第42話 メイドの正体
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、新メイド・プロムの正体が明らかになる回です。
ヒロシの“いつもの行動”が原因で、またしてもレイラの制裁が炸裂しますが、物語としては重要な転換点。
ただの逃走劇で終わらず、プロムの背景や心情が少しずつ見えてくる内容になっています。
レイラの尋問、ヒロシの乱入、そしてプロムの決断。
三者三様の思惑が交差する回を、どうぞお楽しみください。
◆◆ 尋問開始 ◆◆
幹部専用廊下を歩き、レイラの部屋へ。
レイラはソファに座り、プロムにも座るよう促した。
「率直に言うが、お前はヴァルファ帝国の間者だろう?」
プロムは困惑した顔。
「なぜそのような? 意味が……わかりません」
「そうか?」
レイラは目を細める。
「昨日の暴漢はヴァルファ帝国の間者だったらしいぞ?」
プロムは動揺しない。
「私達が帰ってきた時、お前はルファス達を見て驚いていた。
どうなんだ? 気づかれないと思ったか?」
プロムが立ち上がる。
「あれは……ルファス様が素敵だったので驚いただけです!
先程からの言葉は侮辱です!」
レイラのビンタが飛ぶ――が、プロムは避けた。
「……ほうら、ただのメイドが私の攻撃を避けられる?」
レイラが笑う。
プロムの顔つきが変わった。
「違っていたらどうするつもりだったんだ?」
「別のメイドを同じ方法で一人ずつ尋問するだけよ。
でも、私は運がいい。
一人目でスパイを見つけれたんだから」
「無茶苦茶な女ね!」
プロムがナイフを抜いて臨戦態勢をとる。
レイラは余裕の表情で手招きした。
「早く来い」
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◆◆ ヒロシ乱入 ◆◆
俺は重い足取りでレイラの部屋へ向かった。
逃げてたところで無駄だ。
何回も経験して学習していたから素直にやってきた。
「レイラ、入るぞ」
ドアを開けると――
「やめろーーっ!!」
レイラが例のメイドを一方的にボコボコにしているじゃないの!
止めようと駆け出す俺。
「来るなヒロシ、こいつはスパイだ! そこにナイフが落ちているだろう?」
「ナイフ?」
ナイフが落ちてた。
拾い上げて確認するが、確かに昨日の暴漢と同じナイフだ。
って事は……
「わかったから、レイラ、やめろっ!」
俺の真剣な声に、暴力真っ最中のレイラは手を止めた。
レイラが手を離すと、メイドが咳き込みながら座り込んだ。
ボロボロじゃねぇか。
流石に可哀そうになる。
俺は片膝をつき、メイドの肩に手を置いた。
その瞬間、プロムの身体がビクリと震えた。
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レイラに押さえつけられ、息もできないほど痛む身体。
プロムは歯を食いしばりながら、自分に言い聞かせていた。
(私はヴァルファ帝国の諜報員。
拷問にも耐えうる肉体と精神を鍛えてきた。
これぐらいの攻撃など……
強がってみたところで、体は正直だ。
完全に言う事をきかないのだから……)
レイラの手が離れた瞬間、全身の力が抜けて床に崩れ落ちる。
その時、そっと肩に触れる手があった。
「お前は十分に制裁を受けた。
こんなの割に合わないよなぁ」
優しい声。
任務で聞いてきた“甘言”とは違う、妙に素朴で温かい響き。
(割に合うとか、考えたことなかった……
任務を遂行することだけが、私の存在理由だと教えられてきたのに)
プロムは、薄れる意識の中でその声の主を見ようと視線を向けた。
(あの、頭のおかしいセクハラ野郎……)
「スパイなんて国に使われるだけだぞ。
バカバカしい。
そんな仕事するより、自由に楽しく暮らしたいと思わないの?」
(自由?)
胸の奥がチクリと痛む。
自分でも気づかないふりをしていた部分を、あっさり突かれた。
(……そうよ。
私が捕まっても、帝国は助けに来ない。
“失敗した駒”として処理されるだけ
道具としての教育しか受けてこなかった私に、
自由って……そんな事ができるのかな……)
ヒロシが抱き寄せるように支えた瞬間、
プロムは初めて“敵国の人間”の体温を感じた。
温かい。
任務で触れたどんな人間よりも、温かかった。
(なんで……こんなに心が揺れるの……?)
「今日ここで、スパイのお前は死んだ。
そして、生まれ変わって俺に仕えろ。
レイラ達と同じように、ずっと俺が守ってやる」
その言葉は、プロムの胸の奥にずっとあった
“誰かに必要とされたい”という小さな願いを突き刺した。
気づけば、口が勝手に動いていた。
「……プロム……です。ご主人様……」
「正気かヒロシ」
レイラが呆れる。
普通に考えたら、そうなんだろうな。
「大丈夫。裏切ったらレイラが制裁すればいい」
俺はプロムをお姫様抱っこをしようとしたが重かったので、そのまま寝かせて回復薬(小)を飲ませた。
安心したのか、プロムは気を失った。
「敵を許す度量がなけりゃな」
俺はレイラに笑いかけた。
「それに、こんな超乳女、殺したらもったいないじゃん」
レイラの鉄拳が飛び、俺は壁に叩きつけられた。
薄れる意識の中で思った。
愛人……ゲットだぜ。
プロムの正体が判明し、ヒロシの“説得”によって仲間入り(?)する回でした。
レイラの圧倒的な強さと、ヒロシの妙なカリスマ性が対照的に描けたと思います。
プロムの心情は、これまでの彼女の行動に裏付けを持たせるために少し深掘りしました。
強気なスパイでありながら、ヒロシの言葉で揺れる部分が、今後の彼女の立ち位置に繋がっていきます。
次回は、訓練と夫婦戦争。
ヒロシのだらしなさと、レイラ&プロムの火花が散る回です。
引き続き読んでいただければ嬉しいです。




