第26話 モスノフ支店、今日もカオス
いつも読んでくださってありがとうございます!
今回は、
モスノフ支店の“人材地獄”が炸裂する回 です。
・変態支店長ソイラ
・忠犬(?)営業マンのグラス
・レイラの容赦ない踏みつけ
・ヒロシの精神力の限界
などなど、
旅の途中とは思えないカオスが広がります。
後半はホテルチェックインでようやく平和……のはず。
それでは本編どうぞ!
ノガーミ商会モスノフ支店に戻ると、
入口で店員が勢いよく駆け寄ってきた。
「ノガミ様! 支店長より、すぐに貴賓室へお通しするようにとの指示です!」
さっきまでの“ジジィ扱い”はどこへ行ったのか。
丁寧すぎるほどの態度で、俺とレイラは案内されることになった。
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◆◆ 貴賓室 ◆◆
ソファに腰を下ろした瞬間、
ドアが勢いよく開いた。
「ノガミ様ァァァ! 宿の手配、すべて完了しております!!」
ソイラ支店長が、揉み手と満面の笑みで迫ってくる。
「うっ……」
距離が近い。
そしてキモい。
「ご苦労。ヒロシはお疲れです、すぐに案内なさい」
レイラが冷たく命じると、ソイラは即座に土下座した。
「って、土下座?!」
俺はただただ困惑した。
「ありがとうございますレイラ様! この豚めにお任せください!」
「……いや、何を言い出してるの?」
「お前?」
レイラが立ち上がる。
そりゃそうだ。こんな意味不明な行動をされても困るだけだ。
よし、ビシッと言ってやれレイラ。
「はい、レイラ様」
土下座のまま返事するソイラ。
俺がうんうん頷いていると――
「あふぅ……」
レイラがソイラを踏みつけた。
やっぱり、ソイラは嬉しそうに震えている。
「……」
もう帰りたい気分でいっぱいだ。
レイラ、その辺にしといたほうがいい。
それは奴にとって完全にご褒美だ。
「ハ・ヤ・ク、案内をしろと言ったよね?」
レイラが足でグリグリすると、
ソイラはハァハァ言いながら床に沈んでいく。
その時、ノック音。
「失礼します。お飲み物を――はっ!」
営業マンらしき人物が、お茶を持って入ってきたが、
光景を見て固まった。
レイラがソイラを踏んでいる。
説明不能な地獄絵図だ。
俺がアワアワしていると――
「レイラ様、最高級の茶葉を使用した物ですので、せめて一口……!」
踏まれながらソイラが早口で言った。
この状況で?!
「レ、レイラ、頂こうか」
俺はレイラに言った。
可哀想というより、これ以上ソイラが喜ぶ姿を見るのが精神的にキツい。
「そう? わかったわヒロシ」
レイラが足を離し、ソファに戻る。
「モスノフ支店で営業責任者をさせて頂いております、グラスです。
支店長がご迷惑をおかけしたようで、申し訳ございません」
グラスが謝罪しつつお茶を置き、ソイラを睨みつけた。
いや、確かにどうしようもない人物だが、
こんなのでもお前の上司だろ?
「あれ?」
ソイラはグラスに「俺はご褒美もらったぜ」みたいな顔をして、
右の口角を上げている。勝ち誇っている……。
「グラス、ここは私がお相手させていただいている。君は下がってよい」
ソイラが余裕たっぷりに言う。
さっき踏まれてた奴の態度じゃない。
「支店長。営業部の責任者である私が、ノガミ様とレイラ様を宿までご案内させて頂きます」
グラスがキリッとした顔で言い返した。
なんだ、まともな社員がいるじゃないか。
ホッとして俺は笑顔になる。
「それじゃ、頼――」
グラスは俺を無視してレイラに片膝をついた。
「この薄汚い豚めに、何なりとご命令ください」
……やっぱりお前もか。
頭がクラクラしてきた。
(本店に戻ったら、人事担当にモスノフ支店の人選を再考させよう……)
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◆◆ ホテルへ ◆◆
ガタガタガタ……
馬車に揺られ、俺たちはホテルへ向かっていた。
「デカいな……」
窓から見えるホテルは、いかにも高級そうだ。
「こちらのホテルも、商会がマヨネーズなどの商品を卸している取引先でございます」
グラスが説明する。
本当に、商会の商品は世界中に広まっているんだな。
ホテルに到着すると、ホテルマンが馬車のドアを開け、
俺たちをカウンターまで案内した。
手続きをしていると、奥から品の良さそうな人物が現れた。
「支配人、このお方がノガーミ商会グループ会長のノガミ様と、奥様のレイラ様です」
ソイラが紹介する。
普段はまともなんだな……。
「当ホテルの支配人セザールと申します。ようこそお越しくださいました」
深々と頭を下げる支配人。
……よかった。まともだ。
「当ホテルで使用しているマヨネーズや調味料、シャンプーなどのアメニティ……
ノガーミの商品はどれも大変ご好評をいただいております」
「ありがとうございます。今日は妻と泊まらせてもらいます。楽しみにしてました」
握手を交わす。
「それでは我々は商会へ戻りますが、何かあればご連絡ください」
「このグラスにご用命いただければ、直ぐに対応させていただきます」
「まあ、グラスは営業で忙しく不在の場合が多々あろうかと思いますので、このソイラめに」
「支店長も忙しいですよね」
「お前は、なんでワシに張り合おうとするんだ?」
「いや、案内ありがとうね。うん。帰って」
得意先で言い合いが始まりそうだったので止めた。
本当に、人事を考えないと。
ソイラとグラスは頭を下げて帰っていった。
……二度と来るな。
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◆◆ 部屋 ◆◆
「それでは、何かございましたらフロントにご連絡ください」
ポーターが頭を下げてドアを閉めた。
「中々広い部屋だねヒロシ」
「……レイラ」
部屋に案内された俺たちは、
キスをしてベッドに腰かけた。
レイラの肩に手を回し――
「……やっぱ気になる!」
急に軽キャンが心配になった。
ずっと一緒で、こんなに離れたことなんてなかった。
俺の相棒だからな。
そわそわしてた理由はこれだ。
「すまんレイラ、軽キャン取りに行ってくる!」
「それなら私も――」
「ああ、いいから! すぐ戻る! 戻ったら……たくさんしようね!」
腰を振るジェスチャーをすると、
「ばか……でも早く帰ってきてね」
レイラが頬を赤くして言った。
軽くキスをして部屋を出る。
フロントで馬車を手配し、商会へ急いだ。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
モスノフ支店、やっぱりカオスでしたね。
ヒロシの胃が心配です。
次回は、
軽キャンを取りに行ったヒロシが“とんでもない二人”と遭遇する回 に入ります。
(そう、あの兄妹です)
旅編はここからさらに動き出しますので、
楽しんでいただければ嬉しいです。
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