第40話 晩餐会と暗殺者(後編)
読んでくれてありがとうございます。
今回は 晩餐会編の後編。
前回ヒロシが泥酔して暴走し、飛び蹴り未遂で自爆したところからの続きだ。
ここから一気に空気が変わる。
暗殺者の正体、帝国の影、そしてルファスとキャスカの“逃亡者としての現実”が突きつけられる。
ゼノス王国の情報網の強さ、
マルスの冷静さと怖さ、
そしてヒロシへの異常な信頼。
晩餐会の華やかさが一瞬で吹き飛ぶような、
そんな緊張感のある回になっている。
……まあ最後はヒロシが
それでは本編どうぞ。
◆◆ 暴漢の最期 ◆◆
暴漢は、ヒロシの意味不明な行動に完全に固まっていた。
「ナイフを持ってる!」
誰かの叫びに、会場が一気に騒然となる。
「奴を取り押さえろ!」
ゼノスの号令で衛兵が一斉に動き出した。
暴漢もようやく冷静さを取り戻し、周囲の状況を確認する。
「しまった……アイツのせいで!」
倒れているヒロシを睨みつけ、逃げようと身を翻した瞬間――
ガッ!
ルファスの投げた皿が暴漢の顔面に直撃した。
体勢を崩した暴漢は、衛兵たちに一気に囲まれる。
「くそっ!」
暴漢は舌を噛み、自害した。
こうして晩餐会は、最悪の後味を残して幕を閉じた。
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◆◆ 客間にて ◆◆
「お兄様……」
キャスカが不安そうに下を向く。
「先程の暴漢は、ヴァルファ帝国の密偵だろう」
ルファスが頭を抱えた。
「……私達、何も悪いことしてないのに……」
「父上は、管理できない場所で俺達が生きているのが不安なんだ」
「そんな……」
キャスカは黙り込む。
その時、ノックの音。
「マルスだけど、入っていいかな?」
ルファスとキャスカが顔を見合わせる。
「……どうぞ」
緊張した声で答えると、マルスが部屋に入ってきた。
「ルファスさん達を危険な目に合わせて……本当にすいませんでした。
先程の暴漢は、長くこの国に仕えてくれていた者だったんですが……
あんな事をするなんて……」
深く頭を下げるマルスに、ルファスとキャスカは困惑する。
自分たちを狙った密偵である可能性が高いため、まともに目を合わせられなかった。
「あ、そうだ。聞きたい事があって来たんでした。
彼は……ヴァルファ帝国の密偵? 殺し屋?」
「えっ?」
マルスの言葉にルファスとキャスカが動揺する。
その反応で、マルスは確信した。
「辺境のちっぽけな国ですが、ヴァルファ帝国くらい知ってますよ。
それから、皇帝の息子と娘が逃げたこともね。
あ、二人ともそのままで聞いてて」
立ち上がろうとした二人を手で制し、マルスも椅子に腰かける。
「この国はね、世界中にネットワークを持っているんです。
人も金も情報も、この国に集まる」
「……ノガーミ商会」
ルファスが呟くと、マルスは笑って頷いた。
「それにしても、城の中にまで他国の者に入り込まれるなんて……
僕たちの驕りが招いたことです。
ルファスさん達に迷惑をかけてしまったと、本当に申し訳なく思っています」
マルスは頭を掻いた。
「マルスさん、そんな……
僕達がここにお邪魔したために!
迷惑をかけているのは私たちの方だ」
ため息をつくマルス。
「そんなこと気にしないでください。
ルファスさん達は、この国に何時まで逗留されても構いません。
あなた方が“おじちゃん”の味方である限り、この国とノガーミ商会は味方です。
帝国程度ならどうとでもなりますから。
……ですが、おじちゃんを裏切れば……わかりますね」
マルスの目が鋭く光る。
ルファスとキャスカは背筋が凍った。
だが、帝国を侮る発言に、ルファスは忠告すべきだと判断した。
「帝国が怖くないんですか?」
「いや、全然」
ルファスは絶句した。
「マルスさん、帝国が本気になれば、この国は……」
ルファスが深刻に言うと、マルスは大笑いした。
キャスカはムッとする。
「強がったって、ホントは怖いんでしょ?」
キャスカが食ってかかるが、マルスは意味がわからず首を傾げる。
「ルファスさん、キャスカさん。
私達が恐れるのは“おじちゃん”、ノガミ ヒロシという人間だけです。
おじちゃんがこの国を嫌いになること以外、私たちは怖くない。
おじちゃんがいれば、帝国と戦争しても負けませんからね」
ルファスとキャスカは信じられないという顔をした。
だが、マルスの堂々とした姿は揺るがない。
この国の“ノガミへの信頼”の深さを、二人はようやく理解し始めていた。
「暴漢の件は気にしないでください。
おじちゃんは、そんな小さな事いちいち気にしませんから」
そう言ってマルスは部屋を出ていった。
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◆◆ 一方その頃 ◆◆
マルスから盛大に過大評価を受けた“おじちゃん”は――
レイラに怒られながら、
誰もいなくなった晩餐会場で、
泣きながら自分のゲロを掃除していた。
ここまで読んでくれてありがとう!
晩餐会は最悪の形で終わり、
ルファスとキャスカは帝国の影に怯え、
マルスは相変わらず“ヒロシ至上主義”で、
ゼノス王国の底知れなさが見えてきた。
そしてヒロシは――
マルスから「帝国より怖い存在」とまで言われているのに、
現実はレイラに怒られながらゲロ掃除。
この落差がヒロシだよね。
次回からは ゼノス王国での強化編 に入る。
武器防具の発注、訓練、そして新キャラ(?)の登場で、
物語は一気に“帝国編”へ向けて動き出す。
第41話も楽しんでください。
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