第27話 逃亡王子、軽キャンに轢かれる
いつも読んでくださってありがとうございます!
今回は、
「逃亡中の兄妹」×「ヒロシの勘違い」
という、完全に事故みたいな組み合わせの回です。
・皇城から逃げ出す兄妹のシリアス
・ヒロシの“正義感(?)”が暴走
・軽キャンがまたやらかす
・そして石
・めちゃくちゃ痛い
という、
シリアスとギャグが高速で入れ替わる回 になっています。
それでは本編どうぞ!
◆◆ ヴァルファ帝国・皇城 ◆◆
ヴァルファ14世の居城。
七番目の皇子ルファスは、帝国の鎧を脱ぎ捨て、重い足取りで廊下を歩いていた。
皇位継承の望みなど最初からない。
戦場に送られ、死ねば“英霊”として利用される。
生きようが死のうが、皇帝にとってはどうでもいい存在。
(……自由に生きたい。冒険者になりたい。
でも皇族という立場が、それを許してくれない)
暗い気持ちのまま歩いていると――
「お兄様!」
明るい声が背中に届いた。
振り向くと、黒髪の小柄な少女が駆け寄ってくる。
「キャスカ!」
ルファスの顔が一瞬で明るくなる。
妹のキャスカだ。
「ただいま。帰ってきたよ」
抱きしめると、キャスカもぎゅっと抱き返してくれる。
二人は近くの部屋に入り、人がいないのを確認すると――
再び抱き合い、口づけを交わした。
妹だろうが関係ない。
ルファスはキャスカを愛している。
(このまま飼い殺しにされ、キャスカは政略結婚でどこかへ嫁ぐ……
そんな未来、絶対に嫌だ)
「お兄様……会いたかった……」
「俺もだ……」
二人はしばらく抱き合ったまま動かなかった。
・
・
・
夜。
二人は最低限の荷物を抱え、裏門へ向かった。
「……行こう、キャスカ」
「はい、お兄様」
人目を避けながら城を抜け出し、
街の外れへと走り出した。
(この国から逃げる……二人で生きるんだ)
ルファスの胸には、初めて“未来への希望”が灯っていた。
・
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・
その頃、ヒロシはホテルの馬車に揺られながら商会へ向かっていた。
(軽キャン……無事かな……
ソイラとグラスがいるからな……何されてるか分からん)
ホテルから商会までは少し距離がある。
馬車の揺れに身を任せながら、窓の外を眺めていると――
若い男が、小さな女の子の手を引いて必死に走っている姿が目に入った。
馬車はその二人を追い抜いていく。
(……ん? なんだ今の)
胸に小さな違和感が残る。
だが馬車はそのまま進み、
見覚えのある通りが近づいてきた。
◆◆ ノガーミ商会モスノフ支店 ◆◆
商会に到着したヒロシは、カウンターの女性に声をかけた。
「軽キャンをホテルまで持っていくから、ソイラに伝えておいてくれ」
女性が慌てて頷く。
(さっきの兄妹……気になるけど、まずは軽キャンだな)
店の横に停めてある軽キャンへ向かい、鍵を開けて運転席に座る。
「いざ! レイラが待つベッドへ発進じゃい!」
エンジンをかけた瞬間――
「わっ!」
「お待ちください! ノガミ様!!」
軽キャンの前にグラスが立ちはだかった。
「……どうした?」
(早く帰ってレイラと……色々したいんですけど?)
「何か粗相がありましたか?」
心配そうに覗き込んでくる。
(ああ、そういうことか……)
「いや、粗相なんてないよ。車を取りに来ただけ」
グラスはホッとした表情を浮かべた。
「レイラ様は……ご一緒では?」
やっぱり聞いてきた。
「レイラならホテルで待ってる。早く帰らないと」
露骨に落胆するグラス。
(人の奥さんに色目使うなよ……
いや俺もゼノスの奥さんに散々セクハラしたけど……)
「じゃ、行くからな!」
軽キャンを発進させた。
「あ、お気をつけてーー!」
窓から手を出して、グラスの声に答えた。
ブロロロロローー
・
・
・
ホテルまでは軽キャンで来ていないため、ナビに登録されていない。
ヒロシは馬車で通った道を思い出しながら走る。
(……歳を重ねるごとに物覚えが悪くなってる気がする)
不安になりつつ、キョロキョロしながら進んでいると――
「……ん? あれは?」
先ほど馬車ですれ違った若い男と女の子だ。
気になったヒロシは、軽キャンを近くに寄せた。
「やぁ、何してるの?」
自然な感じで声をかける。
(このロリコン野郎……誘拐の可能性がある。
慎重に……刺激しないように……
そして女の子を救出する!
正義の男、それが俺!)
「……長距離馬車を……待っている」
男は周囲を気にしながら答えた。
挙動不審!
(間違いない……!
この男、女の子を誘拐して逃亡中だ!)
女の子を見ると、不安そうな表情。
(可哀想に……)
ヒロシは男に向き直った。
「あー、君。ちょっとそこに移動して」
手で誘導すると、男は訳も分からず少し動く。
「もうちょい右、それ左! あー行き過ぎ!
……そう、そこ。そこね。
食らえ!」
ドンッ!
軽キャンをぶつけた。
「これで良し!」
颯爽と降りて、倒れた男を確認する。
(よし、動かないな。
では女の子の保護を――)
ガツッ!
「痛ァーーい!!」
石で殴られたような痛みが頭を襲う。
「クソジジィ! お兄様に何してんだ!」
女の子が叫んだ。
兄?!
手には血のついた石。
(やっぱ石じゃねぇか!!)
「お兄様? なの? 誘拐されて……ないの?」
頭から血を流しながら聞くヒロシ。
「何わけわかんねぇこと言ってんだ!
このクソジジィが! ぶん殴るぞ!」
「いや、もう殴ったよね!?
その石で思いっきり殴ったよね!?」
ヒロシは軽キャンに戻り、ドアに手をかけた。
(痛いし……早く帰りたい……)
「おいおいおいおい、クソジジィ、どこ行くんだよ?
怪我人ほっといて」
女の子が服を掴んでくる。
「いや、俺も怪我してるし……帰りたいんだけど!」
・
・
・
ブロロロロロ……
ヒロシは今、頭からドクドク血を流しながら軽キャンを運転している。
痛い。
すごく痛い。
後ろには、怪我をした兄と、暴力的な妹が乗っている。
そしてホテルへ向かっている。
(どうしてこうなった……?)
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
ヒロシ、今回も安定の勘違いでしたね。
そして軽キャンは今日も元気に人を轢きました。
次回は、
ヒロシ・レイラ・兄妹の4人がついに同じ空間に揃う回 になります。
・レイラの反応
・兄妹の誤解
・ヒロシの頭の痛み(物理)
・軽キャンの存在感
などなど、
旅のメンバーが増える“転機”の回になるので、
楽しんでいただければ嬉しいです。
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