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第2話 女神と軽キャンの加護

第1話を読んでくださりありがとうございます。


今回は、ヒロシが異世界に来て最初に出会う存在——女神が登場します。

といっても、神々しい雰囲気とは裏腹に、

ヒロシのズレたリアクションと軽キャンの存在感が全部持っていきます。


勇者と魔王の最終決戦という壮大な場面の直後なのに、

ヒロシは相変わらずマイペース。

そして女神は、そんなヒロシに振り回されながらも、

最低限の加護と“軽キャン強化”を与えてくれます。


異世界の壮大さと、ヒロシの日常感のギャップを楽しんでいただければ嬉しいです。

それでは、第2話をどうぞ。

ヒロシは軽キャンの横でタバコをふかしながら、崩れた玉座の間をぼんやり眺めていた。


「……異世界。まあ、なんとかなるだろ」


そのときだった。


——ピンポーン。


軽キャンのカーナビが、場違いな電子音を鳴らした。


「……え? なんでナビが鳴るんだよ。ここ電波ねぇだろ」


画面が勝手に明るくなり、地図でもルート案内でもない“白い光”が映し出される。


《接続……完了……》


「接続!? どこと!?」


《高天界サーバーにアクセスしました》


「サーバー!? 神様ってクラウド管理なの!?」


ヒロシがツッコむ間もなく、カーナビの画面から光が溢れ出した。


……チリ……チリチリ……


魔力の残滓が吸い込まれるように集まり、

軽キャンのダッシュボードから光の柱が立ち上がる。


「ちょっ……おいおいおい! 車内で発光すんな! 焦げ跡つくぞ!」


光は形を成し、やがてひとりの女性の姿となった。


女神——。


長い金髪が光を受けて揺れ、白い衣は風もないのにふわりと舞う。


「……野上ヒロシ」


女神の声は、空間そのものに響くような荘厳さを帯びていた。


ヒロシはタバコを落としそうになった。


「えっ……カーナビから女の人出てきたんだけど!?

これ新機能!? アップデート!? AIアシスタント!?」


女神の眉がピクリと動く。


「私は神です」


「神!? え、ナビに神入ってたの!?

俺、そんなオプション付けた覚えないんだけど!」


「違います」


女神は深く息をつき、表情を引き締めた。


「あなたは……この世界に“偶然”召喚されました。

本来ならば来るはずのない存在。

しかし境界が乱れ、あなたの乗り物ごと転移してしまったのです」


ヒロシは腕を組んで頷いた。


「なるほど……つまり、俺は事故物件ってことか」


「……言い方が違います」


女神は、勇者と魔王の亡骸(砂)に視線を落とした。


(……本当はあなたの車に轢かれて死んだのですが……

それを伝える必要はありません。

この男に罪はない。

そして……世界の均衡のためにも、知られてはならない)


女神は静かに顔を上げた。


「勇者と魔王は……相討ちとなりました」


ヒロシは目を丸くした。


「えっ、マジで? すげぇな……。

あの砂、二人の……?」


「はい。あなたが来たときには、すでに戦いは終わっていました」


(※嘘ではない。厳密には“終わらせた”のは軽キャンだが)


ヒロシは胸を撫で下ろした。


「いや〜よかった。俺、誰も轢いてないよな?

なんか踏んだ気はしたけど……」


「気のせいです」


即答。


ヒロシは安心したように頷いた。


「そっか〜。よかったよかった。

俺、免許取り消しとか嫌だからさ」


女神は微妙に目をそらした。


(……免許どころの話ではないのですが)


女神は軽キャンのダッシュボードにそっと手を触れた。


カーナビの画面が再び光を放ち、神聖な紋様が浮かび上がる。


「……野上ヒロシ。

あなたは、この世界において“特異点”となりました。

本来ならば存在しないはずの者。

しかし……境界が乱れ、あなたはこの世界に転移してしまった」


ヒロシは腕を組んで頷いた。


「なるほど……つまり、俺はバグってことか」


「……言い方が違います」


女神は深く息をつき、手を掲げた。


「まず、あなたに最低限の加護を与えます」


ヒロシは身構えた。


「おっ、ついに俺も強くなるやつ!?

身体能力アップとか、魔法とか、そういう——」


「違います」


即答。


ヒロシは固まった。


「……え?」


女神は淡々と続けた。


「あなたに付与するのは“言語理解”のみです。

この世界の言葉を聞けば理解でき、話せるようになります。

それ以外の強化は一切行いません」


「なんでだよ!?」


「あなたは……危険に近づかない方がいいタイプです」


ヒロシは言い返せなかった。


女神は軽キャンへ視線を向ける。


「しかし——あなたの“乗り物”には、より強力な加護を与えます」


カーナビの画面が再び光り、軽キャン全体が淡く輝き始める。


「この車には“空間収納”を付与しました。

内部空間は拡張され、どれだけ物を入れても満杯になりません。

時間停止効果も付与しましたので、腐敗もしません」


ヒロシは感動で震えた。


「……マジで!?

俺の軽キャン、倉庫にもなるの!?

キャンプ道具入れ放題じゃん!」


「ええ。あなたより便利です」


「なんでだよ!!」


女神は静かに言った。


「あなたが死んでは困るからです。

あなたが死ねば……この世界は再び混乱に陥るでしょう」


ヒロシは首をかしげた。


「え、俺そんな重要人物なの?」


女神は目をそらした。


(……勇者と魔王を同時に消し飛ばした存在なのですから。

本人は気づいていませんが……)


女神は最後に手をかざし、光を収めた。


「あなたは“普通のまま”で構いません。

旅をし、好きに過ごしなさい。

ただし——」


女神の表情がわずかに険しくなる。


「……あまり、余計なことはしないように」


ヒロシは胸を張った。


「任せてください!

俺、慎重派なんで!」


女神はそっと目を閉じた。


(……本当に大丈夫なのでしょうか)


次の瞬間、女神の姿は光の粒となってゆっくりと消えていった。


玉座の間に残ったのは、崩れた壁と、焦げた床と、砂になった勇者と魔王——

そして、ぽつんと立つ俺と軽キャンだけだった。


「……行っちゃったな」


ヒロシは軽キャンのボディを軽く叩いた。


カンッ。


「よし……とりあえず、ここから離れよ」


ヒロシは軽キャンに乗り込み、エンジンをかけた。


ブロロロロ……


神の加護を受けた軽キャンは、まるで生き物のように滑らかに動き出す。


崩れた壁の隙間から外へ出ると、

“終焉の大地”と呼ばれる荒野が広がっていた。


「……異世界かぁ。

まぁ、なんとかなるだろ」


ヒロシはアクセルを踏み込み、荒野を走り出した。


——このとき、魔王城に残っていた“魔力の残滓”が

軽キャンの内部へと静かに吸い込まれていくことに、

ヒロシはまだ気づいていなかった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


第2話では、ヒロシが異世界で生きていくための

最低限の準備が整いました。

……と言っても、強化されたのはヒロシ本人ではなく軽キャンです。


言語理解だけ与えられたヒロシと、

空間収納というチート能力を得た軽キャン。

このアンバランスさが、今後の旅の“ズレ”を生み出していきます。


次回は、いよいよ異世界での初めての休憩と探索。

ヒロシのマイペースさと、文明チートの便利さが

さらに異世界とのギャップを広げていきます。


それでは、第3話でお会いしましょう。


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