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第1話 軽キャンおじさん、異世界に立つ

プロローグを読んでくださりありがとうございます。


ここからは主人公・野上ヒロシ視点で物語が進みます。

勇者と魔王を軽キャンで轢き殺すという衝撃の幕開けでしたが、

本編はもっとゆるく、もっとおっさんで、そしてもっと自由です。


ヒロシは戦闘能力ゼロの一般人ですが、

文明の暴力(軽キャン)とマイペースさだけで

異世界を生き抜いていきます。


「おっさん×異世界×文明チート×ギャグ」の空気を

そのまま楽しんでいただければ嬉しいです。


それでは、第1話をどうぞ。

「……あれ? なんか踏んだよな?」


玉座の間のど真ん中で、俺——野上ヒロシ(45歳・独身)は、

軽キャンのフロント部分をしゃがみ込んで確認していた。


勇者と魔王が砂になって散っているのに、だ。


「傷なし! よし! へこみなし! よしよしよし!」


三百万の愛車に傷がついていたら、俺は泣いていた。

(頼むぞ、三百万の愛車に傷がついていたら、俺は泣いてしまう)


一通り確認し終えたヒロシがようやく立ち上がり、周囲を見渡す。


崩れた玉座、焦げた床、魔力の残滓が漂う空気。

さっきまでの“戦場の名残”が嫌でも目に入る。


「……ん? ここどこ? なんで壁が無いの?

てか、なんで俺、建物の中にいるの?」


胸ポケットからタバコを取り出し、火をつけた。


スゥ……。


「……異世界?」


あまりにも落ち着いた声で言ったので、

もし勇者と魔王が生きていたら殴っていたに違いない。


ふぅー。


「落ち着くぜ……タバコって偉大だな」


軽キャンの横に腰を下ろし、状況を整理する。


(……いや、整理するまでもないな)


・外壁を突き破ってる

・勇者と魔王らしき砂がある

・魔力っぽい何かが漂ってる

・俺は生きてる

・軽キャンも無傷


「……異世界だな」


二回目の確信。


ふと、ダッシュボードの上に光る砂のような粒が落ちているのに気づいた。


「……なんだこれ?」


指で触れると、光の粒がふわりと軽キャンの中へ吸い込まれていく。


(……静電気? いや、違うな)


軽キャンの内部で、何かが“微かに脈動”しているように感じた。


「……まあ、軽キャンが無事ならいいか」


俺は気にしないタイプだ。


軽キャンに戻り、エンジンをかける。


ブロロロロロ……


「おお……異世界でも動くのか。偉いぞ、軽キャン」


崩れた壁の隙間から外へ出ると、灰色の空と黒い大地が広がっていた。


「……異世界なのかぁ。まあ、なんとかなるだろ」


アクセルを踏み込み、荒野を走り出した。


——このとき、魔王城に残っていた“魔力の残滓”が、

軽キャンの内部へと静かに吸い込まれていくことに、

俺はまだ気づいていなかった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


勇者と魔王を軽キャンで轢き殺すという、

異世界ファンタジーとしては前代未聞の始まりでしたが、

本編はここからさらに“おっさん×文明チート”が加速していきます。


ヒロシは戦闘能力ゼロの一般人ですが、

軽キャンの補修・補給・魔力循環といった

女神の加護(と事故の副作用)によって、

気づけば周囲から恐れられる存在になっていきます。


本人はまったく気づいていませんが。


次話では、女神との会話を通して

「なぜ軽キャンが異世界で動くのか」

「なぜ魔力を吸ってしまったのか」

そのあたりが明らかになります。


ゆるくて、ちょっと笑えて、気づけば成り上がっている。

そんな物語を目指しています。

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