第14話 レイラ、初ドライブで絶叫する
いつも読んでいただいて、ありがとうございます。
第14話、レイラが仲間になったばかりの今回は、さっそく初ドライブ回になります。
ヒロシの距離感バグは相変わらずで、
レイラのツッコミと短剣が飛び交う、いつも通りのドタバタ旅路です。
最後には、とんでもない“山の主”が登場します。
朝の澄んだ空気の中、軽キャンのエンジンが静かに唸りを上げる。
新しい仲間――レイラを迎えた俺たちは、山道をゆっくりと進み始めた。
昨日までとは違う。
車内の空気も、俺の胸の中も、どこか弾んでいる。
運転席の俺。
助手席にはマルス。
後部座席にはカローラとレイラ。
そして外では、ゼノスが馬で並走していた。
「……信じられない。これ、本当に動いてるのか?」
レイラは軽キャンの内部をきょろきょろと見回し、驚きっぱなしだ。
そりゃそうだ。
この世界に車なんて存在しない。
文明の塊を見せられれば、誰だって混乱する。
レイラは窓の外を見ながら、時折ミラーに映る俺の顔をちらりと見てしまい、
そのたびに慌てて視線を逸らした。
(……なんで私は、この男の顔なんか気にしてるんだ)
胸が落ち着かず、レイラは自分でも理由が分からなかった。
一方の俺は――
ミラー越しにレイラの生足をチラチラ見ていた。
「おじちゃん、前を見ないと危ないよ」
マルスが心配そうに言う。
「マルス、おじちゃんはね、よそ見をしてるんじゃない。レイラの生足を――」
「それがよそ見だろうが!」
カローラのツッコミが飛んだ瞬間――
ごんっ!
軽キャンが何かにぶつかった。
「おいヒロシ! 今のは……!」
「大丈夫大丈夫。どうせゴブリンだろ?」
俺は軽く流した。
この世界に来てから、何度か轢いている。
感覚が麻痺していた。
……いや、良くないな。
ゴブリンも生き物だ。
無闇な殺生は――
「ヒロシ、止まれ!」
ゼノスが叫ぶが、俺は聞こえないふりをして走り続けた。
ちなみに、さっき轢いたのはゴブリンで即死だった。
俺は知らない。知らないままでいい。
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山道は徐々に険しくなり、木々の影が濃くなる。
鳥の声も少なくなり、どこか不穏な空気が漂っていた。
このまま奥に進む前に、俺達は休憩することにした。
「なんか……静かすぎない?」
カローラが眉をひそめる。
「うん……魔物の気配が薄い。逆に怖い」
マルスが小さく呟く。
レイラも窓の外を見つめながら、
(……嫌な感じがする)
と胸のざわつきを覚えていた。
そんな緊張感の中でも、俺は――
「レイラ〜、肩揉んであげようか?」
「揉むな!!」
「じゃあ膝枕して?」
「刺すぞ!!」
(……本当に刺す気はない。けど、こいつには言っておかないと危険だ)
レイラは短剣を抜き、俺の首元へピタリと突きつけた。
「……言っておく。変なことをしたら刺す。私は本気だ」
ここで俺は――土下座した。
「お願いします! 助手席に座ってください!!
レイラが隣にいないと、俺は……俺は……生きていけない!!」
「いや、意味が分からないんだが!?」
レイラが完全に引いている。
「ヒロシ……顔が地面にめり込んでるわよ……」
カローラが呆れた声を出す。
「おじちゃん、涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃだよ……」
マルスが心配そうに覗き込む。
ゼノスは馬上でため息をついた。
「……もう座らせてやれ。見てられん」
レイラは観念したように息を吐いた。
「……分かった。助手席に座るだけならいい」
「神よ……ありがとう……!」
俺は天を仰いだ。
「触ったら刺すからな」
短剣を向けられたが、そんなことはどうでもいい。
助手席に座ってくれるなら、刺されても本望だ。
レイラが助手席に座った瞬間――
俺は満面の笑みを浮かべた。
「なぁレイラ、変なことって何だ? どんな事? 教えて?」
「教えるか!! そういうのが変なことだ!!」
レイラが顔を真っ赤にして怒鳴る。
短剣の切っ先が、俺の喉元にさらに近づいた。
「そ、そうですよね」
俺は、震える手でエンジンをかけ、走り始める。
……なんだこの緊張感のあるドライブ。
助手席に座ってくれたのは嬉しいが、
命の危険が常に隣にあるのはどうなんだ。
・
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少し走った、その時――
「あーーっ! 前にブタが!」
「誤魔化すな!」
レイラが前を見る。
そこには――
巨大な影が道を塞いでいた。
「オ、オークキング……!」
レイラの震え声が車内に響く。
「なにそれ?」
俺はアクセルを踏み込んだ。
「やめろぉぉぉ!!」
レイラが俺の腕にしがみつく。
(お願い……死なないで……!)
レイラは自分でも信じられないほど必死に叫んでいた。
だが俺は――
「えーい! 轢いちゃえーー!」
アクセル全開で突っ込んだ。
ゼノスが絶叫し、
カローラが頭を抱え、
マルスが泣き叫び、
レイラは俺の腕を掴んで震えていた。
軽キャンが唸りを上げ、
巨大なオークキングがこちらを振り返りやがった。
次の瞬間――
山道に、地響きのような咆哮が轟いた。
「豚ってあんな声なの?」
「違う! あれは怒り狂ったオークキングの咆哮だ!!
ヒロシ!! 本当に死ぬぞ!!」
レイラの叫びが車内に響く。
俺はアクセルを踏み込みながら、
ニヤリと笑った。
(……なんか、ゲームみたいでワクワクしてきた)
「よし……行くか」
読んでいただきありがとうございます。
レイラの初ドライブは、予想通りの絶叫回になりました。
ヒロシの土下座も無事(?)決まり、助手席争奪戦は一応の決着です。
そして次回は、ついにオークキングとの激突。
軽キャン vs 山の王という、意味不明な戦いが始まります。
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次回もよろしくお願いします。




