第20話 ゴルソン反乱とヒロシの決断
いつも読んでくださり、ありがとうございます!
今回は、ヒロシの人生でも大きな転換点となる“激動回”です。
商会の拡大、ゴルソン領主の没落、そして――反乱。
ヒロシの冷徹さと優しさ、
レイラの愛情と不安、
ゼノス一家の支え。
それぞれの感情が交差し、
物語が一気に加速していきます。
そしてついに、ヒロシが“ある決断”を下すことに。
ぜひ、心して読んでください。
ゴルソン領主の借金が返済不能になり、
領地のほとんどがノガーミ商会の所有となった頃――
街は、かつての面影が消えるほど発展していた。
高層建築が立ち並び、
商人たちが活気よく行き交い、
街の至るところにノガーミ商会の旗が掲げられている。
「ヒロシ、街……すごいことになってるね」
レイラが俺の腕に寄り添いながら言った。
「まあな。でも、まだまだだ。
俺たちの理想郷は、こんなもんじゃない」
レイラは嬉しそうに微笑む。
(その笑顔が見たいから頑張れるんだよ……)
俺はレイラの頭をそっと撫でた。
「レイラが隣にいてくれるから、ここまで来れたんだよ」
レイラは真っ赤になって俯く。
「……もう……ヒロシのバカ……」
可愛い。
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その頃、ゴルソン領主は――完全に没落していた。
「ヒロシ、またゴルソンから金の要求が……」
ゼノスが呆れた顔で書状を持ってくる。
「貸してやれ。利息は……いつもの倍で」
「……ヒロシ、怖いわ」
カローラが震える。
レイラは俺の袖をそっと掴んだ。
「ヒロシ……やりすぎじゃない?」
その声は責めるというより、
“心配している”という響きだった。
俺はレイラの手を握り返し、優しく微笑む。
「守るためだ。
俺たちの生活を、未来を。
レイラを……守るために」
レイラの頬が一瞬で赤くなる。
「わ、私……?」
「そうだよ。
レイラが安心して笑っていられる場所を作りたいんだ」
レイラは驚いたように目を見開き、
やがて小さく頷いた。
「……うん。
ヒロシがそう言うなら……信じる」
そして、そっと俺の胸に額を寄せてきた。
(ああもう……可愛い……)
後ろでゼノスが小声で言う。
「……おいカローラ、あれ完全に夫婦だよな」
「うん、もう放っておこう」
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やがてゴルソンの借金は、
領地をすべて売り払っても返せない額に膨れ上がった。
俺は静かに宣告する。
「返済不能だ。
ゴルソンの持つ全てを差し押さえる」
レイラが袖を掴む。
「ヒロシ……本当に……?」
俺はレイラの手を包み込むように握った。
「大丈夫。
これは“奪う”んじゃない。
“守るために必要な力”を手に入れるだけだ」
レイラはしばらく俺を見つめ――
ぎゅっと手を握り返した。
「……うん。
ヒロシがそう言うなら……私はついていくよ」
(ああもう……可愛い……
この子のためなら、俺は何でもできる)
こうして――
ゴルソン領のほとんどが、ノガーミ商会の所有となった。
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そして、事件は起こる。
後に「ゴルソンの逆ギレ」と呼ばれる反乱だ。
ノガーミ商会本店の執務室で書類に目を通していると、
ゼノスが血相を変えて飛び込んできた。
「ヒロシ! 大変だ!」
「どうした?」
「ゴルソンの軍が……こっちに向かってる!」
空気が一瞬で凍りつく。
「……は?」
「完全武装の兵が数百。
ノガーミ商会に向けて進軍中だ!」
レイラが青ざめる。
「ヒロシ……まさか……」
俺は静かに立ち上がった。
「来たか。
“ゴルソンの逆ギレ”ってやつだな」
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街の外れ。
ノガーミ商会の私設軍隊が整列していた。
兵士数はゴルソン軍の倍以上。
装備も訓練も、比べ物にならない。
俺は軍の前に立ち、深く息を吸った。
「ヒロシ……本当に戦うの?」
レイラが不安そうに袖を掴む。
俺はレイラの手を握り返し、優しく言った。
「戦わないと守れない。
俺たちの街も、商会も……
レイラ、お前も」
レイラの瞳が揺れる。
「……信じてるよ、ヒロシ」
レイラは俺の胸にそっと額を寄せた。
ゼノスが後ろで小声で言う。
「……おいカローラ、あれ完全に夫婦だよな」
「うん、もう放っておこう」
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やがて、ゴルソン軍が姿を現した。
ボロボロの鎧、統率の取れていない隊列。
それでも、彼らは必死だった。
先頭に立つのは――元領主、ゴルソン。
「ノガミィィィィ!!
貴様のせいで俺は全てを失った!!
今日こそ貴様を殺す!!」
……完全に逆恨みだ。
俺は前に出て、静かに言った。
「ゴルソン。
お前が散財し、借金を積み上げ、
俺に泣きついてきたのを忘れたのか?」
「黙れぇぇぇ!!
貴様が金を貸すから悪いんだ!!
貴様が俺を堕としたんだ!!」
レイラが呆れたように呟く。
「……最低」
ゼノスも肩をすくめた。
「ヒロシ、どうする?」
俺は深く息を吸い、軍に向かって手を上げた。
「――撃て」
その瞬間、ノガーミ軍の魔法部隊が一斉に詠唱を開始した。
「ファイアランス!!」
炎の槍が雨のように降り注ぎ、
ゴルソン軍は一瞬で壊滅した。
戦いは――戦いと呼べるものではなかった。
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戦場に倒れ込んだゴルソンを見下ろし、
俺は静かに言った。
「ゴルソン。
お前の時代は終わりだ」
「ぐ……ぐぅ……
ノガミ……貴様……」
「安心しろ。
死にはしない。
お前には――役目がある」
「……役目?」
俺は笑った。
「今日からお前は、俺の使用人だ。
そして――国王になれ」
「は?」
ゼノスが目を丸くする。
レイラも驚いて俺を見る。
「ヒロシ……?」
俺は堂々と宣言した。
「今日をもって――
ゴルソン領は独立する!」
「独立……?」
「国名は――
ゴルソン王国だ!」
「えぇぇぇぇぇぇ!!?」
レイラの叫びが響く。
俺は倒れたゴルソンの襟を掴み、顔を近づけた。
「お前は“お飾りの王”だ。
実権はすべて俺が握る。
安心しろ、仕事は簡単だ。
笑って、手を振って、俺の言う通りに動くだけだ」
ゴルソンは震えながら頷いた。
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こうして――
俺は五年で、
街を発展させ、
商会を巨大化させ、
軍を作り、
領地を手に入れ、
そして――
国を作った。
俺は五十歳になった。
レイラは変わらず美しい。
ゼノス一家も健在だ。
今日も、俺たちの国は動き続ける。
レイラが俺の腕に寄り添い、微笑む。
「ヒロシ……すごいよ……
本当に……すごい……」
俺はレイラの手を握り、静かに言った。
「レイラ。
これからも……俺の隣にいてくれ」
レイラは真っ赤になりながらも、
しっかりと手を握り返した。
「……ずっといるよ。
ヒロシの隣が……一番好きだから」
(ああもう……可愛い……
この子のためなら、俺は何でもできる)
俺は空を見上げて言った。
「まだまだだ。
ここからが本番だぞ」
第20話は、シリーズの中でも特に大きな節目となる回でした。
ゴルソンの反乱、
ノガーミ軍の圧倒的勝利、
そして――まさかの“国の建国”。
ヒロシが歩んできた道が、
ついに“国家”という形になりました。
レイラとの関係も深まり、
ゼノス一家との絆もより強くなり、
ヒロシの世界は確実に広がっています。
次回、第21話では一転して、
“ゴルソン王国の日常”が描かれます。
激動の後の、少しゆるい日常回……のはずが、
またしても事件の予感。




