
・
・
二時間ほど走った頃、馬車が森の中で停まった。
どうやらここでキャンプするらしい。
「よし……勇気を出して接触を……」
俺は小心者だ。話しかけるのは本当に勇気がいる。
「あー! ドキドキする……行くか、俺!」
軽キャンを停め、馬車へ向かう。
心臓が口から出そうだ。
「あっ!」
思わず声が出た。
馬車に乗っていたのは——獣人だ。
犬のような耳、尻尾、毛並み。
男と女と子供の三人。
まさに異世界の住民。
「まさに、異世界!」
俺は感動し、つい観察してしまう。
ジロジロ……
……完全に不審者ムーブである。
獣人一家は当然、警戒した。
(な、なんだこの人間……!
魔力の気配が……濃い……!
いや、濃いどころじゃない……“溢れている”!?)
ヒロシの周囲には、本人が気づかないまま魔力がふわりと漂っていた。
魔王城で吸収した“魔力の残滓”が、まだ制御されずに漏れ出しているのだ。
(こ、これは……近づいてはいけない類の存在……!)
獣人の男は家族を庇い、一歩前に出た。
「二人とも、下がっていなさい」
「そうだ!」
俺は軽キャンに戻り、アイテムボックスから缶詰を紙袋に詰めた。
「よっしゃ! 手土産も持ったし行きますか!」
覚悟を決め、再び獣人一家の前へ。
「あ、あの、私、ノガミ ヒロシ、全く持って怪しくない男です」
素敵な笑顔を添えて自己紹介。
……余計に怪しい。
獣人の男はさらに身構えた。
(な、なんだこの圧……!
笑顔なのに……魔力が揺れている……!
この男……本当に“普通の人間”なのか……!?)
「いやね、お話をしたいなぁーって……」
俺は笑顔を絶やさない。
だが獣人の男は、ヒロシの“魔力の圧”に気圧されていた。
(……この男……下手に刺激してはならない……!
まずは……まずは機嫌を損ねないように……!)
ヒロシは気づかない。
(よし……ここで缶詰を渡せば、きっと仲良くなれる!
俺のコミュ力、見せてやるぜ!)
——この後、缶詰を渡した瞬間に起きる“誤解”が、
ヒロシと獣人一家の運命を大きく変えることになる。
缶詰を渡すだけのつもりが、なぜか相手は命の危機を感じている。
ヒロシはただの善意、獣人一家は死の宣告。
このすれ違いが、今後の物語に大きな影響を与えることになる。
次回、誤解が誤解を呼ぶ“事件”がついに発生。




