第36話 帝国の影、迫る
いつも読んでくださりありがとうございます!
今回は、ギャグとシリアスが入り混じる回です。
◆◆ 護衛班、賊と遭遇 ◆◆
「レイラさん、今日は本当に……その、ありがたい」
「仕事だからね」
商人はレイラの露出多めの装備に目を奪われていた。
そして、何かを思いついたように立ち上がる。
「おっと、馬車が揺れて転んでしまう」
偶然を装ってレイラに触ろうとした、その瞬間――
ガタンッ!
ギギギィィーー!!
馬車が急停止し、商人は本当に転倒して頭を打った。
「うぎゃぁあぁ!」
痛みで転げ回る商人。
自業自得とはまさにこのことだ。
「何事だ!」
レイラは素早く馬車の幌の上に移動し、周囲を確認する。
「キャスカ! 賊だ! 前五、後ろ四!」
「了解ですわ!」
キャスカが馬車から飛び出し、魔法少女的なスティックを構える。
前方の賊の一人がナイフを持って近づいてくる。
「お嬢ちゃん、いい身体して――」
ヒュッ!
「ぐえっ!」
レイラの矢が男の喉を貫いた。
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キャスカはスティックを高く掲げ、くるりと回転する。
「マジカル……マジカル……」
スティックの先端が光を放ち始めた。
「焼き払いファイヤー!」
火球が賊に向かって飛び、直撃。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
賊は火だるまになり、黒焦げになって倒れた。
残りの賊達はビビりながらも、キャスカを囲むように距離を取る。
「あの変なポーズ取れないように一斉にかかれ!」
賊達が一斉に走り出す。
「ファイヤ!」
「ファイヤ!」
キャスカは小刻みに火球を放ち、
ポーズ取らなくても攻撃できるのか、と思いながら盗賊達は、次々と撃破されていった。
残り一人。
「焼き払いファイヤー!」
最後の賊はギリギリで火球を避けた。
「終わりだ、お嬢ちゃん!」
「ふんっ!」
キャスカはジャンプし、スティックを賊の頭に叩きつける。
賊は鼻血を噴きながら倒れた。
「こっちは片付いたですわー!」
「こっちも終わったぞー!」
レイラが幌から飛び降り、キャスカの元へ向かう。
そこへフラフラの商人がやってきた。
「いやぁ、お二人には助けられました」
頭から血を流しながら礼を言う商人。
「い、いや、仕事だから……」
レイラは引き気味だ。
「目的地まであと少し……このまま無事に……」
「無事って……」
レイラとキャスカは同時に思った。
(いや、無事じゃないだろ)
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賊の遺体を従者が片付け終わる頃、軽キャンがやって来た。
「うわ、血だらけじゃねぇか! 待ってろ」
俺は商人に回復薬を飲ませる。
「キャスカにやられたんだろ?」
「え?
転倒した怪我なので、違いますが……」
「口止めされてるのか?
大丈夫、正直に言いな」
「変な言いがかりはヤメてほしいですわ」
商人に聞いてるのにキャスカが横から口を出してきた。
「キャスカ、この人に何をしたんだ?」
「完全に犯人扱い!
この商人がレイラの胸を触ろうとして勝手に転んで怪我しただけですわ!」
「バレてた!
あ、いや……言いがかりだ!」
「人の嫁さんに何しとるかぁー!」
「ぎゃああああ」
思わず棒で商人をぶん殴ってしまった。
鼻血を出して倒れたが、やりすぎたか?
「す、すまん。
カッとしてしまった。
でも、セクハラしようとしたあんたも悪いんだからな…… おい?」
ヤベッ、ぐったりしてる。
回復薬をもう一度飲ませてやった。
「お、気がついたか?」
気がついた商人が俺から急いで離れた。
「すいませんでした。
奥様があまりにも魅力的だったもので。
本当に申し訳ない。
護衛料の方はギルドの方にちゃんとお支払いしますので、ありがとうございました」
「あ、
あらら……
行っちゃったよ」
商人が走って行ってしまった。
「まあ、ちゃんと支払ってくれるって言ってたし、まあいっか。
みんな、お疲れ!
そんじゃ、帰っか!」
帰り道、全員が無事だったことに安堵する。
無事が一番、安全第一。
だが――
「魔法って何だ?」
「え?」
「え?」
「え?」
俺は急ブレーキを踏んだ。
「ちょっと危ないですわよ!」
「いや、魔法……あるの?」
「当たり前じゃない?」
「ヒロシの周りでも普通に使ってたわよ」
三人が同情の目を向けてくる。
「いや、知ってたよ……うん」
「絶対知らなかった顔でしたよね」
「ヒロシ、可愛い」
俺は平然を装って再出発した。
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「飲みに行くぞ!」
ギルドで報告と換金を済ませ、親睦と慰労を兼ねて酒場へ向かう。
「今日は頑張ったし、沢山食べて飲んで疲れを癒そうぜ!
キャスカは飲めないから、好きなもの頼んで良いからお腹いっぱい食べるんだぞ」
「言われなくても好きな物頼みますわ」
「そうか!
で、キャスカは嫌いな物とかあるのか?」
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◆◆酒場◆◆
「タマネギ料理をじゃんじゃん持ってきて!」
「ちょ、ちょっと!? 私、タマネギ嫌いですわ!」
「知ってる」
キャスカの嫌いな食材を注文し、泣きそうにさせる。
「キャスカ、好きなもの頼んでいいよ」
「お兄様ぁ……!」
俺の作戦は崩れた。
俺の前には山盛りのタマネギ料理。
シャクシャクシャク……
「さて、これからの事だが」
シャクシャクシャク……
「この町から、」
シャクシャクシャク……
「シャクシャクうるさいですわ!」
「頼んだら全部タマネギサラダで来たんだよ!」
口の中がヒリヒリするが、育ちの良い俺は残すのに罪悪感があり全部食べた。
酔った俺たちは軽キャンで車中泊。
大人3名と子供1名では狭いが、レイラと密着して眠り、幸せな夜だった。
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翌朝、受付のおばさんに呼ばれ、俺一人が応接室へ。
「ノガミさん、こちらへ」
「お、おう……?」
(おいおい、誘ってるのか?)
こじんまりとした応接室。
ソファーがある。
じゃあ――
「奥さん!」
抱きつこうとすると、おばさんは身をかわして部屋を出ていった。
俺の行動が読まれていたらしい。
何もない空間を抱きしめた俺は、そっとソファーに座り直す。
「待たせた」
入ってきたのは厳ついギルドマスター。
(でしょうね)
「俺はギルドマスターのグレイドだ。
お前の連れている二人のことで聞きたい」
「……な、何の事ですかな?」
(ヤバい!もしかしてルファスたち生活苦から窃盗でもしてた過去でもあったのか?)
「お前は、あの二人の事情を知っているのか?」
「知ってるよ。事情があって逃げてきたんだろ?
それがどうした?
こっちは知ってて好きで一緒にいる、それだけだ」
「そうか、知っているんだな。
お前、それがどういう事か分かっているのか?」
「わかってるよ。なんだ、さっきから。
二人を守ってやる奴がいたっていいじゃないか!
二人だって昔を捨ててやり直そうと真面目にやってるのに、何だお前は。
文句あるのか?
俺やあの二人が人様に迷惑かけたか?」
俺が言い返すと、ギルマスは目を丸くした。
「……わかった。文句など無い。
確かに二人は人様に迷惑などかけてはいないな。
だが、お前…… いや、よそう。
ノガミ。
俺はお前を誤解していたようだ。
ただのセクハラ野郎かと思っていた!」
「え? 悪口?」
「ノガミ、仲間を守れ。
冒険者登録の情報は本部に送られる。
つまり――帝国に知られている可能性が高い
帝国は……あの兄妹に関してだけは容赦しない」
「?!」
(ルファスたち、国で何やらかしてきたんだよ!)
「早くこの町を出ろ。
いつ帝国の人間が来るかわからん」
「え、えぇ……?」
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・
俺はナビをセットし、町を出ることにした。
「あんたが変な事するから、町を追い出されたんですわ」
「キャスカ、誹謗中傷はやめろ」
「意味わかって喋ってますの?」
よし、無視。
昔は昔。今は今!そう、今が大事って事!
昔がどうであれ、俺はお前たちを守る。
「俺達はSランクの冒険者になる!」
「大きく出ましたね」
ルファスが笑う。
いいね。笑ってれば運も開けるってもんよ。
「私はヒロシの側にいる」
「俺もレイラの側にいる!」
「私はお兄様の側にいますですわ」
「ああ、ずっと一緒だよキャスカ」
「……お兄様」
見つめ合う二人。
仲良すぎない?
「ヒロシのせいで追い出されたけど、これからどこに行くんですの?」
「良いとこだよ。
それと、俺のせいと言うのはやめようね。
俺が傷つく」
軽キャンのナビは、ゼノス王国の自宅へ向けられていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
今回は護衛班の活躍と、
ヒロシの“魔法知らなかった問題”が炸裂しました。
そして後半では――
- ギルドマスターからの警告
- 冒険者登録情報が帝国に送られる事実
- 兄妹の身に迫る危険
- 町を出る決断
- 次の目的地はヒロシの“ゼノス王国の自宅”
と、物語が大きく動き始めました。
次回から、どうなってしまうのでしょうか?
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次回もよろしくお願いします。




