第30話 商会との別れと兄妹の勘違い
今回は、
ヒロシが商会に別れを告げる回 です。
・ソイラ&グラスとの温かいやり取り
・若返りヒロシへの反応
・レイラとの夫婦漫才
・そして兄妹の“とんでもない誤解”
と、
シリアスとギャグが交互に押し寄せる回 になっています。
さらに、
ヒロシが“ある理由”で兄妹を商会に連れて行かなかったことで、
キャスカの暴走推理が炸裂します。
それでは本編どうぞ!
翌朝。
ルファスとキャスカを起こさないよう、
俺とレイラは軽キャンで外出した。
向かった先は――
ノガーミ商会モスノフ支店。
店内では、開店準備で従業員たちが慌ただしく動いていた。
ソイラとグラスは、昨日“会長”が突然来店したため、
今日は早めに出勤していたらしい。
そんな店の前に、軽キャンが停まる。
「あっ! 会長が?!」
従業員が慌てて店に駆け込み、
その知らせを聞いたソイラとグラスが
勢いよく店から飛び出してきた。
「これはこれはノガミ様! 朝早くからおはようございます!」
「おはようございます、ノガミ様!」
二人とも丁寧に頭を下げてくる。
うん、挨拶は大事だね。
「ソイラにグラス、おはよう!」
俺は軽キャンの窓を開け、爽やかに手をあげた。
……が。
「なんだお前は? 馴れ馴れしい。ノガミ様の運転手か?」
ソイラが言った。
……前言撤回。
気分が悪いぞ。
「あの、レイラ様。ノガミ様は?」
グラスがレイラに尋ねる。
レイラは俺の肩に手を置き、
堂々と言い放った。
「貴様ら、若くなってるが、コレがヒロシだ」
「?」「?」
ソイラとグラスはきょとんとしている。
「なんやかんやあって、若返った」
俺は説明が面倒なので、ざっくり言った。
どうせ質問攻めにされると思ったが――
「そうでしたか、羨ましいですな!」
ソイラがあっさり納得した。
……あれ?
聞かないの?
俺に興味ないのか?!
まぁ、楽だからいいけど……
ちょっと寂しい。
「何日か滞在する予定だったけど、用事が出来たから、この国を出ることにした」
朝早く来たのは、その挨拶のためだ。
「そういう事なんで、二人とも、これからも商会を頼んだぞ!」
俺が言うと、二人は驚いた顔をした。
「えぇーー! 来たばっかりじゃないですか!」
「そうですよ! もっと滞在してくださいよ!」
二人は、レイラではなく“俺”が帰るのを惜しんでくれた。
……なんか嬉しい。
俺は軽キャンを発車させた。
サイドミラーには、
軽キャンが見えなくなるまで頭を下げ続ける
ソイラとグラスの姿が映っていた。
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◆◆ 商会サイド ◆◆
「……支店長、帰られましたね」
「そうだなグラス。突然お越しになって、突然帰るとは……ノガミ様らしいよ」
ソイラは呆れたように、しかし満足げに微笑んだ。
マヨネーズをはじめ数々の発明品を生み出し、
世界有数のノガーミ商会グループを築き上げ、
あっさり経営から身を引いて旅に出た伝説の経営者。
すべてが突然で、常識では測れない。
若返りも……
きっと何か理由があるのだろう。
二人はそう思った。
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◆◆ 軽キャン内 ◆◆
ブロロロロ……
「ヒロシ、どうしてルファス達を連れて商会に行かなかったの?」
レイラが聞いてきた。
「レイラ、ルファスの家は貧しい……そんな二人を連れてきたらビックリするだろ?
特にキャスカは手癖が悪そうだし……いや、悪いな。
万引きとかしそうだろ? いや、するに決まってるな。
なんせキャスカは手癖が悪いから!」
個人的な恨みを込めて説明した。
「そうね」
レイラはあっさり納得した。
……大丈夫か、この夫婦。
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◆◆ ホテルのルファス&キャスカ ◆◆
その頃、ホテルでは――
ルファスとキャスカが目を覚まし、
部屋にいないヒロシ達を探していた。
「お兄様! ヒロシ達がいませんわ!」
キャスカがシャワールームから飛び出してきた。
「キャスカは心配性だね。ほら、見てごらん」
ルファスはテーブルの上の手紙を見せた。
( 少し出掛けるので、出発の用意しといてください )
「嘘ですわ! あの男は最初からお兄様のお金が目当てだったんですわ!」
「ノガミさんはそんな人じゃないよ」
ルファスは笑ってキャスカの頭を撫でた。
「でも……」
キャスカは不満げに唇を尖らせる。
「大丈夫。どんなことがあっても、俺がキャスカを守るよ」
ルファスが優しく抱き寄せると、
キャスカは頬を赤くして、ぎゅっと抱き返した。
「……お兄様、ずるいですわ」
「キャスカは可愛いな」
二人はしばらく抱き合っていたが、
やがてルファスが我に返った。
「ノガミさん達が戻る前に、準備しないとね」
「……はい」
キャスカは名残惜しそうにしながらも、
ルファスと一緒に出発の準備を始めた。
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◆◆ ホテル前 ◆◆
「ノガミさん、軽キャンの後ろに……」
ルファスが不思議そうに言った。
フフフ……
「お前たち用のキャンピングトレーラー!
中で休憩や寝ることが出来るからな!
兄妹仲良く使ってくれよ!」
俺は自信満々に言った。
ルファスとキャスカは驚いていたが――
さっさと乗れ!
「それじゃ……」
二人がトレーラーに乗ろうとしたので、
俺は軽キャンに乗るように言った。
移動の時は、みんなでいた方が楽しいだろ?
ルファスとキャスカは少し残念そうだったが、
最終的には嬉しそうに軽キャンへ乗り込んだ。
ホント、仲が良いな、この兄妹。
「さぁ〜って、出発だー!」
俺は元気いっぱいに言った。
今回は、
商会との別れ → 兄妹の誤解 → 新しい旅の準備
という、物語の転換点となる回でした。
ソイラとグラスの信頼、
レイラの理解力(?)、
そしてキャスカの暴走気味な勘違い。
ヒロシの“善意のつもりの行動”が、
兄妹にどう伝わっていくのか――
このズレが今後の旅をさらに面白くしていきます。
次回は、
いよいよ国を出て新しい土地へ向かう旅路 に入ります。
新メンバーを加えたヒロシ一行が、
どんなトラブルに巻き込まれるのか……お楽しみに!
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