第10話 魔力ゼロ事件! 調味料のために倒れるおっさん
いつも読んでくださりありがとうございます!
今回はゼノス視点でお送りします。
ヒロシがまたやらかします。
俺はゼノス。
犬族の獣人だ。
今は家族と共に安住の地を求めて旅をしている。
……そして、なぜか人間の男ヒロシとも行動を共にしている。
あいつは妙な男だ。
スケベで、抜けてて、妻を変な目で見る最低の男だが、
「軽キャン」と呼ぶ鉄の箱を操り、
旨い食い物や見たこともない道具を次々と出してくる。
頭はおかしいが、息子のマルスは懐いているし、
妻のカローラも、ヒロシの無遠慮さに鍛えられて強くなった。
……おかしな奴だが、頼りになるところもある。
本当に不思議な男だ。
村長から、カンコロ村から山を二つ越えた先に国境の街があると聞いた。
(まぁ、家族とヒロシがいれば……何でも乗り越えられるか!)
俺は空を見上げて呟いた。
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その頃ヒロシは、地面で奇声を上げながら転げ回っていた。
「ひゃっはーーー!! 俺は無敵だーー!!」
(……また始まったか)
村の子供達が遠巻きに見ている。
「お父さん、あれ……大丈夫なの?」
マルスが不安そうに聞いてきた。
「大丈夫だ。あれが“ヒロシの平常運転”だ」
「平常運転なの……?」
カローラは額に手を当てていた。
「……あの人、昨日も殴られてたのに、元気ね……」
(むしろ殴られた方が元気になるタイプだな、あれは)
ヒロシは突然立ち上がり、俺の方へ走ってきた。
「ゼノス! 聞きたいことがある!」
(……嫌な予感しかしない)
ヒロシは金の価値や調味料の相場を聞いてきた。
どうやら商売を考えているらしい。
俺が知る限りの情報を伝えると、ヒロシは目を輝かせた。
「ゼノス、ありがとな!」
そう言って軽キャンへ走っていった。
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しばらくして、外に大量の調味料が積み上がっていた。
ヒロシはナビを連打しながら叫んでいる。
「補給! 補給! 補給ぅぅぅ!!」
(……やめろ。絶対ろくなことにならん)
ヒロシの顔色がどんどん悪くなっていく。
「おい、ヒロシ。大丈夫か?」
「だ、だいじょ……ぶ……だ……よ……?」
声が震えている。
「おい、やめ——」
ドサッ。
ヒロシが糸の切れた人形のように倒れた。
「あなた! ヒロシが!」
カローラの叫び声が響く。
俺は駆け寄り、ヒロシを抱きかかえた。
「ヒロシ! しっかりしろ!」
ヒロシの口からは、かすれた声が漏れた。
「ちょ……み……りょ……
おれの……宝の……山……」
(調味料の心配かよ!)
ヒロシはそのまま意識を失った。
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村長宅へ運び込んだヒロシは、ぐったりと眠り続けた。
カローラとマルスはずっと付き添っている。
「お父さん……ヒロシ、死んじゃうの?」
「死にはせん。あいつは……妙に丈夫だ」
「でも、すごく苦しそう……」
マルスがヒロシの手を握る。
ヒロシは寝言で、
「……しお……しょうゆ……みそ……」
と呟いていた。
(調味料の夢見てるのか……)
俺は深いため息をついた。
「まったく……無茶しやがって」
だが、胸の奥が少しだけ温かくなる。
(……バカだが、放っておけない奴だ)
ヒロシの寝顔を見ながら、俺は静かに呟いた。
「……早く起きろよ。お前がいないと、旅がつまらん」
読んでいただきありがとうございます!
ヒロシは魔力ゼロで倒れましたが、
本人は調味料の心配しかしていません。
次回は回復後のヒロシがまた何かやらかします。
さて、早いものでもう10話になりました。本当に支えてくださる皆様のおかげです。
これからも頑張ってまいりますので、感想・ブクマが励みになりますので宜しくお願いいたします!




