第24話 ヴァルファ帝国とノガーミ商会
いつも読んでくださりありがとうございます。
今回から、ヒロシとレイラの“旅の本格スタート”です。
国を離れ、軽キャンで世界を巡る二人の、のんびりだけど騒がしい日常が始まります。
相変わらずヒロシはヒロシで、
レイラは可愛くて、
世界は勝手に騒がしく動いていきます。
気楽に読んでいただければ嬉しいです
ゼノス王国を旅立ってから数ヶ月。
俺とレイラは軽キャンピングカーで世界をのんびり巡っていた。
各地のノガーミ商会の支店に寄りながら、
美味いものを食べ、温泉に浸かり、
レイラと二人でゆっくり過ごす――
そんな夢のような日々だ。
「ヒロシ、次はどこに行くの?」
助手席でレイラが微笑む。
「ヴァルファ帝国って国が近いらしい。
でかい国だし、支店もあるはずだ」
「ふふっ、楽しみ」
レイラは俺の腕にそっと寄りかかる。
(ああもう……可愛い……)
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◆◆ヴァルファ帝国◆◆
この世界に広大な領土を誇る軍事国家がある。
その名は――ヴァルファ帝国。
この国は他国と違い、勇者召喚を禁止している。
理由は単純だ。
初代皇帝ヴァルファ1世が“召喚された勇者”であり、
召喚した国を逆に滅ぼして帝国を建てたからだ。
以来、帝国は
「勇者=国を乗っ取る危険人物」
と判断し、
支配地域に勇者がいれば必ず殺害してきた。
勇者狩りの歴史は長く、
皇帝ヴァルファ14世の時代になっても続いている。
だが――
その皇帝は今、退屈していた。
「またどこかの国が降伏したか……つまらん」
広い謁見の間で、
皇帝は肘掛けにもたれながら報告を聞き流していた。
帝国を脅かす存在はない。
戦っても勝つだけ。
刺激がない。
そんな退屈な日常に、
ある“異物”が近づいていることを、
皇帝はまだ知らなかった。
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◆◆ノガーミ商会 モスノフ支店◆◆
帝国首都モスノフの中心部。
一等地に、巨大な建物がそびえていた。
軽キャンピングカーのシルエットが描かれた旗――
ノガーミ商会 モスノフ支店だ。
「おおー、さすが帝国の首都だけあって、支店もデカいなぁ!」
軽キャンから降りた俺は、建物を見上げて感動した。
レイラも隣で微笑む。
「ヒロシが頑張ってきた証だね」
(ああもう……可愛い……)
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店内は大混雑していた。
「伝票チェック急いで!」
「本店にマヨネーズ追加注文!」
「ノガーミリバーシの在庫は!?」
従業員たちが慌ただしく動き回っている。
「すいませんね、ちょっと通りますよ」
人をかき分けてカウンターに向かっていると――
ガシッ!
誰かに肩を掴まれた。
振り向くと、大柄な男が立っていた。
「おいジジィ! 割り込みしてんじゃねぇ!」
……は?
「貴様……」
レイラが殺し屋みたいな目で男に向かおうとする。
俺は慌てて止めた。
「すまんね。俺は客じゃない、店の関係者だ」
そう言ってカウンターの奥に入ろうとすると――
「じいさん、中入っちゃダメだよ!」
若い店員に止められた。
「ワハハハ! ボケジジィが!」
さっきの大柄男が大声で笑う。
(ぶっ殺すぞ……俺は弱いけどレイラ強いんだからな……)
「お前じゃ話にならん、上の者を呼んできなさい!」
俺が言うと、店員はプイッと顔をそらして無視した。
その瞬間――
ガッ!
レイラの拳が店員の頭に炸裂した。
「この店は教育がなっていないな」
ビターン!
ビターン!
ビターン!
レイラのビンタが連続で飛ぶ。
(ああもう……可愛いけど怖い……)
慌てた女店員が責任者を呼びに走った。
すぐに店長らしき人物が飛んできた。
「お、お客様!? 何を――」
「そんな事より、支社長いる?
ノガミが来たって伝えて」
「ノガ……!」
店長の顔が一瞬で青くなる。
「も、申し訳ございません!
すぐに貴賓室をご用意します!」
周りの店員たちが一斉に動き出した。
……なお、レイラのビンタは続いていた。
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◆◆貴賓室◆◆
俺とレイラは貴賓室に案内され、ソファーに座った。
横には、顔がパンパンに腫れた若い店員が立っている。
レイラが引きずって連れてきたのだ。
しばらくすると、支店長のソイラが飛び込んできた。
「ノガミ様! 本日はどうしてこちらへ!?」
「旅のついでに視察だよ」
「教育ができてないみたいね」
レイラが静かに言うと、
ソイラは青ざめて土下座した。
「レイラ様! 申し訳ございません!」
その頭の上に――
レイラの右足が乗った。
「お前、ヒロシに恥をかかせるなよ」
「ありがとうございまふ……!」
ソイラは踏まれながら笑っていた。
(……変態か?)
横を見ると、ビンタされた若者も股間がギンギンに……
店長も立ってるし……
全員ハァハァしてるし……
(……ここ変態の巣窟じゃねぇか!?)
「後でまた来るから、宿の手配しといて」
俺はレイラの手を引いて部屋を出た。
一刻も早くこの店から離れたかった。
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◆◆観光へ◆◆
軽キャンに戻り、俺たちは観光に出た。
「ヒロシのことバカにしてたね。私ムカついちゃった」
レイラが上目遣いで言う。
「気にするな。
それに、レイラがいれば俺は穏やかでいられるんだ」
俺はレイラの髪を優しく撫でた。
「ヒロシ……」
「レイラ……」
二人は見つめ合い、キスをした。
(ああもう……可愛い……)
その直後――
前方におばさんが歩いていた。
「あぶねぇ!」
キキーーーッ!!
急ブレーキでギリギリ避ける。
バァァァーーン!!
軽キャンのドアが開いた。
「バカ野郎! 死にてぇのかクソババァ!」
「なんだとクソジジィ! こいよ!」
そして――
俺とおばさんは殴り合いになった。
クソババァ!
クソジジィ!
罵声が帝国の街に響き渡る。
レイラはため息をつきながら呟いた。
「……ヒロシ、ほんと好き」
(ああもう……可愛い……)
ここまで読んでくださりありがとうございました。
ヴァルファ帝国編の導入ということで、
ヒロシとレイラの旅はさっそく波乱の予感……というか、
もうすでに波乱でしたね。
次回以降も、
二人の旅先での出会いやトラブル、
そしてヒロシの“平常運転のトラブルメーカーぶり”を楽しんでいただければ嬉しいです。
引き続きよろしくお願いします。




